ネット上で一部の好評と、多数の不評が交錯する、純国産を標榜するオーディオメーカー、MUSICA。比較的好意的な評価は、提灯記事と思われるものを除けば、オーディオショップ「逸品館」のレビューで、アンプ2機種に対してまずまずの評価をしている程度でしょうか。
それ以外の不評は、ユーザー対応に対する不満が募ったと思われるものもありますが、純粋に「価格なりの音質ではない」というものが見られます。そういった評価の文章では「安く買えるのなら選択肢としてはアリ」という結論付けをしているものが見られますので、それなら安く買って使ってみようということで、フォノイコライザー(2世代前)のpho60に手を出してみることにしたのです。
外箱は無地のダンボールで、ラベルのチェックで中身を知るという方式です。高級感は皆無ですが、中身のクオリティーに全振りしているのなら許されるでしょう。
オーディオ機器としては珍しいのですが、使うためには説明書が必ず必要です。というのも、ツマミの役割すらフロントパネルに書かれていませんからね。それなのに、再生カーブは
・RIAA(一般的にはコレ)
・ffrr
・Columbia
・American 78s(日米SPレコード用)
とデフォルトで4種類に対応している上、オプションとして他方式を最大2種類まで追加できるという仕様であり、どのポジションがどのカーブなのかはマニュアルの記載順で見るしかないのです。ちなみに最大2種類のオプションに対応しているためか、実装カーブは4種類であるにも関わらず、スイッチは6箇所分最初から備わっています。オプションを実装しなければ2箇所からは音が出ません。
フロントパネルです。フロントの質感は高いと評するものもありましたが、はっきり言って十分安っぽいです…。天板は真空管が入っている部分に穴が空いています。ここは素通しなのでうっかり触らないよう要注意ですね。
リアパネルです。こちらは配置図がシールで貼付されている分親切といえます。まあ高級感は皆無ですが。MC/MMは端子で分かれていて、その上スイッチで切り替えるという方式です。
AC端子はインレット式であり、後継機のpha62以降はこれがACアダプター式に切り替わります。何故なのかは使ってみて納得できましたが…。
これで12.8万はさすがにあり得ない
手っ取り早く音質を評価するために、普段Phasemation EA-200を使っている環境に、そのままこのpho60を当てはめてみました。ACケーブルも添付品ではなく、ACROTEC 6N-P4010/2mをそのまま流用しています。
プレイヤーは色々とアクセサリーで武装したKENWOOD KP-9010、カートリッジはaudio-technica AT33Rです。
さすがにAU-α707DR内蔵のフォノイコライザーよりは響きがきちんと出ますし、繊細さもそこそこは出ています。とはいえ、メーカーの製品紹介やブログではCR型とNF型の特徴をそれぞれ解説した上で「低音のダイナミックさを重視してNF型とした」という割に、CR型のEA-200と比較しても低音の力感も質感も出ていません。
そしてそれ以上の根本的な部分ですが、微細音を再生しているときに常にハム音が入り込んでくることが最大の問題です。録音状態にしてソフト上のレベルメーターで表示してみたところ、レコードを再生してピークレベルが-6~7dBとなるように入力レベルを設定して、常に-50dBを超える「ブー」というノイズが鳴り続けているのです。
これは私以外のユーザーも指摘しているのでこの製品の仕様上の問題なのは間違いないでしょう。恐らく電源から入り込んでしまっているため、後継モデルではACアダプター方式に変更したのではないでしょうか。ブログなどを読んでいると部品のクオリティーなどにかなり細かく言及している割に、設計はちょっとお粗末すぎるでしょう。
当然ではありますが、普段使っているEA-200と比べれば音質的にも劣っていますし、製品としての仕上がりは勝負にもなっていません。
取り敢えず音が出ればいい人向け?
今回の私の購入価格は約2万円ですが、2万円のフォノイコライザーとして考えれば音質だけなら悪くありません。販売価格が近いaudio-technica AT-PEQ20よりは、独特の味のようなものはあるでしょう。
しかし、工作キット並みの質感やハムの残留がかなり多いという設計など、このレベルでよくまともな値段を付けて売ろうと思ったなと呆れるような出来です。部品代+αでテスター向けに販売しているのなら理解できなくはありませんが、この製品は決してこのメーカーの1号機でもなければ格安組み立てキットでもなく、ごく普通にレギュラーモデルとして売られていたのです。
希望小売価格が128,000円(+税)という値段を付けるのであれば、それ相応の実力を持たせるのか、せめて外装のクオリティーを上げるのか、ある程度の努力をするべきでしょう。この製品はそのような部分をすっ飛ばして、「苦労して作ったんだからこの程度の金額は取りたい」という意識だけで価格設定をしているようにしか見えません。
もっとも、SPレコードを聴きたいなど、特殊なニーズのある方であれば話は別です。この程度の価格で再生カーブを複数パターン切り替えられる製品など他にまず無く、これが2~3万円程度で買えるのであれば魅力に感じる方もいらっしゃるでしょう。
ネット上で見た文章では、あまりに割高というユーザーの意見に対して、メーカー側が「他の生産量の多い高級メーカーと比べて、実力で負けるのは仕方ない」などと開き直っていたという話もありますが、総合的に超えることは難しいにしても「ここだけはどんな相手にも負けない」というだけのものが無いのであれば、下手にメーカーを名乗るべきではないでしょう。単に「日本製です」だけでは高い価格の意味がありません。
まあ、酷評となってしまいましたが「2万円ならば買いか?」というテーマに対しては、私があげた欠点を承知した上で、普通に聴いていてそれなりの音を出してくれるのなら構わないという方であれば、購入するという選択肢はあり得ます。ただ、仮にコレが4万円を超える程度であるとするならば、素直にもう少し予算を追加してEA-200を買うことをお薦めしておきます。pho60を聴いた後だと、Phasemationは素晴らしい仕事をしていることを実感させられました。
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購入金額
21,600円
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購入日
2018年01月15日
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購入場所
HARD OFF
タコシーさん
2018/01/16
一般の電子機器でなく、琴線に触れる製品になるには製造組み立て以上の技術などが必要でしょう
センス? オーディオは難しいですね 製品づくりのノウハウとか経験、哲学があるんでしょうね
信仰と言うか だから高くても気に入ったら購入するのでしょう。
jive9821さん
2018/01/16
外観は電子部品屋で売っていそう(ツマミ類は削り出しらしいですが)なレベル、音質は基本がなっていないとなると、さすがに商品としての無理がありすぎました。
いくら会社としての体力に劣るとはいえ、製品として出す前に自分で試聴もしないのかと疑問に思ってしまいます…。