レビューメディア「ジグソー」

あるがままの自然体が、未知の世界を構築する

前回掲載したKS-Stage401EVO.II-VKは、55,000円の製品ではあるのですが、新たに送られてきた2製品の中では安価な方となるものでした。

 

 

 

 

 

 

 

今回掲載するのは、送られてきた中では上位となる製品であるKS-Stage901EVO.I-VK。お値段は何と220,000円です。まずはこれまでと同様に、オーディオユニオンアクセサリー館のブログから型番の意味を引用しておきましょう。

 

 

KS=Karasawa Shingo

Stage=導体表面を鏡面仕上げ

900=鏡面仕上げのランク

1=海外製高純度OFC(無酸素銅)(直径約 0.6mm)

EVO.I =KS-Remasta 特製半田の1つ

VK =天然松脂 VK

 

 

KS-Stage401EVO.II-VKとの比較では、ハンダがEVO.II→EVO.I(これはレベルの差では無く音色の僅かな違いに繋がるもの)となったこと、そしてKS-Remastaの製品における最大の特徴である鏡面加工のグレードが現代的導体採用品としては最高グレードとなるStage9へと進化していることが違いとなります。つまり、ほぼ鏡面加工のレベル差だけで15万円という差が付けられているわけですが、その違いはどこまで再生音に表れているのかという点に注目したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外観上は例によってヘッドシェル側のリードチップの皮膜の色以外は、他のStageシリーズと変わりません。もっとも、20万ともなると装着時の緊張がこれまでとは桁違いでした。難易度自体は変わりませんが、これを買う予算のある方は、腕に覚えのある専門店に装着を依頼された方が良いかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ヘッドシェルは、これまでと同様にaudio-technica AT-LH15/OCCを組み合わせています。これまでの経験から、シェルリード線の細かな違いを描き出すだけの基本性能は十分にあることが判っていますので。

 

 

 

 

 

 

更新: 2020/08/01
音質

Hi-Fi調でもリスニング向きでもない。あるべき音がそこにある

早速試聴です。当然ながらカートリッジはaudio-technica AT-OC9/III、ターンテーブルはTechnics SL-1200G、フォノイコライザーはPhasemation EA-200という、我が家のメイン環境に組み入れます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはここまですべての組み合わせで聴いてきた、「Babylon Sisters / Steely Dan」を聴きます。

 

一音ごとの質だけに着目してみると、KS-Stage401EVO.II-VKの延長線上にある印象を受けます。しかし、全体として出てきている音には大きな違いがありました。

 

まず、音場は抑圧されたような印象が一切なくなり、これまで以上に外側へと広がります。ベースやバスドラムはより力強く濃い音となりますし、ヴォーカルもビシッと小さく定位してその周囲にエコーが組み合わさっていることが克明に判ります。女声コーラスには今まで金属的な響きが少し感じられたのですが、それが自然なハーモニーへと変わりました。AT-OC9/IIIらしい高解像度のHi-Fi基調は残っているのですが、ベースの質などはまるでOrtofon SPUで聴いているかのような濃さです。

 

次に「I Need To Be In Love/ Carpenters」(LP「Stereo Laboratory Carpenters」収録)を聴いてみます。

 

実はこの曲についてはヴォーカルの強弱が、リミッターなど使っていない時代の録音の筈なのに何となく不自然に感じていたのです。しかし、KS-Stage901EVO.I-VKで聴いて、その理由がはっきりとわかりました。

 

声そのものの生々しさは前回のKS-Stage401EVO.II-VKでも十分に感じられたのですが、KS-Stage901EVO.I-VKでは声を張る時に上体を反らしてマイクから離れているという、カレン・カーペンターの体の動きまでが明確に描写されるのです。勿論、冒頭のピアノもより質感が増して今まで以上に本物のピアノらしくきこえます。

 

 

次にいわゆる'80sとして「Forever / Kenny Loggins」(LP「Vox Humana」収録)という、さほど録音が良いとはいえない楽曲を敢えて聴いてみました。ここまでオーディオ的に完璧だと、録音の質が低いものの表現が気になったのです。

 

しかし、ここでもヴォーカルそのものと、デジタルリバーブと思われるエコー成分をきちんと描き分けて見せ、不自然さは無いまま極めて緻密な描写を見せてくれます。この曲で何よりも驚いたのは、曲終盤で演奏が盛り上がりすべての楽器が音を出している部分です。そのすべての音が一つ一つきちんと分解して、埋もれてしまう音が一つも無いのです。ここまで分解能が高い描写は、高額なハイレゾDACでも聴いたことがありませんし、今までこのレコードを聴いてきて体験したこともありません。

 

 

さらに「Without You / Mariah Carey」(LP「MUSIC BOX」収録)を聴いてみましたが、こちらはKS-Stage401EVO.II-VKでも見事な表現だったものをより深化させた印象です。録音の質が決して良いわけではないのですが、そんなことが気にならないほどにマライア・キャリーの歌唱力に引き込まれ、ただ曲を通して聴いてしまいました。今まで何度となく聴いてきた曲ですが、ここまで引き込まれたことは過去に一度もありません。

 

 

デジタル的な音作りのレコードとして、「Get Lucky / Daft Pank」(LP「Random Access Memories」収録)も聴いてみましたが、ナイル・ロジャースが入れているギターのカッティングが「名手が弾いている」ということを強く意識させられるほど「活きた音」になります。エレキベースの音の重さも、これまでSL-1200Gで体験したことがないレベルです。

 

何れのレコードでも、不思議なことではあるのですがノイズフロアが下がったという印象もあります。シェルリードでノイズが減るわけはないのですが、雑味が減ったことで聴感上のS/N比が良くなったのかもしれません。

 

 

他にもいろいろな曲を聴いてみましたが、総じていえることはオーディオ的には弱点が見つからないほど完璧な描写でありながら、聴いている内に楽曲に自然と引き込まれていくほど高いレベルのリスニング体験も出来ているということです。つまり、よく言われる「オーディオ的な正確さ」「リスニング向き」などという表現はこのシェルリードには当てはまりません。ただ、レコードに刻まれ、カートリッジが拾い上げた音を、余すこと無く伝えてくれているということなのだと思います。

ここに、オーディオとして一つの完成形があるのではないでしょうか。

 

 

もっとも、この製品の価格は今回組み合わせたフォノイコライザー+カートリッジ+ヘッドシェルの金額を超えてしまうものであり、いくら音に惚れ込んでもそう簡単に買えるものではありません。

 

自分の環境で使わせていただくことが出来たありがたさを感じると共に、この音に今後も憧れ続けることになるんだろうな、という思いも残っています。

  • 購入金額

    220,000円

  • 購入日

    2020年07月14日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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