レビューメディア「ジグソー」

芳醇という表現が似合うトーン

今回もKS-Remasta製シェルリード一斉試聴シリーズです。

 

今回取り上げるのは、8N-OFC採用のKS-LW-8900LTDです。前回取り上げたKS-LW-8000LTDも同じ8N-OFC採用なのですが、価格は2倍違います。その違いはどこにあるのかを探っていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

今回も、オーディオユニオンアクセサリー館のブログを参考に型番解説をしておきましょう。

 

 

KS=Karasawa Shingo (柄沢 伸吾)

LW=Lead Wire(リードワイヤ)

8000=8N-OFC(99.999999% 純度の無酸素銅)

 

900=不明(超極太化の意味?)

LTD=Limited グレードの半田

 

 

このKS-LW-8900LTDの8N-OFCはOrtofon製スピーカーケーブル、8N-SPK8000の導体を取り出して利用しているとのことで、日本の同和鉱業(現DOWAホールディングス)製の8N銅を使っているものと思われます。

 

元々、KS-Remasta製のこれ以下の価格帯の製品でも、一般的なシェルリード線よりは太いことが多いのですが、このKS-LW-8900LTDはその中でも特に圧倒的に太く、単純な太さでいえば最大級ではないかと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3枚目の写真で、定番商品のaudio-technica AT6101と並べていますので、明らかな太さの違いを感じ取っていただけるのではないかと思います。なお、この製品をお送りいただいた際のコメントで、この太さによる取り扱いの難しさから超マニア向けで、オーディオ店では販売しないものという説明をいただいています。このクラスになると、先日紹介したニードルノーズベントプライヤーのような道具を使うことは必須といえるでしょう。

 

 

 

 

 

ヘッドシェル、AT-LH18/OCCに取り付けてみても、存在感がかなりあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、写真ではそのままターミナルピンに差し込んでいますが、実際にはカートリッジの取り付けを想定して、最初から導体をある程度曲げた形で取り付けました。この状態から曲げるのはかなり厳しそうに思えましたので…。

更新: 2020/07/02
音質

濃いめでやや甘口。ただ、独特のゆとりがある

これまでと同様の環境で試聴します。カートリッジはZYX R50Bloom、ヘッドシェルaudio-technica AT-LH18/OCC、ターンテーブルTechnics SL-1200G、フォノイコライザーPhasemation EA-200という組み合わせです。試聴曲もこれまでと同様に「Babylon Sisters / Steely Dan」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り付けるとこんな感じになります。

 

 

 

 

 

 

 

自分で言うのも何ですが、取り付け難易度から考えれば、意外ときちんと収まったなという印象です。ストレート結線タイプのZYX製品を選んだのが正解だったのでしょうけど…。

 

 

さて、同じ8N-OFCのKS-LW-8000LTDとの差ですが、これが面白いほどに全く違います。KS-LW-8000LTDにあった音色の明るさは、8N-OFCというよりは海外製と思われる製造元の問題なのかもしれません。同じ8N銅でも、KS-LW-8900LTDはそれほど明るい音という印象はありません。4N-OFCのKS-LW-4000LTDよりは少し明るいかもしれませんが。

 

まず出だしで明らかなのが低域方向の余裕が、KS-LW-8000LTDとは全く別物というほどに感じられるということです。量感や弾力性が十分にあり品も良いので、籠もったような感覚は無く、深い低音という印象を受けます。

 

音場は十分に広く、また今までの製品と比べても空間の密度が一気に濃くなった印象を受けます。間接音も十分に描かれるようになってきました。

 

ドナルド・フェイゲンのヴォーカルは少しソフトに感じられ、またそれぞれのアタックの部分も少し角が丸まったような印象を受けます。ハイハットの音なども透明感は十分にあるのですが、タッチが少し弱めに感じられます。ただ、女声コーラスの雰囲気の良さは格別です。

 

私が普段愛用するのはハイスピードなロックでもキレ良く鳴らすような製品ですが、この少し甘めでリッチな音というのもなかなか面白く感じます。特に使っているカートリッジが、普段は味に欠けるR50Bloomであり、それがこのような独特の魅力の音を出しているということに面白みを感じます。

 

価格帯が近いKS-LW-6000EVO.Iとの比較では、キレが良く豪快さもあるKS-LW-6000EVO.Iと、品と余裕が感じられ、濃密な描写をするKS-LW-8900LTDという違いだといえば良いでしょうか。私個人の印象としてはAT-OC9/IIIにはKS-LW-6000EVO.I、R50BloomにはKS-LW-8900LTDが、それぞれ面白い組み合わせだと思いました。

 

さすがにリード線に1万円というのは、一般的な感覚ではかなり高価だと思います。しかし、この辺りの製品を選ぶことでカートリッジが今までと全く違った魅力を発揮し始めます。以前ならまだしも、格安な良品カートリッジがほとんど無くなってしまった今となっては、この価格でカートリッジを取り替えるのにも等しい違いを生むことが出来るのであれば、十分にお買い得なのではないかとすら思います。

  • 購入金額

    11,000円

  • 購入日

    2020年06月24日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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