主にレコードをデジタル音源に取り込む際に、PC用のオーディオインターフェースが活躍します。これまで私が主に使ってきたのはecho digital audio製のLAYLA 24/96やDigital Audio Labs製Card Deluxe CDX-01でした。最近はレコード取込にはほぼLAYLA 24/96ですね。Card Deluxeは再生の方が主用途でした。
これらの製品は対応フォーマットこそ24bit/96KHz上限と時代遅れではあるものの、それ以下のフォーマットで使う分にはまだまだ十分通用する音質の持ち主ではあります。しかし、最大の弱点といえるのは、接続インターフェースがPCIスロットであるという点です。
今のところ私のメイン級PCには必ず32bit PCIスロット(5V対応)があるものを選んできましたので問題は無かったのですが、近年の自作用マザーボードの多くはPCIスロットを備えていません。そうなるとUSB/FireWire/Thunderboltといった外付け用のインターフェースを持つものか、PCI Expressスロット対応のものに入れ替える必要が出てきます。
手持ちにも一応USBやFireWire対応のオーディオインターフェースが数台はあるのですが、音質面で上記2製品を超えるものがなく、メイン機に据えるほどのものは持っていないのです。
そこで考えたのが、以前HARD OFFで見かけていた、主に業務用として使われるオーディオインターフェース、MOTU 1296を導入することでした。MOTU 1296自体はPCIスロット用のホストアダプター、PCI-324と組み合わせることでPCに接続する機材なのですが、このPCI-324は新世代のPCI-424(PCI-Xスロット用)やPCIe-424(PCI Expressスロット用)に置き換えられるように設計されていて、HARD OFFで見かけたものはPCIe-424添付と注意書きされていたのです。世代を考えれば割高ではありますが、PCI Expressスロット対応の高性能オーディオインターフェースとしては比較的安いということで、この個体を入手してきました。以前見かけてから2ヶ月近く経過していたわけで、何ヶ月売れ残っているのか疑問ではありますが…。
購入する際に、ホストアダプターがPCIe-424で無ければ意味が無いので、それだけは現物を見せていただいて購入しています。
ソフトウェアとPCI-324以外の添付品はほぼ残っていたようです。
デザインは無骨で、美しさを感じさせる要素は何もありません。
音声信号の入出力は、デジタル・アナログのどちらもXLR 3Pin端子で行います。出来れば6.3mmのPHONE端子かRCAピンが有難いところですが、音質重視のスタジオ用途ですから妥当なところではあります。
一応アメリカ国内で製造されているようですね。製造番号のラベルの下には、国内代理店のmusetexのラベルも貼付されていて、国内正規品であることがわかります。
部品は意外とセコい
PCに接続する前に、いくつか準備をしておきたい部分がありました。
実はMOTU 1296は音質の良さを買われ、オーディオファンの間で高音質盤として有名な「Camomile Best Audio / 藤田恵美」の制作に使われたという実績のあるオーディオインターフェースです。しかしこの制作の際に、「かないまる」として著名なソニーの金井氏はMOTU 1296にいくつか細工を施したというのです。
まずは内部のネジの締め直しと内部配線の一部入れ替え、冷却ファンの停止。そしてラックにマウントせずオーディオ機器用のインシュレーターで設置。さらにAudioWireケーブル(規格自体はFireWire 6Pinと同じだが、MOTUのホストアダプターとオーディオインターフェースの間を結ぶ専用インターフェース)を手製の高音質IEEE1394ケーブルへの交換。これを施して音源制作に使ったというのです。
私が使う分にはラックマウントはどのみち出来ませんので問題は無いのですが、ネジの締め直しと冷却ファンの停止は行っておきたいところです。AudioWireケーブルについてはオーディオ用のIEEE1394ケーブルを別途手配していますので、到着次第交換となります。
取り敢えず一度蓋を開けてみることにしたのですが、ここに罠がありました。なんとこの1296、蓋を開けるまでにネジを計66本も外す必要があったのです。前後のパネルは中ネジ各2本、左右は大ネジ各3本で良いのですが、背面のXLR端子それぞれに2本用意されている小ねじも全て外す必要があり、これが何と56本もありました。それぞれネジの大きさが中途半端に違うため、それぞれに別のドライバーを宛がう必要があるというのも面倒なところです。
