audioquestのUSBケーブルには、さらにこの上位にUSB DIAMONDという製品が存在しているのですが、さすがにCARBON以下とは価格差が全く違います（0.75mで6～7万円と、CINNAMONの約10倍となってしまいます）ので、これの存在は考えないでおきます。

以下の音質評価は、私の常用環境であるFOSTEX HP-A8＋SENNHEISER HD650の組み合わせで行ったもので、機器や環境の違いで全く異なる可能性もあることをご了承ください。

HP-A8にはさほど大きな効果はないのですが、一応これまでのケーブルと条件を揃えるためにaudioquest JITTERBUGも併用します。

最下位のFORESTでも、汎用のUSBケーブルとは全く別物の音質となったのですが、これをCINNAMONに交換したことで低域の深さや力感、全域にわたっての解像度など、オーディオ的に判断したときに1グレード以上上と感じさせるだけの変化がありました。

それではCINNAMONのさらに1グレード上となるCARBONではどうなったのかと言いますと、実はオーディオ的な観点での変化は、FOREST→CINNAMONよりは小さいかも知れません。

CINNAMONと比べると低域の深さは増していますが、それほど量感が増えたり力感が増したりという印象はないのです。高域方向もより緻密ではあるのですが、CINNAMONと比べるとほんの少し大人しいという印象を受けます。角が取れた結果なのかも知れませんが…。

しかしながら、部分的な評価で決定的な違いを見出せるほどではないのですが、音楽の全体像は全く別物になります。とにかくヴォーカルやピアノ、アコースティックギターなど音楽の中心にあるものの質感や存在感が圧倒的に濃くなり、ちょっとしたリアルさまで醸し出してくれるのです。聴き始めは部分的な音に着目していたので「期待したほど変わらない」と一瞬思ってしまったのですが、その後で曲の全体的な聴こえ方が随分変わったことに直ぐに気付かされたのです。

先日Van den HULのラインケーブルで「恋人よ / 五輪真弓」の表現に大きな差が生まれたという話を書きましたが、CINNAMON→CARBONの交換もまさに同じような変化を生じました。

この音質であればCINNAMONに戻すことは考えられないくらいの満足感ですが、それでも本来ならば約10万円の機器であるHP-A8に使うべきケーブルとしてはやや高すぎると思います。私が自分自身の目安としている基準では、送り出しの機器の約1割の金額がケーブルに払える上限であり、CARBONは本来であればそれを超えてしまっているのです。

今回は販売店のポイントまでをセットで考えて辛うじてこの基準を満たしたと判断して買いましたが、当分このクラスのケーブルを買うことはないと思います。