レビューメディア「ジグソー」

30年を経て、まだ枯れていない、よりアツく、よりエロく

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。以前は自分の好きなアーティストに対する支援は、パトロンになれるほどの大金持ちでもなければ、リリースされた作品を購入して支えるくらいしかありませんでしたが、現在ではアーティストが企画を立てたクラウドファンディングに出資することで、商品化を実現する支援ができたりもします。長年応援しているバンドのメジャーデビュー30周年を記念した企画への出資で、得られたリターン盤をご紹介します。

 

FLYING KIDS。cybercatがまだどっぷり音楽やっていたときに、バンドオーディション番組で見出されてデビューを果たした。ハマザキこと浜崎貴司のキョーレツな個性を持つヴォーカルと、70年代ファンクをしっかり消化・昇華した新時代ファンクが受け、バンドブームと相まって人気を博した。かなり近い方向性の音楽をやっていた自分たちにとっては、目標/憧れのバンドでもあった。その彼らも、名曲「幸せであるように」や、アクの強い「我想うゆえに我あり」のような、デビュー直後のどファンク路線から、徐々に洗練されたポップさも身につけ、バンドブーム後も「ディスカバリー」などのヒットを飛ばすが、20世紀末の1998年に一度解散する。その後およそ10年の時を経て、コーラス担当のじゅんちゃんこと浜谷淳子を除くオリジナルメンバーで再結成され、アルバム2枚を制作するが、今度はキーボーディストのイーノこと飯野竜彦が2014年に脱退し、ふたたび減速。しかし、2017年にヴォーカルのElliとサキソフォニストの宇賀まりというふたりの女性と、トラックメイカー「45」としても識られるキーボーディストのSWING-Oと、パーカッショニスト竹本一匹が加わり、グループ史上最大の9名構成となって、待望の14thアルバム“みんなあれについて考えてる”

がリリースされる。

 

そして今年(2020年)、彼らが1990年4月にシングル“幸せであるように”でメジャーデビューしてから、30周年を記念して創られた15thオリジナルアルバム“そしてボクら、ファンキーになった”に、各種特典をつけた形の「ニューアルバム&限定グッズ」がクラウドファンディングで期間限定販売された。自分が支援したリターンは、単にCDショップでアルバム単品を買うより9000円弱ほど高い勘定になるが、十分その価値はあったかな。

音源系リターンはアルバムと非売品のリミックスCD、MV入りのDVD
音源系リターンはアルバムと非売品のリミックスCD、MV入りのDVD

 

まず市販もされている15thアルバム“そしてボクら、ファンキーになった”。

 

リードチューンの「ワレメユニバース」は、彼らのもともと持っている泥臭さと洗練の2つの感性、ファンクの根っこにある猥雑さと何でも受け入れる懐の深さが合わさって、オリエンタルで、ファンキィで、エネルギッシュで、懐かしくて新しい、そして何者にも似ていないFKファンクになっている。この作品の彼らは、オリジナルメンバーからすると女声コーラスとキーボードが替わり、サックスとパーカッションが追加になった形になっているが、新メンバーが良い仕事をしている。宇賀まりのサックスが寄り添う♪アブラカタブラ~/我等ワレメの/奥で生まれた/神の申し子♪という部分は、民族音楽というかアブナイ方の世界の香りプンプンだが、その後のソウルフルなブリッジでは黒々していて、ファンク王道の間を自由に行き来するし、竹本一匹のパーカッションはドラムスだけでは出せない推進力を曲に与えている。しかし相変わらず、詞は意味深でアブナイw

 

このアルバム、作曲に多くのメンツが関わっていて、グループ名(FLYING KIDS)名義の「ワレメユニバース」を除いても、共作も含めて6人が曲を書いている。その中では、アルバム中間部の、ギターの丸山史朗が書いた曲がイイ。ハマザキとの共作の「オードレイ!」は粋なイントロと曲に入ったあとのワンコードちっくな落差が良いシングル向けの曲だが、丸山単独で書いた「Long and Deep Breath Inside」は甘いブラコン系バラード。コーラス...というよりツインヴォーカルに近い立ち位置のElliの歌は、アクの強い浜崎貴司のヴォーカルに負けていないし、メロディに甘く絡む宇部のサックスが泣かせる。続く「祈りと祭り」も丸山の筆だが、アコギのカッティングがファンキィなフォークファンク。Aメロなどはほとんど弾かず曲をソリッドにしているキーボーディストのSWING-Oが、サビではぐわっとオルガンで入ってくる緩急がイイ。ここでの宇部のサックスソロはフュージョンチックで粋。

 

今までになかったElliのソロ歌唱曲「抱きしめたい」に続いては、ハマザキのソロ歌唱で「背中の彼女」(若干のコーラスはある)。これはもう一人のギタリスト加藤英彦とハマザキの共作だが、FLYING KIDSの第一活動期中期にあったような、ハチロクのロマンチックなバラード。スライドギターのようなオブリとドラマチックなピアノが泣かせる。

 

