久々にシェルリード専門工房KS-Remastaさんから試聴用のシェルリード線を送っていただき、今回はaudio-technica AT-OC9ML/IIと組み合わせるシェルリード線を探します。
今回取り上げたKS-Stage102EVO.IIは以前一度試聴していて、その時にはZYX製MCカートリッジ、R50 Bloomとの組み合わせでした。シェルリード線が一定以上の実力を持っていれば、ベストマッチを探すためにはカートリッジとの相性も大事になってきますので、改めてもう一度試聴することにしたわけです。またインターコネクトケーブルの試聴時に書きましたが、KS-Remastaの製造技術の向上で同一型番でも従来よりも音質が向上している可能性が高いということもあります。低価格帯の満足度が向上していればこちらとしても財布に優しいので大歓迎ですからね。
AT-OC9ML/IIにはヘッドシェルとしてaudio-technica AT-LH15/OCCを組み合わせていて、暫定的にシェルリード線は添付のAT6101相当を使いました。これは単に手持ちのシェルリード線の在庫がAT6101ばかりになってしまっていたためですが。以前は何も考えずAT6101を使っていたのですが、KS-Remastaのそこそこのグレード以上と聴き比べてみると表現の浅さが気になってしまい、カートリッジの実力が十分に発揮されていないことが理解できるようになってしまいました。
今回試聴品をお願いする際に、KS-Remasta独自の研磨が施されたKS-Stageシリーズの比較的安価な製品を中心にとリクエストしたのですが、第一世代、第二世代を取り混ぜてStage1~Stage3の製品が多数届きました。ZYX R50 Bloomのようにキャラクターが弱いカートリッジでは無いでしょうから、グレードが同様であっても組み合わせにより極端に差が付く可能性もありますので、過去に聴いた製品も改めてレビューすることにします。
まずはAT6101で今まで聴いていたAT-OC9ML/IIのシェルリード線を、KS-Stage102EVO.IIと交換します。
試聴を何度も繰り返している内に、シェルリード線の着脱にカートリッジの取り外しは不要になりました。何となくコツが掴めると着脱そのものはかなり短時間で出来るようになります。
この手順ではヘッドシェル側に4本全て装着しておいてから、カートリッジ側のターミナルピンに挿していますが、途中から白(Lch +)と赤(Rch +)を先に組み付けて、ヘッドシェル・カートリッジのターミナルピン双方に装着し終えてから青(Lch -)と緑(Rch -)を組む形に変えました。私の場合はその方がより手早く出来るようです。まあ、私が多少手慣れた程度では、柄沢さんのゴッドハンドには到底及びませんが…。
実際頭でわかっていても、この動画のようなスムーズな取り付けには到底なりません。
久々だったのであまり美しく出来ていませんが、まあ音はきちんと出ますので…。
ヴォーカルの質感に魅力
今回は全製品共通の試聴曲として以下の3曲を用います。
・Together We Run / Journey (LP「FREEDOM」収録)
・Like Someone In Love / Diana Krall(LP「Turn Up The Quiet」収録)
・Born For This Moment / Chicago (LP「Born For This Moment」収録)
比較対象がaudio-technica AT6101ではどの製品を聴いても「圧倒的に良い」で終わりになってしまいますので、同時に試聴したハンダや仕上げが全く同じで、線材のみ4N銀単線とPC-Triple Cという違いがある、KS-Stage103EVO.IIとの違いを中心に聴いていきましょう。
まず「Together We Run」からですが、PC-Triple Cと銀の違いというべきか、モニター的で細かい部分を徹底して描写するPC-Triple CのKS-Stage103EVO.IIと、銀の柔らかさで粗を包み込む純銀線のKS-Stage102EVO.IIという違いが出てきます。
一音ごとの描写はKS-Stage103EVO.IIが正確なのですが、イントロのピアノが生音では無くキーボードであることがわかってしまうほど、音色の粗が表現されてしまうのは長所とも短所とも取れる部分です。KS-Stage102EVO.IIでも良く聴けば当然生楽器でないことはわかりますが、それがあまり気にならない程度にまとめられます。
アーネル・ピネダの声はやや硬めで子音が強く出るKS-Stage103EVO.IIに対して、若干ソフトめな声質で耳馴染みの良い表現となるのがKS-Stage102EVO.IIです。ハードロック系のアレンジであるだけに銀ではちょっと穏やかすぎるかもと思っていたのですが、KS-Stage103EVO.IIは音源の質の低い部分までが明瞭に描写されてしまいますので、楽曲としてのまとまりを感じたのはKS-Stage102EVO.IIの方でした。
次に「Like Someone In Love」を聴くと、銀単線のKS-Stage102EVO.IIではベースの量感がやや不足する印象がありました。弦の震えなどは良いのですが、最低域の部分がやや細く、ウッドベースの音が少しだけ物足りません。KS-Stage103EVO.IIは最低域はかなりきちんと出ていますが、少し胴鳴りが不足気味でしょうか。
この曲に関してはKS-Stage102EVO.IIの方でヴォーカルが少し鼻声に感じる部分がありました。KS-Stage103EVO.IIだともう少し声のふくよかさがあっても良いかと思った程度なのですが、KS-Stage102EVO.IIでは歌い上げたときに少し声が鼻詰まりしているような印象を受けます。これはより上位のKS-Stageシリーズの銀線では感じられませんでしたので、KS-Stage102EVO.II特有の傾向なのだと思います。
最後に「Born For This Moment」ですが、低域に関しては概ね「Like Someone In Love」と同様の印象です。この曲ではニール・ドネルの声とシカゴのホーン・セクションに注目してみると、ヴォーカルは一長一短程度でしょうか。KS-Stage103EVO.IIでは子音が強めでやや硬め、KS-Stage102EVO.IIは声が柔らかめでハリが少し抑えられるという傾向がここでも見られます。ただ、KS-Stage102EVO.IIでダイアナ・クラールのような鼻詰まり感は感じられませんでした。
ホーンの音色はPC-Triple Cを採用する多くのケーブルで見られる傾向なのですが、派手な部分が強調されて少し安っぽさが出てしまうKS-Stage103EVO.IIよりも、多少ソフトではあるもののKS-Stage102EVO.IIの方が良好です。シカゴのサウンドではPC-Triple Cは音色が明るすぎることが意外とあるのです。
少なくともAT-OC9ML/IIで使うという前提であれば、KS-Stage102EVO.IIとKS-Stage103EVO.IIのどちらが良いかという結論はなかなか出しにくいものがありました。どちらにもそれぞれ魅力があるのですが、明確にどちらが良いといえるほどの決め手には欠けます。まあ、この2つは同一グレードで傾向の違いで選択するべきものですので、その意味では製作者ので狙い通りということになるのでしょう。
PC-Triple CのKS-Stage103EVO.IIについても本レビューをご覧下さい
結果としてこのレビューは純銀単線のKS-Stage102EVO.IIとPC-Triple C単線のKS-Stage103EVO.IIの比較という形になってしまっています。
当初次にKS-Stage103EVO.IIのレビューを掲載するつもりでいたのですが、KS-Stage103EVO.IIについてもここでほぼ語ってしまっていますので、新たに掲載するのはやめておこうと思います。
なお、KS-Stage103EVO.II単体のレビューはZYX R50 Bloomとの組み合わせで一度掲載しておりますので、こちらも参考にしていただければと思います。
-
購入金額
16,500円
-
購入日
2023年10月01日
-
購入場所
KS-Remasta
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。