KS-Remasta製シェルリード一斉試聴シリーズです。今回の一斉試聴はこれが最終回となります。
今回取り上げるのは、他の製品よりは頭一つ抜けて高価な2万円のシェルリード、KS-Stage201EVO.IIです。
まずはこの型番の意味を、例によってオーディオユニオンアクセサリー館のブログを参考に解説しておきましょう。
KS=Karasawa Shingo
Stage=導体表面を鏡面仕上げ
200=鏡面仕上げのランク
1=海外製高純度OFC(無酸素銅 0.6㎟単線)
EVO.II =KS-Remasta 特製半田の1つ
これまでに取り上げた製品との違いは、導体表面を磨いて鏡面仕上げとしている点です。そして、この鏡面仕上げこそが、KS-Remasta製のシェルリードがオーディオ界で特別視される大きな理由となっています。
鏡面仕上げのランクというのは、仕上げに使う研磨剤の細かさによって決定されます。Stage100シリーズは10000番、Stage200シリーズは20000番、Stage3シリーズであれば30000番(数字が大きいほど細かい。通常研磨に使われる耐水ペーパーなどでは5000番でも結構細かい方です)という具合だそうです。一般的には貴金属を磨く時でも10000~15000番程度だそうですから、普通なら銅線を磨くような細かさではないということがお判りいただけるでしょうか。
ちなみに、Stage100シリーズの鏡面度を1として、国産の高純度・高精度オーディオ用銅線であるPC-TripleCでせいぜい0.6~0.7程度、海外製であれば8N-OFCでもせいぜい0.5ということですから、より上位のStageシリーズは常識レベルではない仕上げであるということです。
なお、ここで使われている海外製高純度OFCは、鏡面加工無しのKS-LW-1800EVO.Iという製品でも使われていて、これとStageシリーズを聴き比べることで、磨きと音の関係を把握することが出来ます。今回KS-LW-1800EVO.Iは試聴に含まれていませんが、機会があれば比較もしてみたいところです。
単線ですので、曲げればその形をある程度保ち続けます。取り付けの難易度はKS-LW-8900LTDほどではありませんでした。
リード線だけで2万円という、今までは想像し得なかった世界ですが、それがどのような音を聴かせてくれるのか、試聴に移りましょう。
別次元の臨場感
まずは、これまでと同様の試聴を行ってみましょう。KS-Stage201EVO.IIと組み合わせるのはZYX R50Bloom+audio-technica AT-LH18/OCC、ターンテーブルはTechnics SL-1200G、フォノイコライザーはPhasemation EA-200、試聴曲は「Babylon Sisters / Steely Dan」です。
これまでの試聴については、実際に聴いた順番とはあまり関係なく、単純に写真が見つかった順に掲載していただけでした。しかし、このKS-Stage201EVO.IIだけは実際に他の試聴が一通り終わった次の日に聴きました。何故かといえば、何となく予感がしたのです。「これを聴いてしまうと今までの比較が意味をなさなくなる」という気が。
その予感は、曲のイントロの時点で正しかったことを確信しました。低音の出方や、音場の広さといったオーディオ的表現が意味をなさないほどに、これまでの製品とは一音ごとの質が違っています。
個々の楽器は「鳴っている」のではなく「演奏されている」という実感が出てきますし、リードヴォーカルもコーラスも、そこで歌っているという感覚となります。今までの製品の音も十分素晴らしいと思っていましたが、KS-Stage201EVO.IIの音と比べれば、少し大げさに表現すれば演奏を聴いているのでは無くオーディオの再生音を聴いているという印象となってしまいます。
特に、前回のKS-LW-8100EVO.Iで不満が残ったスネアドラムの音が全く違います。安っぽいMIDI音源から出ているような印象すら受けたKS-LW-8100EVO.Iとは違い、KS-Stage201EVO.IIではきちんと生のスネアドラムです。
ZYX R50Bloomは以前から何度か触れている通り、どちらかというと俯瞰で描写するような、眼前に迫るリアリティは感じさせないカートリッジだと思っていたのですが、KS-Stage201EVO.IIと組み合わせるとかぶりつきでステージを楽しんでいるような肉薄ぶりです。
こうなると、KS-LW-6000EVO.Iとの組み合わせで確定と思われていた、audio-technica AT-OC9/IIIとの組み合わせも試してみたくなります。というわけで、付け替えてみました。
音が鳴り始めた瞬間に、KS-Stage201EVO.IIの凄さを実感させられます。当初のHi-Fiではあるものの素っ気ないAT-OC9/IIIのイメージは全くありません。演奏の一つ一つが実在感を伴い、ヴォーカルが生々しく歌い出します。
1万円クラスの製品で感じられていた一長一短というレベルでは無く、カートリッジの性能を「引き出す」だけでは無く「引き上げている」という感覚を覚えました。
文句なしの相性と思われたKS-LW-6000EVO.Iとの組み合わせも軽々と上回ってみせられてしまい、最終的にはAT-OC9/IIIのアップグレード用としてこの製品を選ぶことにしました。自分でも信じられませんでしたが、この音を聴いてしまうと「リード線に2万円」が全く不自然に感じられなくなってしまったのです。
KS-Remastaの製品にはまだまだ上位モデルが存在しているのですが、私の使用環境を考えればここが上限とみて良いでしょう。例えば同系統のより上位モデルとなるKS-Stage401EVO.I/VKなどは、30万円前後のカートリッジを推奨するグレードであり、10万円以上のクラスは持っていない私にはオーバースペックでしょう。
5千円クラスの製品でも、大手ブランドの製品とは一線を画す実力を発揮してくれたKS-Remasta製シェルリードですが、このクラスでさらに高い次元に達しているということが実感できました。「リード線で音なんて大して変わらない」とお考えの方にこそ、一度使っていただきたい製品と思います。
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購入金額
22,000円
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購入日
2020年06月24日
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購入場所
KS-Remasta
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