企業インフラ(サーバー系PC構築および運用)を経験していて感じていましたが、個人使用においてもテープドライブがバックアップの最終兵器かなと個人的に思っています。
特に自宅でNASを所持している場合にはデータバックアップの最後の砦になるのかと。
容量が少なければ BD-R によるバックアップでよいかもしれません。
しかし、容量が多いとディスク入れ替えと容量毎にファイルを調整するのが意外と大変であったりします。
テープドライブによるバックアップは、それらの作業から解放されるうえ、復元時の手間が少なくなります。
・・・っと思ってはいるものの、ずっとテープドライブを入手していませんでした。
というのも優先度は緊急ではなく、通常使用するわけでもなく低いものです。
バックアップの最終砦として使うものなので、後回しにしてきました。
とはいえ、個人でテープドライブを購入するとなると、新品だとそれなりの値段します。
LTOの番号はバージョンを表しており、そのバージョンが新しくなる程値段が高くなり、記憶容量もアップしていきます。
今回は、ヤフオクで比較的入手しやすいLTO6のテープドライブを中古で入手してみましたので、レビューをしていこうかと思います。
ちなみに価格は41,800円、送料1,150円でした。
そもそも、LTOテープドライブとは。。。
高速転送、大容量を実現する磁気テープストレージです。
LTOテープにデータを読み書き出来て、カートリッジ方式のストレージになります。
外部サイトの方がわかりやすく情報がまとまっていると思ったため、詳細は割愛します。
各自WIKIなどで検索してください。
想定外の事態で遠回りした
◆ソフトウェアについて
Windows環境で使用する場合、有償の対応ソフトウェアが別途必要です。
どうやらHPのサイトでユーザー登録すると、RHEL用ソフトウェアを無償で使用可能なようです。
そのソフトウェアでLTFS(Linear Tape File System)が使用可能で、テープをディスク媒体もしくはリムーバブルメディア(USBメモリ、外付けHDD等)と同様の操作で扱えるようになります。
ということで今回使用するOSはLinuxで無償使用にしようと思います。
◆環境について
環境はテープドライブ専用機として別途構築する予定。
下記のような感じでデータバックアップを考えています。
【NAS1】
└─【NAS2】※1
└─ 【LTO専用PC】--> 【テープドライブ】※1
※1 NAS1データをバックアップします。
◆製品情報について
このサイトが製品ページになるのですが、届いた商品の接続インターフェースはSAS接続ではなくてFC(ファイバーチャネル)接続でした。
◆接続ケーブルについて
これはマニュアル記載された製品背面の図です。
右側の長方形がSFPコネクタ(ファイバーチャネル)、電源コネクタはMolex Microfit powerとなってる部分です。
これがMolex Microfit powerと記載の電源コネクタです。
このコネクタ…市販品で売っていないんだ。詰んだ・・・orz
素人は思うでしょう。
だいたいのストレージデバイスは12v、5v、GNDで動作しています。
こんな感じです。(Windowsペイントで作ったやる気がない適当画像)
※テスターをあてたり、分解して一応確証は得て明記しているので内容はあってるはずです。
デスクトップPCであれば、これらの電源は確保可能です。つまりDIYレベルでなんとかなるレベル!
問題はこのコネクタに接続可能なパーツの入手。
まぁ、結果なんとかなった。詳細は下記パーツのレビューを参照のこと。
データケーブルとして下記のFCケーブルを使用する。
ケーブルを下記のSFP+モジュールへ接続します。
モジュールはLTOテープドライブに付属していました。
設定が正しいのか不明だが、読み書きは出来た!
◆ファイバチャネルの設定
下記製品をセットし、LTOテープドライブに直接接続した。
PCのBIOS画面でOpROMをUEFIに変更して再起動します。
再度BIOS画面に入り、Fibre Channel Adapteの設定画面に入ります。
Scan for Fibre Devices を選択します。
Please waitが表示され、下記画面が表示された。
WWN(World Wide Name、イーサネットのMACアドレスのようなもの)を見るとデバイス認識していると思われる。
◆環境構築
OSは CentOS Stream 8を利用することにした。
※後日 CentOS 7 で作成しなおしている。
ソフトウェアはrpmパッケージでのインストールでエラーが出たため、ソースコードからコンパイルして無事にインストール出来た。
◆試し書きする前に
事前にエアダスターでホコリを飛ばしたので、仕上げにテープのクリーニングを行うことにする。
ここで使用するのはクリーニングテープという専用品。
何回も実行するとテープヘッダが摩耗するらしいので、決まったタイミングでクリーニングする必要がある。タイミングはLTOの世代や稼働時間や書き込み容量で変えるようだ。
問題なくクリーニング出来たと思うので、読み書き用のテープカートリッジを入れます。
◆ファイル共有で手軽に操作可能にしてみる
sambaサービスを使用して、LTOテープのファイル格納先をファイル共有で公開してみる。
以下の画像より下記のことが確認できた。
・LTOテープドライブ(/dev/nst0)が認識されており、ローカルの /mnt/lto にマウントしている。
・容量として2.3TBが使用可能な状態になっている。
・テープドライブにテストファイルを1つ置いている。
・この時点でテープドライブへの試し書きは完了している。
上記の状態で、sambaサービスを起動して、/mnt/lto を ReadOnly で公開した。
アクセスするとこのような感じで見ることが出来た。
ファイルを開き中身を見ることが出来たので、目的は達成した。
ちなみにLTOテープドライブへ書き込む際はNASをcifsマウントして、ファイルおよびフォルダをコピーしてLTOテープドライブへ書き込む運用とします。
書き込むデータも消さずに保管しておいた方がいいね!
