レビューメディア「ジグソー」

最後の砦・業務用ストレージをご家庭で!

一昨年、私はHDD6基によるRAID5ストレージを構築した。
10TBに及ぶ大容量と、RAID5による障害耐性を得て、これで数年はデータの保管先に困らないだろうと思っていた。

 甘すぎた予想の図。BD百枚を焼く苦行で得た空き容量は、たったこれだけ。

 

私の予測は、ハッキリ言って甘かった。
自動的に映像圧縮まで行うシステムならば、そうそう10TBを埋め尽くすことなどあるまいとタカを括っていられたのは、僅かに半年。
およそ一年半を経過した昨年、ついに容量破綻を来すに至る。

 

結局、今年2月あたりからBDメディアへのデータ待避を何度も繰り返すという苦行の後、アレイの使用量を7TB以下にまで減らすことが出来た。

 

しかし、このBD待避がとんでもなく苦痛だった上、問題続出だったのである。
録画データをRAR圧縮後にBDへ待避させたまでは良かったのだが、ファイル数や容量の問題もあって、1/50くらいの確率ではあったが圧縮データに破損が見られたのだ。
リカバリレコードを付けていたから良かったものの、作業に一ヶ月以上もかけたにも関わらず、このように低い信頼性では話にならぬ。

 

何よりメディア一枚あたりの容量が25GBでは、焼く手間がハンパない。
そのとき待避したデータ容量はおよそ2.5TBに及ぶ。要はBDを100枚を焼いたのだ。

 

そして、再びこの苦行が大した間を置かずやってくるだろう。

 

 

この恐怖の予測に到達したとき、私の頭には二つの選択肢が浮かんだ。

 

1.3TBのHDDを3つ購入し、そこにデータ移行する。
2.LTOドライブを買い、LTOメディアへデータを待避する。

 

一般的には、前者を選ぶほうが普通というか、それ以外の選択肢など思いつかない。

そもそも、多くの人にとって「LTOとは何ぞや?」であろう。

 

IBM製のLTOドライブ、LTO Ultrium4。5インチベイ2段を占領する。

LTOとは、『Linear Tape-Open』の略称で、IBM、HP、Seagateによって開発された、バックアップ用・磁気テープの事である。

ここで言う「OPEN」は、従来あった磁気テープドライブのDLT(Digital Linear Tape)がDEC時代の特許だらけで高コストなため、DEC特許を引き継いだQuantumへの言うなれば意思返しとして『オープンな規格』という、意味というか『嫌味』を込めたものだ。

 

現在のところ、LTOは第六世代まで開発が進んでいるが、今回入手したものは第四世代。

第六世代の2.5TBから見れば霞むものの、二世代前でもメディア一本あたりの容量は800GBと、個人利用としては十分な大容量だ。

 

今回、既に世代交代が始まりつつある第四世代を購入した理由は、単純にお値段。

本来は業務用、それも割と大規模なストレージ・サーバーのバックアップ用として使われる製品なので、LTOドライブは元々のお値段がかなりお高い。

 

上に載せているのは一般的なDVD。フルハイトLTOなのでかなり大きい。

 

ちなみに、今回入手したLTO4は中古サーバーに組み込まれた状態で25000円で落札した。


ドライブ単体でも2.5~3.5万くらいするので、今回の落札価格は安価なほうなのだが、これが第六世代であるLTO6となると、お値段は30万円を超えてくる。

一世代前のLTO5でも25万くらいする(中古で一度8万円で出回ったこともあるが)ので、個人ユースで安易に手が出る値段じゃなくなるのだ。

 

また、LTO4を選んだもう一つの理由は、新品のメディアが割とオークションで安価に出回っていることが挙げられる。平均落札価格は、一本あたり2000円前後だ。

 

また、LTOは業務用なのでドライブ・メディア共に高い耐久性を持つ。

磁気テープというメディアの特性上、当たり前だが磁気には弱いが、強い磁気を帯びない状態で保管すれば、規格上は30年、実用上10年以上の記録保持が出来る。衝撃にも比較的強い。

 

個人利用という観点だと、今はLTO4辺りが最も熟れているのだ。

最も、それはLTOを使う上での問題点を全て理解した上で、の話になるのだが。

 

LTOは一般的なドライブとして認識されないため、使い勝手に難がある。

 

LTOは大容量のバックアップが取得出来る反面、そのアクセスには様々な制限がある。

これは現行のLTO5や6では既に解消されているのだが、LTO4は単体でOSのファイルシステムにアクセスする事が出来ない。

 

