所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ピアノという楽器、その構造から、一人で主旋律と伴奏を兼ねられ、発音機構から強いアタックも出せるため、ビート感も出せる万能楽器の一つです。そんな楽器1台を使って華麗な表現をした作品をご紹介します。

まらしぃ。ニコニコ動画など動画再生サイトで火がついた新時代ピアニスト。「弾いてみた」動画でよるに出たためか、今でも積極的な顔出しはせず、ピンク色の猿の人形（さるしぃ）が看板代わりのピアニスト。

彼のプレイの特徴は流れるような運指と、左手の強いリズム感、多発されるグリス。もともと動画サイトのボカロ・アニメ・ゲーム系楽曲をピアノで表現したあたりが彼の起点なので？バンドサウントや打ち込み系で音数が多い事も多いそれらの曲を表現するため？とにかく音数が多く煌びやかでダイナミックな演奏が特徴。

そんな彼は同人作品

を除いても既に10枚ものアルバムを発表しているが、通算7枚目に当たるこの作品は、「オリジナル曲」アルバムとしては2枚目となる。“The PianØ（ザ・ピアノ）”と最後の「o」を「0（ゼロ）」とかけて、「原点」回帰を目指したという「ピアノソロ作品」。

全てが完全新曲ではなく、収められた曲の中には既発表のものもあるが、それらもピアノソロヴァージョンとして再録されている。

早速1曲目が、そう。kors kこと斎藤広祐とのコラボ曲。beatmania（BEMANI）系ゲームのサウンドクリエイターとして識られるkors kのことを、リスペクトしていたまらしぃがアレンジをkors kに依頼し、ハイスピードなダンスチューン仕上がった元曲は、彼等二人がユニット「maras k（まらすけ）」として出したアルバム“Beat Piano Music”の1曲目に収められているが、ビートが効いて、SEバリバリ、掛け声や鼓のサンプリング音が和風に盛り上げる元曲に対して、こちらはピアノソロ。ただ、彼の強い左手のタッチでのビート感と流れるような右手の装飾音で、サミシイ感じはしない。疾走感は負けていない！

描き下ろしの「舞舞」がイイカンジ。あんまり彼には多くないタイプの曲だけれど、ジャジィな薫りがたまらない。静かにスゥインギィに始まり、一度比較的長めのブレイクを挟んで、ダイナミックな演奏に移るが、いつになくテンションコードがバリバリ入ったこの曲は小粋で楽しい。彼のオリジナルでは最も好きかも知れん。

彼にとってのメジャーデビューアルバムとなった“V.I.P.”からは、「magnet」や「炉心融解」、「Just Be Friends」といった超名曲と並んで収められた彼のオリジナルボカロ曲「夢、時々…」の5年ぶりの新規録音。鍵盤を広く使ったプレイで、元曲のストリングスがなくなっても盛り上がり度は変わらないどころか、ダイナミクスが上がってより劇的な感じに。

初回盤限定付属のDVDは、彼のライヴの初映像化。2015年のツアー「“marasy piano world” Live Tour 2015」から、最終日である2015年3月13日の東京AiiA Theate公演の一部が収められている。ピアノとエレピのみのライヴで、舞台上はシンプル。いつもの猿の人形が置いてあるのがまらしぃらしいところ。

後ろのエレピの上に寝てるのが、さるしぃ

さるしぃがエレピ側に移動していることもあるので、エレピも使ったのだろうけれど、DVDに収められている6曲は全て生ピでの演奏。特に「わたしのマーガレット」は少女漫画誌「マーガレット」関連の展覧会の映像展示のBGMだったらしいけれど、プレイが歌心溢れていて素晴らしかったなー．．．

手元のアップが多くて魅せる。（このときさるしぃは生ピ側に来てる）

とにかく既成概念に囚われず、ピアノという楽器のポテンシャルをフルに使った作品。

初回限定版はDVD付き、というのがポイント。

まらしぃ＝ボカロカバー＆さる付き動画が専門？と思っている人にはぜひ聴いて欲しい作品です。

【収録曲】

<CD>

1. Piano Ninja
2. 楓神
3. watermelon refrain
4. Linaria
5. Hera
6. 猫ハ風ニ憧レル
7. 舞舞
8. 榛名
9. アンラッキーガールちゃんの日録

10. AndrØmeda

11. 夢、時々…
12. Fine

<DVD>

1. Sogna
2. Hera
3. 風ハ旅スル
4. プレリュード
5. 千本桜
6. わたしのマーガレット

“The PianØ”クロスフェード