Westoneの4BAイヤホンW40(初期型)です.Westoneが遂にmmcx採用で,リケーブルに対応したことで(6,7年前ですが)話題になったモデルです.
W40は途中で,パッケージとフェースプレートのデザインが変更されましたが,音質は昨年のW40 2019 Designまでは変わっていない様です.
“知らないと損するあなたの知らないWestoneの世界(Part 1)”は,プレミアムレビューさせていただいたUM Pro50でした.
W40とUM Pro50の音質的な傾向の違いは,W40がリスニング用,UM Pro50がモニター用と言われています.今回,改めて自腹レビューで,W40とUM Pro50の違いを聴いてみます.
W40の仕様(HP抜粋)は,このようになってます.()内は,UM Pro50の数値です.
形式: BA型3Way構成
BA数: 低域×2(1)基,中域×1(2)基,高域×1(2)基
コネクター: イヤホン側mmcx,アンプ側3.5mmステレオミニプラグ
コード: 脱着式Y型120cm
入力感度: 118(115)dB
再生周波数帯域: 10(20)Hz~18(20)kHz
インピーダンス: 31(45)Ω
質量: イヤホンのみ12.7g
付属品: 各種イヤーチップ,ハードケース,クリーニングツール
W40は,名前の通り,BA4基の3Way構成ですが,UM Pro50も名前の通り,BA5基の3Way構成です.3Wayなので,低域ー中域―高域のネットワークになりますが,その構成が異なります.W40は,2-1-1と低域用に2基増強したオーソドックスな仕様.一方,UM Pro50は,1-2-2と中高域を補強したレギュラーな仕様.一般的に低域の量感に欠けるBAは,低域用BAを増やして対応するため,4BAのW40は標準仕様で,再生周波数帯域にも現れています.また,W40はインピーダンスが2/3ほど低く,感度が3dB改善しているので,DAPにとっては鳴らしやすいイヤホンになっています.ただ,この鳴らしやすさが,音質評価を左右するポイントになっている気もします.
外観的には,マルチBAでありながら,Westoneの小さいハウジングにはいつも驚きますが,この小さいハウジングがユニバーサルモデルには重要であると思います.小さいハウジングは,フィッティングに関して圧倒的に有利です.JH AudioやCampfire Audioなどの比較的大きなハウジングは,音質の前にフィッティングで諦める場合も出てきます.イヤホンの場合,正確なフィッテングができないと,本当に音質がわかりませんから,フィッテングが非常に重要です.
Westoneのmmcxは,ハウジングの小ささゆえ,リケーブルの際,mmcx互換性の問題が出てきますが,一般的なmmcxコネクタであれば,問題ありません(UM Pro50で検証済).その分,小さなハウジングなので,フィッテングで問題が出ることは無いです.ただ,独特なフィッテング形状ゆえ,イヤーチップ選びで苦労する場合もありますが.
それでは,実際に聴き比べてみます.
DAPは,DX90jを使用して,ハイレゾflacを聴きます.ケーブルは,2.5mm4極の銀コートOFC(雷切改)で,3.5mm4極―2.5mm4極変換プラグを介して,バランス接続します.UM Pro50のケーブルも,2.5mm4極の銀コートOFCですが,MEDUSA+mmcx変換となります.おそらく,雷切改とMEDUSAは同じものと思います.
総じて,Westoneらしい極楽リスニングイヤホンの一級品という印象で,店頭で聴いた時と同じです.マルチBAの癖を極力抑え込んで,マルチBAのメリットを生かづチューニングがされています.上から下までバランス良く,優しく,気持ちよく聴くことができます.マルチBAの空間的広がりもある程度持っており,広くはないが狭くもない音場感です.低域は,DX90jの影響もあり,力強さはありませんがクリアに出ます.高域は,延びる感じは乏しいですが,自然に感じます.特徴となるような癖は一切なく,一般的にマルチBAに求められる音質の解(リファレンス)が,このW40という感じです.