◆データバックアップ ★2021/04/02 追記
NASデータをバックアップしようとしてデータを取りまとめていたら、丁度テープカートリッジの最大容量(約2.3TB)でギリギリに収まる感じだった。
ちなみに未フォーマット時は2.5TBでLTFSフォーマットすると2.3TBくらいです。
書き込み時は「キュイーン」と音がして、MOドライブのような感じでした。
音量としてはDVD-R等を最大速度で書き込むくらいな感じ。
書き込んでは止まってを繰り返しているようだが、NASから直接データをコピーしているためギガビットイーサネット速度の100MB/s前後程度しか出ていない。
ローカル環境のSSDに書き込みためのファイルが置いてあればもう少し速度が出るのかもしれない。
時折止まるので連続書き込みではないようだが、ドライブを手で触ると45℃以上はあったと思う。
熱いと思えるくらいで触り続けると危険な程度な温度だ。
とりあえず書き込み処理を行っているときは扇風機で風を当てることにした。
結局、2.3TBを書き込むのに6.5時間程度かかった。
上記結果から計算すると平均書き込み速度は103MB/sくらいです。
LTO5は最大140 MB/s、LTO6は最大160 MB/sの書き込み速度です。
まぁ個人使用なので許容範囲の速度かなと思いました。
VNCでリモートアクセスし、NAS上のファイルをLTOテープデバイスへコピーしている図
特別なアプリは使用していない。
それにしても約8時間ずっと「キュイーン、キュルキュル」と音が鳴っており不協和音な感じでした。一定音ではなく音階が定期的に変わります。
企業のサーバールームだと、その室内そのものが空冷ファンでうるさいのでLTOデバイスがうるさくしても然程気にならないと思いますが、個人宅で鳴りっぱなしは少々不快に感じました。
★2021/08/29 追記
差分バックアップを行おうとしたが、テープのファイルシステムがマウント出来ない。
どうやらEOD(データの終わり)マークが正しく書き込まれないため破損しているっぽい。
テープをイジェクトするコマンドを実行せず、物理的にイジェクトボタンを押したからだろうか。
ログを確認していたらリカバリーとして ltfsck で deep-recovery オプションをつけて実行してくれという旨のメッセージが出ていた。
実行したが効果は無かった。 full-recovery オプションをつけて実行しても効果がなかった。
OSの問題かと思って CentOS 8 Stream から CentOS 7 へダウングレードしてみたが、特に変わらなかった。
書き込んだデータは NAS2 (下準備 項 の「◆環境について」を参照) にすべてあるので、テープを再フォーマットして再度バックアップしようと考えた。
バックアップ元となるデータは保持しておいて正解であった。
再フォーマットは下記を使用した。
# mkltfs -d /dev/nst0 -f -g -c
-f は強制。-g は Interactive mode らしい。
なお、-g をつけない場合、フォーマットは失敗した。
-c は no-compression 。つまり無圧縮。
このオプションをつけない場合、デフォルトで圧縮が有効になるようだ。
書き込み時に圧縮されるが、テープの総容量は増えないので2.5TBのまま。
テープのパッケージに6.25TBと記載があるが、これは圧縮した際の目安なので信じてはいけない。
NASで管理しているデータは、ほとんどバイナリ型のデータが多いので圧縮してもそんなに小さくならない。
★2021/09/09追記
----- 追記 ここから -----
上記の08/29に再書き込みを行っていたが、エラーが出て強制終了した。
どうやらサーバー電源の電流(A)が足りていないらしく、テープドライブが途中で書き込みエラーになってしまった。(と思われる)
PC用電源を増設するべく下記を接続した。
再フォーマットして試し書きを開始!