そしてクラウドファンディングの音源特典は、“another side of "And, We got the Funk" ”というリミックスCD。"And, We got the Funk"は、“そしてボクら、ファンキーになった”の英題なので、要するに今回の作品の別ミックスなのだが、全曲がリミックスされているわけではなく、入っていない曲もあるし、逆に一曲オリジナルアルバムには入っていない曲も収録されている。

 

トラックメイカーでもあるSWING-O( a.k.a. 45)が書いた「アソボ」が2ミックス3曲入っているが、2曲目の「アソボ [夜遊び remix by SWING-O]」が楽しい。シンドラ(エレドラではなくて「ピューンピューン」というヤツ)と「ザ・合成音」という感じのシンセで、ちょっと懐かしい感じの音色のバッキングだけれど、音圧的にはかなりヌかれていて、カルい感じがまさに「夜遊び」。

 

未発表曲の「マーブル ~君と僕の模様~」は、「Acoustic Version」として収められる。派手なアレンジを施せば、シングル候補曲にもなりそうなキャッチーなメロディだが、ここではアコーディオン系の音色のキーボードとベースの他は、カホンやウッドブロック、カバサなどパーカッションだけ、というシンプルさ。ほのぼのとしたアレンジだけれど、これはシャープなバンドアレンジでも聴きたいなァ。

 

クラウドファンディングの他のリターンとしては、Tシャツやサコッシュといったアパレル系、クリアフィルや手書き譜面コピー(「オードレイ!」と「背中の彼女」、「マーブル ~君と僕の模様~」のコード譜で、「マーブル ~君と僕の模様~」には、疫病退散のため?アマビエ...ならぬハマビエとメンバーのサイン寄せ書きが)。さらに上位2種の支援者だけのリターン、「オンラインイベント参加権」は、後日行われたネットイベントへの参加権。

アパレル系リターン
アパレル系リターン(懐かしの初期ロゴ)

 

クリアファイルと手書き楽譜(コード譜)、メンバーサインと「ハマビエ」
クリアファイルと手書き楽譜(コード譜)、メンバーサインと「ハマビエ」

 

そして、ファンディング当初はMV2曲入りとされていたDVDは、「オードレイ!」、「ワレメユニバース」、「アソボ」の3曲入りに。そして最後の「スペシャルメイキング映像」のラストには、今回のクラウドファンディング協力者の名前が「special thanks for your support」として刻まれた。

DVDのエンディングクレジットには...
DVDのエンディングクレジットには...

 

cybercatの名も(本名らしき人もいるので加工してます)
cybercatの名も(本名らしき人もいるので加工してます)

 

全体としてとてもメンバーを身近に感じられたクラウドファンディング企画で、これは協力して良かったなって。

 

特に音楽など芸能関係の人たちには、つらい時期である現在の状況。

それでも「オレたちはヤるんだ」という気概が伝わってきた作品と企画内容でした。

 

<メジャーデビュー30周年ANNIVERSARY SET リターン内容>

・CD「そしてボクら、ファンキーになった」

・REMIX CD「another side of “And, We got the Funk”」

・MV2曲入りDVD⇒MV3曲入りDVD

・90年代のバンドロゴ使用メジャーデビュー30周年記念Tシャツ
・FLYING KIDSのロゴ入りオリジナルサコッシュ
・クリアファイル2種セット
・手書き譜面コピー
・オンラインイベント参加権

 

【メジャーデビュー30周年ANNIVERSARY SET リターン品収録曲】

<そしてボクら、ファンキーになった>

1. ワレメユニバース
2. オードレイ!
3. メタモルフォーゼ~GO GO HEAVEN~
4. アソボ
5. Long and Deep Breath Inside
6. 祈りと祭り
7. キミが大好き
8. ドッグトゥース
9. 抱きしめたい
10. 背中の彼女
11. Interlude
12. JUST MOVE ON
13. オードレイ! SWING-O re-edit version

 

<another side of "And, We got the Funk">

1. アソボ [アゲアゲ remix by SWING-O]
2. アソボ [夜遊び remix by SWING-O]

3. JUST MOVE ON [コレでいいのだ!remix by 伏島和雄]
4. マーブル ~君と僕の模様~ [スペシャル未発表楽曲音源(Acoustic Version)]
5. メタモルフォーゼ ~GO GO HEAVEN~ [愛のリコーダ remix by 丸山史朗]
6. 祈りと祭 [歌と太鼓のための remix by 竹本一匹]
7. ドッグトゥース [SWING-O re-edit version]
8. Long and Deep Breath Inside [シルキー remix by SWING-O]
9. アソボ [夜遊び remix by SWING-O instrumental]

 

<そしてボクら、ファンキーになった music video DVD>

1. オードレイ!

2. ワレメユニバース

3. アソボ

4. スペシャルメイキング映像

 

「ワレメユニバース」

更新: 2020/08/16
必聴度

デビュー当時の猥雑さが戻ってきており、ウレシイ。

あと、女性ヴォーカルの華とサックスがメンバーにいることによる色が加わったのが大きい。

  • 購入金額

    11,700円

  • 購入日

    2020年08月11日

  • 購入場所

    WIZY(D.SKH Entertainment)

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