所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。セルフカバー、リメイク。自らがかつて創った作品にもう一度向き合い、新たな解釈で生まれ変わらせることをこう呼びます。もともとの曲についているファンをいい意味で裏切りながら、新しいファンを獲得する...うまくいったセルフカバー、リメイクモノはそういう効果があります。ホールイベントの企画で始まりながら、その後事務所の音楽イベントのテーマソングの位置を占めるまでに成長した、リメイク作品をご紹介します。
福耳。元々同じ事務所(オフィスオーガスタ)に属していた杏子(元BARBEE BOYS)、山崎まさよし、スガシカオの3人がイベントライヴ参加にあたって組んだユニット。その後、2001年のオフィスオーガスタ所属アーティスト合同ライヴで、やはり同じ事務所の元ちとせが参加した。のちにその企画バンド=福耳の最初の曲「星のかけらを探しに行こう Again」は、その事務所所属アーティスト合同ライヴ(Augusta Camp)のテーマ曲のようになり、スガが事務所を退所しバンドを抜けたあとも、オフィスオーガスタ所属のアーティストによって歌い継がれている。現在では「福耳」とはオフィスオーガスタ所属アーティストの同窓バンドという感じの意味合いになっていて、その後も何枚か作品をリリースしているが、参加メンバーは作品ごとに異なる。
そんな福耳の結成のきっかけとなったのが、本作の表題曲「星のかけらを探しに行こう Again」。もともと杏子のソロ曲「星のかけらを探しに行こう」のセルフカバーというかリメイク曲で、メインヴォーカリストは杏子のままなので、印象が大きく違わないかというと、全然違う。杏子の声自体も「Again」の方がハスキーさが増して色が強いし、山崎とスガによる元曲より存在感が大きいサビのコーラスや、中盤から入る美しいハモりの効果もあるが、一番大きいのはテンポ。「Again」の方がゆっくりめに演奏される(元曲 BPM=102、Again BPM=92)。これによって、感動的な感じが強くなり、爽やかな夏の夜の歌という感じに仕上がっている。夜空を渡るようなツリーチャイムの音も効果的。
「Happy Birthday」は、福耳の結成のきっかけとなった1998年のZepp Sapporoこけら落とし公演のライヴテイク。この会場で「星のかけらを探しに行こう Again」は披露されたが、その曲のライヴ音源ではなく、こけら落とし=ホールの完成ということで?、スガが杏子に提供した楽曲「Happy Birthday」が演奏され、それが収録されている。この曲では山崎は不参加で、スガのギターに乗せて、杏子とスガが歌う形。元曲はアップテンポな楽曲で、「名探偵コナン」の映画のテーマだったが、ここではスガシカオのアルバムに収められたセルフカバー版に近い、弾き語り風のものになっている。これもテンポが落とされているが(BPM124⇒102)、二人の歌のうまさと詞の内容を味わうにはこちらの方が良い。
ちょっとファンキィでアーシィなのが「星のかけらを探しに行こう (Southern Milky Way Version)」。ちょっとスカ風に裏々にキーボードのコードが入り、ギターのカッティングもウンチャカウンチャカと軽やか。元曲では、ギターに山崎と名手 間宮工がクレジットされているが、こちらは「星のかけらを探しに行こう Again」の作曲者BABIこと馬場一嘉がプレイ。この軽やかな感じは、彼と編曲者でこの曲のキーボードをプレイする田村玄一(スチールパンの名手)の色なのかなぁ。
「福耳」としてのデビュー作となったこの曲、曲の「速さ」が印象をガラっと変えた感じ。前のテンポで歌ったなら、ここまで「あとに残る」曲にはならなかったのではないだろうか。
曲というものの「心への届き方」の妙を感じた作品でした。
【収録曲】
1. 星のかけらを探しに行こう Again
2. Happy Birthday (Live at Zepp Sapporo '98.4.12)
3. 星のかけらを探しに行こう (Southern Milky Way Version)
4. 星のかけらを探しに行こう (Backing Track)
「星のかけらを探しに行こう Again」
元曲よりはるかに良い仕上がり。テンポの重要性がよくわかる。
そういやバンド時代BPM5ずれると気持ち悪かった。
-
購入金額
1,000円
-
購入日
2002年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。