それでも何とか分解はしたわけですが…。
さすがに古い機材なので、埃が積もっています。これは掃除機と布拭きの併用で何とか掃除しましたが。
こちらはA/Dコンバーター、旭化成 AK5393VSです。24bit/96KHz対応で、この時期には比較的上位のオーディオインターフェースでよく見られました。
こちらはD/Aコンバーター、旭化成 AK4393VFです。これも24bit/96KHz対応ですね。A/Dコンバーター、D/Aコンバーター共に2ch対応品ですので、12ch分で各6個搭載されています。
ちょっと暗くなっていますが、コンデンサー下のCirrusLogic製CS8420はサンプリングレートコンバーターです。これも最大24bit/96KHz対応となります。
電源回りのコンデンサーですが、基本的には台湾メーカー製のものが搭載されているようです。10V 15,000μFのコンデンサーは台湾JAMICON製ですね。この辺りを日本製の音響用にすればもう少し良くなるんじゃないかという気がしなくもありません。
製造時期を考えればD/Aコンバーター、A/Dコンバーターはまずまず良質なのですが、コンデンサーなどはお世辞にも金がかかっているとは思えません。発売当時の米国での価格が$2,049(PCI-324+1296のパッケージ)ということを考えれば、もう少し金をかけてくれても良いような…。
さすがに828mkIIとは別物
差し当たって、echo LAYLA24/96の配線をそのまま使って音声を入出力してみました。よってケーブルの質などは最底辺レベルであることはお断りしておきます。LAYLA 24/96はPHONE端子なので、変換アダプターを挟んで接続しています。
まず再生音についてですが、さすがに低域の力感は十分にありますし、高域方向も緻密で解像度もそこそこ高いタイプです。ただ、以前828mkIIで気になっていた中高域の固有の音色はここでも感じられました。全体的な水準は高いので許容できる範囲ではありますが…。
次に録音を試してみました、いつも通りKENWOOD KP-9010+audio-technica AT33R+Phasemation EA-200の再生音を24bit/88.2KHzのWAVで録音するというものです。
全体的な印象としては解像度が高く、レンジも十分に広いという優秀さは感じるものの、再生音にも通じる固有の色が付いてしまう印象はどうしても感じられました。ただ、特に低域方向のバスドラムのキックや深いベースラインの解像感は明らかにLAYLA 24/96よりも向上していて、その辺りで格の違いを感じることが出来ます。
全体的な雰囲気という意味ではLAYLA 24/96もかなり健闘しているのですが、解像感などオーディオ的な要素はさすがにMOTU 1296がはっきりと優位に立っています。もう少し固有の色が付かない音であれば文句なしなのですが…。
基本的には20万円オーバーだっただけの実力は感じられるのですが、Camomile Best Audioの制作で絶賛されたほど良いのかと言われると、素直に頷けない部分はあります。
今回はPCI Expressで接続できるという点を優先して選んだ製品ですので、コストパフォーマンスで判断すれば文句ありません。これ以上が必要となると、やはりRMEのADI-2 Pro辺りでしょうかね…。
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購入金額
32,400円
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購入日
2018年07月01日
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購入場所
HARD OFF
harmankardonさん
2018/07/12
私は,次買うなら,DS-DAC-10Rで十分かなと思っています.
jive9821さん
2018/07/12
DSDで録音するのであればDS-DAC-10Rはお買い得なのですが、WAVの評判があまり良くないのが少々気になっています。私の場合は録音後に手を加える前提なので、DSDではちょっと都合がよろしくありませんし…。
録音用途ではRME Babyface Proが割合コストパフォーマンスに優れるのですが、私にはまだ高価なので、取り敢えずは中古(厳密にはジャンク扱い)のこちらになりました。