リード線を何種類も比較試聴するとなると、さすがに何かしらの基準点が必要になるということで、同社のスタンダード・入門用グレードとなる製品をまず選んで、それに対してどう変化したかという形で聴き比べることにして、その基準点として、こちらのKS-LW-4000LTDを用いることにしました。
KS-Remasta製のリード線の型番は結構多岐にわたるのですが、オーディオユニオンアクセサリー館さんのブログにその見方が書かれているので、そちらを参考に説明していこうと思います。
(※こちらのパッケージでは「KS-LW-4000TD」と記載されていますが、これは恐らく誤植だと思います)
この型番であれば以下の通りの仕様(の筈)です。
KS=Karasawa Shingo (柄沢 伸吾)
LW=Lead Wire(リードワイヤ)
4000=4N-OFC(99.99% 純度の無酸素銅)
LTD=Limited グレードの半田
一般的なオーディオ店に卸されている製品に「KS-LW-4000MR」という型番のものがあり、この製品のハンダを1ランク上位に変えたものが、このKS-LW-4000LTDなのではないかと思われます。
リード線の音質差を評価するためには、他の環境を極力揃えた方が明らかに楽ですから、今回はヘッドシェルをaudio-technica AT-LH18/OCC、カートリッジをZYX R50Bloomに固定して、リード線だけを入れ替えて試聴するという形としています。
普段メインで使っているAT-OC9/IIIと比べてもカートリッジとしてのキャラクターが少ないこと、リード線がストレート結線タイプで着脱が手軽であることが、今回の選択理由です。
バランスが良く、カートリッジの持ち味を素直に出す
それ以外の試聴環境は普段通り、Technics SL-1200G+Phasemation EA-200となります。
また、今回試聴したすべての組み合わせで、基本的には「Babylon Sisters / Steely Dan」(LP「Gaucho / Steely Dan」収録)を聴き、他に特にその組み合わせで試してみたいソースがあればそれも聴くという形で進めました。
まず、第一印象としてはウェルバランスであると感じました。元々R50BloomにはOrtofon 7N-LW1(当時の価格は税別4,000円)を組み合わせていましたが、その状態とは全く別物の音へと変化しました。
7N-LW1は音調はやや柔らかめで低域はやや薄口というタイプでしたが、KS-LW-4000LTDに交換すると最初から低域の力感が一気に増し、ベースの量感が増えたことが判ります。
音場は7N-LW1の方が前後がある程度出てくる傾向はあるものの、左右の広がりや空間の密度感は圧倒的にKS-LW-4000LTDの方が優位に立ちます。ドナルド・フェイゲンのヴォーカルも、7N-LW1やややソフトで声に力を感じません。KS-LW-4000LTDではしっかりと声を張って歌っているという印象を受けます。
高域についても、主にハイハットのタッチがややソフトで明瞭度が不足する7N-LW1に対して、量こそさほど変わらないものの、明瞭度やキレでKS-LW-4000LTDが明確に上回ってきます。
基本的にはZYX R50Bloom本来の、あまり突出した部分が無く、フラットで高解像度な音という印象がそのまま表現されたように思います。KS-LW-4000LTDで低域の量感が増したと書きましたが、むしろ7N-LW1の方がやや不足していたと考えるのが正解でしょう。
KS-LW-4000LTDはこれといって明確な弱点は感じられず、カートリッジ本来の持ち味を素直に表現してくれている音だと思います。ただ、逆に言えばこの製品ならではの明確なキャラクターがあまり感じられませんので、リード線でプラスアルファの要素を求めるような使い方には向かないでしょう。
それでも、一般的にヘッドシェルに添付されているようなリード線や、audio-technica AT6101などの比較的安い単品リード線のアップグレードに使えば、大幅な情報量の増加や質感の向上は感じられるだけの実力は間違いなくあります。取り敢えずリード線を付属品グレードからグレードアップしたいという場合に、最有力候補としてお薦めできる製品ではないかと思います。
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購入金額
5,500円
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購入日
2020年06月24日
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購入場所
KS-Remasta
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