とりあえずエラーが出たファイルを突破しているので大丈夫だと思われる。
接続した電源は4ピンペリフェラルしか使用していない。
参考までに電源スペックの電流は下記になります。
+5V 16A、+12V1 18A、+12V2 18A
----- 追記 ここまで -----
★2021/09/10追記
----- 追記 ここから -----
昨日は仮で作業したが、今日は本作業としてバックアップする。
バックアップ構成は下記のような感じになった。
【NAS1】
└─【NAS2】※1
└─ 【LTO専用PC RAID 0 (HDD x 2)】
└─ 【テープドライブ】※1
※1 NAS1データをバックアップします。
今までは NAS 2 のデータをネットワークから直接テープドライブへ書き込んでいた。
ネットワークコピーの影響で100MB/s程度の書き込み速度だった。
今回は RAID 0 のディスクへ一度書き込むべきデータを用意してから、テープドライブへ書き込むことにした。
HDD2台追加したことで電源供給が不安定になってテープドライブがエラーを起こすことになったが、電源増設により改善した。
結果、テープドライブの書き込み速度は160MB/s前後となった。
LTO6 の書き込み速度は最大160 MB/s とのことなので、理論値限界までは速度が出ていることになる。
むろん小さなファイルが続くと速度は落ちるけれど。
ちなみに今回書き込むのは前回同様の 2.3TB。書き込むのに4.2~4.5時間くらいとなる。
改善前は6.5時間くらいだったため、騒音発生が2時間くらい軽減できたことになる。
また、書込み中は熱がそれなりに発生する。少なくとも長時間触れないくらいの熱量。
空冷ファンなどで冷やしてあげる必要がある。
そんなとき、下記のような製品を下に置くとヒートシンク的な役割になるのでよいのかもしれない。
(ずっと真面目に書いてきて、ここでまさかの製品かと思いますが・・・至って真面目である)
----- 追記 ここまで -----
◆データリストア
特に書くことがない・・・。
テープを入れて、ltfs コマンドで所定のディレクトリにマウントして、必要なファイルを別のストレージにコピーするだけです。
特別なソフトや操作は無いです。
シーケンシャルアクセスになるから、多量のファイルがあると時間かかるくらいか。
★2023/11/14追記
OS を Proxmox にして、仮想OSに切り替えようと思った。
改めて見返したが少し情報が足りないと思い補足。
「HPE StoreOpen Software」でGoogle検索して、HPのサイトより最新のソフトウェアを入手する。
現時点で HPE StoreOpen Software 3.5 か。
バージョン3.5では RHEL8 に対応しているらしい。
互換性を考慮して、Oracle Linux 8.8 をインストールした。
所定の場所に「HPE_StoreOpen_Software_3.5.0_RHELx64.tar.gz」「libicu50-50.2-5.el8.x86_64.rpm」を配置。libicu50はインターネット上からrpmを拾ってきた。バージョンが合わないとインストールが出来ないようだ。
下記コマンドを実行しインストールした。
# cd /usr/local/src
# tar zxvf HPE_StoreOpen_Software_3.5.0_RHELx64.tar.gz
# rpm -ivh *.rpm
各種コマンドのメモ書き
参考:https://blog.yukirii.dev/how-to-use-hp-ltfs-on-linux/
### LTFSフォーマット(初回時、無圧縮指定)
# mkltfs -d /dev/nst0 -c
### 既にフォーマット済みの場合(無圧縮指定)
# mkltfs -d /dev/nst0 -f -c
### 既にフォーマット済みの場合2(無圧縮指定)
# mkltfs -d /dev/nst0 -f -g -c
### マウント
# ltfs /mnt/lto
### Read onlyマウント
# ltfs -o noatime,force_mount_no_eod,readonly_mount /mnt/lto
※マウント時に下記のようなエラーが出たら未フォーマット状態、最初にフォーマットする必要がある
14b8 LTFS17168E Cannot read volume: medium is not partitioned
14b8 LTFS14013E Cannot mount the volume
### アンマウント
# umount /mnt/lto
### テープのファイルシステム状態チェック
# ltfsck /dev/nst0
### LTOテープのイジェクト
# ltfs -o eject
### データリカバリー(マウント前)
# ltfsck --Force --full-recovery /dev/nst0
# ltfsck --Force --deep-recovery /dev/nst0
### ロールバック世代の確認
# ltfsck --list-rollback-point /dev/nst0
### アンフォーマット ※パーティションが消えるので注意!
# unltfs -d /dev/nst0
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購入金額
41,800円
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購入日
2021年03月19日
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購入場所
ヤフオク
jakeさん
2021/03/25
LTO-8だとドライブだけでウン十万円とかする世界ですし、なかなか手が出しづらいです。
かもみーるさん
2021/03/25
LTO世代が最新なら容量と速度を確保出来ますが、個人利用ではコスパは悪いです。
しかも常用するものでもないですしね。
新品での各種パーツの入手は個人利用だと、少々悩むかと思います。
中古でもよいと割り切れるならばLTO5/LTO6あたりで数万円くらいの投資でいけると思います。
それでもSAS接続は人気なので落札は時間かかるかもしれません。
まこりんさん
2021/09/10
これを個人でやるとはさすがです!
僕もNASのバックアップをバックアップ時だけ電源を入れるNASでやってますが、最近はUSBの大容量HDDをNASに繋いでバックアップでもいいかなって思っていた位なのに。
マジ尊敬だわー
かもみーるさん
2021/09/10
コメントありがとうございます。
久々に電源入れた時に故障してた…そんな状況をカバーしたかったんです。
個人ではDVD-RやBD-R媒体へのバックアップが普通なんでしょうけど、バックアップ枚数分の手間がかかる、枚数分の場所を食うなどの問題がありました。
だったら中古で手が出せる範囲内のLTOドライブを導入するかなって。
建前はそんな感じ。
本音ベースだと「あまり触ったことないから興味ある…イジってみたい。」という。
欲望のまま突っ走っただけです。