WestoneのWシリーズは,W10/W20/W30/W40/W50/W60/W80とありますが,イヤホンとしてWシリーズの一つの完成形がW40だと思います.W60とW80は,よりマルチBAの可能性を追求し,音場と解像度を求めた別モデルと感じました.W60もW80もイヤホンを超えて,ヘッドホンやスピーカーの音を求めたモデルのような印象で,価格フィルターが入っている分もありますが,正直W40ほどの魅力を感じません.W60/W80になると,JH AudioやUMなども同一価格帯になるので,明確な特徴がないWestoneは,不利に感じます.実際,Wxxシリーズが発売された初期の最上位機種はW40でした.W40が一つの完成形だと思います.
UM Pro50と比較すると,モニター用のUM Pro50と,リスニング用のW40とやっぱり別れます.全体的な傾向(Westoneらしさ)は似てはいますが,やはり,W40は優しく,気持ちよく聴くことができます.UM Pro50は,一つ一つの音が明瞭で,中域(ボーカル)が前に出てきます.明確な特徴のないW40に対して,明瞭なUM Pro50は,第一印象に残りやすいので,店頭試聴ではUM Pro50のほうが選ばれやすいと思います.無機質でクールなUM Pro50の音が気に入っているなら問題ありませんが,W40のほうが音質的に劣るのではなく,長時間音楽を聴くという普通の使われ方に対しては,ニュートラルなW40のほうが明らかに適しています.
W40がマルチBAのリファレンスと書きましたが,欠点もあります.あくまでも自然な音質で,明確な特徴(癖)がありません.迫力ある低域とか,艶のあるボーカルとか,キラキラした高域など,ハマるとこれしか無いという強い押しがありせん.万人受けするオールジャンルに適した汎用イヤホンとしての役割は大きいですが,強烈な魅力にかけるのも事実です.みんなが勧める(押す)けど,No.1にはなれない存在というところでしょうか.
あと,Westoneのユニバーサルイヤホン全般に言えるのですが,外観が価格相応に見えません.WestoneのカスタムIEMは,いろいろ選べて,高級イヤホンに見えますが,ユニバーサルモデルは残念です.UM Proシリーズは,プロ用と割り切り,見た目ではなく中身重視と言われればそれなりに納得できますが,コンシューマー用のWシリーズは,見た目も大事だと思います.せっかく,フェースプレート(もどき)が,交換できるタイプになっているので,カーボンやメタルなど素材のものか,カスタムIEMで選べるフェースプレート図柄を用意してほしいと思います.
もう一つ注意しなければならないのが,付属の標準ケーブル.添付ケーブルでは,W40の良さははっきり言ってわかりません.バランスケーブルではなくてもいいので,是非とも銀コートOFCケーブルで聴いた上で判断してほしいと思います.5000円くらいの中華ケーブルでも真価はわかりますし,2000円くらいのケーブルでも,明らかにリケーブルの効果がわかります.W40は,それなりの価格ですので,是非とも添付ケーブルの見直しをしてほしいです.
という願いが多数寄せられたのか,W40 2019 Design(少し前にプレミアムレビューがあった)では,ケーブルが銀コートOFCに変更になっています.まだ,W40 2019 Designを聴くことはできていないので,どれくらい変わったのかはわかりませんが,良くなっているのは間違いないと思います.
ただ,Universal W40(旧モデル)とW40 2019 Designでは,価格差(現時点)があるので,その価格差でバランスケーブルを買ったほうが幸せになれるということもあります.もうすぐ旧モデルの在庫はなくなると思うので,悩むなら今です.さらに,旧モデルのW40の中古なら,今なら2万円以下で状態の良いものを買うことができます.マルチBAのリファレンスイヤホンとしての価値は十分にあり,2万円以下で買えるのは奇跡だと思います.派手な中華マルチBAにはないチューニングの妙が,このW40には詰まっています.
-
購入金額
42,000円
-
購入日
2020年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。