なんのこっちゃと思われるかもしれないが、要するにLTO4は「テープデバイスに対応したアプリケーションからの制御でしか、読み書き出来ない」という制限があるのだ。

 

LTOはバックアップを主目的とする製品なので、一般的なファイルシステムによる読み書きが出来ると、バックアップデータの喪失に繋がる。

また、効率良くバックアップを取得するという目的から、重複データなどを省いたり、定期的にバックアップを取得することで、喪失データを最小限に止める必要もある。

 

そのため、LTOは開発当初から「管理アプリケーションの制御下のみで動作する」ことが常識とされ、その常識は現在でも健在。(LTO5以降は、ドライバ導入で一般的なファイルシステムで読み書き出来るようになっているが、まだ余り一般的な利用には至っていない)

 

この特殊性をカバーするため、Windowsでは『ntbackup』というテープドライブ専用アプリケーションが付属していた。

私も、今回このntbackupを使うつもりでLTO4を購入したわけなのだが・・・・・・

 

ntbackup、Vista以降は非搭載だとぅ!?(読込のみ可)

 

そう、MSはWinXPにてOSによるテープドライブ対応を終了していたのである。

しかも、それに気付いたのはLTO4ドライブが着荷した、その当日。

 

現在、ストレージ・サーバーに採用しているOSはWindows8.1Proだから、勿論ntbackupは入っていないし、使えない。

一応、VMWARE上にWinXPを入れ、VM上からntbackupを動かすという強引な方法もあるにはあるのだが、ストレージ・サーバーのシステムは出来るだけ簡素化しておきたい(OSの定期バックアップ負荷を減らすため)事もあり、色々調べてみた。

 

結論としては「TodoBackupの有償版」が最も安価かつ、お手軽。

テープデバイスの認識、テープの初期化及びデータ削除、テープ内バックアップの閲覧、テープへのバックアップ・データ直接作成も可能。

なおかつ「余計な機能が一切無い」ので、ライブラリ管理など必要ない、単なるデータ書込みのみを目的とする場合、これが最も判りやすい。

バックアップ先をテープに直接指定するだけの、お手軽操作。

テープの消去、中身の閲覧もテープツールを起動するだけ。

ただ、やはりというべきか、テープドライブへのバックアップはかなり遅い。

転送速度が遅いと言うわけでは無い(読み出しはHDD並みに速い)のだが、バックアップを作成しつつ直接書込を行った場合、800GB分の書込はおよそ7時間強もかかる。

右上のタイムスタンプに注目。マジに7時間かかる。

ただ、BD30枚を焼く手間と時間を考えたら、こちらのほうが遙かに手間は少ない。

一回のバックアップ命令を出せば、あとは寝ているうちに終わる。

 

まあ、ハッキリ言ってこんな手間のかかるメディアを使うより、HDDによるDisk to Diskがコスト、速度、手間の三点において勝る。

ただ、個人的にHDDを非通電状態で長期保管というパターンは、今まで何度となく「故障」という事例に悩まされてきたので、全く信頼出来ない。

 

そういう意味で、このLTOによる長期保管は個人的に「信頼性」が高くて安心なのである。

無論、ネタ性が高いという点に留意しなかったわけでは無いが、実用面でも割と優秀。

 

個人レベルで運用する代物じゃないと言えばそこまでだが、ネタ性でもコスパでも自己満足度は非常に高い。

 

まあ、万人にお勧め出来る代物じゃないのは確かだが。

 

 

  • 購入金額

    25,000円

  • 購入日

    2014年05月30日

  • 購入場所

    ヤフオク

コメント (17)

  • sorrowさん

    2014/05/30

    おぉ、、、すばらしいレビュー、有難うございます。
    LTOは憧れるけど、(仕事用にしたって)高過ぎると思ってました。
    LTO4探してみます m(_ _)m
    すばらしい。
  • Vossさん

    2014/05/30

    運用開始までは面倒も多いですが、漕ぎ着けちゃえば割と便利ですよ。
    ある程度価値の判っている業者がヤフオクで買い占めやってたりする(SASカードとのセットで39800スタートの品が速攻で落札されていた)ので、ドライブ単体で手に入れるより、LTOのついたサーバーを買うほうがお得なようです。
  • sorrowさん

    2014/05/31

    Vossさん
    競争相手が増えるまえに手に入れなきゃ・・・
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