レビューメディア「ジグソー」

やや現代的な音質に

以前からCDは勿論、レコードも1970年代にリリースされたLPは持っていたのですが、先日最新リマスターの180g重量盤がリリースされたと聞いて買い直してみることにしました。

 

サイモン&ガーファンクルの通算3作目となるアルバム、「パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム」です。この変わったアルバムタイトルは、本作収録の彼らの代表曲となる1曲「スカボロー・フェア」の歌詞の一節をそのまま付けたものとなっています。

 

まずは収録曲から。

 

 

Side 1

    1.Scarborough Fair/Canticle
    2.Patterns
    3.Cloudy1
    4.Homeward Bound
    5.The Big Bright Green Pleasure Machine
    6.The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)

Side 2

    1.The Dangling Conversation
    2.Flowers Never Bend with the Rainfall
    3.A Simple Desultory Philippic (Or How I Was Robert McNamara'd into Submission)
    4.For Emily, Whenever I May Find Her
    5.A Poem on the Underground Wall
    6.7 O'Clock News/Silent Night

 

 

個人的にはそこそこ耳に馴染んだ曲が多い作品ですが、やはり実質的なタイトル曲といえる「スカボロー・フェア」の存在感が群を抜いているでしょう。洋楽にさほど興味が無くてもこの曲なら知っているという人も多いはずです。我々の世代では中学時代に音楽の教科書で習っているほどですし。

 

サイモン&ガーファンクルはこのアルバムのリリース後、映画「卒業」のサウンドトラックの制作を担当しますが、本作収録曲からは「スカボロー・フェア」「プレジャー・マシーン」の2曲(但しいずれも別バージョン)が取り上げられています。これは、本来は映画に合わせて新曲を制作する予定であったものの、元々決して曲作りの速度が早い方ではないポール・サイモンが新曲を間に合わせることが出来なかったため、既発曲の中から映像のイメージに合うものを選んで別バージョンを制作したためといわれています。前作に当たる「サウンド・オブ・サイレンス」からも選ばれている辺りがそれを裏付けているといえますね。

 

前作「サウンド・オブ・サイレンス」は、シングル「サウンド・オブ・サイレンス」の予定外のヒット(彼らに無断でオリジナルの曲にロック調のバックトラックが重ねられてリリースされた)によって急遽制作されたため、ポール・サイモンのソロ曲のセルフカバーなどが多く含まれ、急ごしらえという印象が否めないものでした。しかし、本作はアルバムコンセプトからじっくりと煮詰めた上で制作され、彼ら本来の音楽性が存分に発揮された作品となっています。

 

今回のリマスター盤は、彼らの名義でリリースされたスタジオ・アルバム全5作が全て発売されていますが、リマスターで聴くならと真っ先に私が選んだのがこのアルバムでした。もっとも、実際にはレコードを持っていなかった「Bookends」も同時に購入していますが…。

更新: 2018/11/24
総評

元の音質による限界はあるが、上手くリマスターされている印象

それでは、ここで今回のリマスター盤について触れていきましょう。まずは現物を見てみます。

 

 

 

 

 

Columbiaの再発レコードは、大体mp3のダウンロード権が付属してきます。本作も、貼付されたラベルにその旨が書かれています。

 

 

 

 

 

ジャケットは裏面も含めて、1966年当時のものを極力忠実に再現しているように見えます。本作より前にリリースされている2作品だけ、ジャケットが紹介されているのも当時の状況に合わせたためでしょう。

 

 

 

 

 

Columbiaレコードの再発盤共通のラベル面です。レコード自体の質は結構良いと思うのですが、海外盤にありがちなゴミの付着が気になります。カッティングやプレスがいくら高品質でも、出荷時点での管理が甘いとぶち壊しになってしまうのですが…。

 

さて、音質については40年以上前にリリースされている国内盤LPと比較してみましたが、元々落ち込んでいた高域方向をやや持ち上げるなど工夫しているのでしょう。ノイズや音飛びなど、修正が難しい部分を除いては意外と現代的な印象を受けます。それでいて、以前取り上げた日本盤の「ニューヨーク52番街/ビリー・ジョエル」とは異なり、全体的な音質傾向はレコードらしさを残していて、さほど不自然さは感じられません。ソニー・レコード制作の日本盤にもこういう音を期待していたのですが…。

 

 

 

 

 

ギターの音色はどうしても限界は感じられるのですが、これは恐らくギター単独で収録されたトラックが残っていないということでしょう。ヴォーカルの質などは1枚ヴェールを剥いだかのような印象を受けます。印象を崩さない範囲内で上手く改善したなと思わされました。

 

かつてのレコードを揃えている人が新たに買いそろえる意味があるかと言われれば難しいところですが、この年代の音楽を聴くならレコードが良いと感じる方が、新たに買う対象としては充分納得いくものではないかと思います。

  • 購入金額

    2,980円

  • 購入日

    2018年11月09日

  • 購入場所

    HMV

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