昨今スマートフォンの性能が上がり、スマートフォンで音楽を聴くのが当たり前になってきました。
これまであまりスマートフォンでの音楽視聴にそれほど興味はありませんでしたが、2017年3月にONKYO GRANBEATをレビューさせていただく機会があり、実際にGRANBEATを購入した後は有線・無線問わず、また値段も100円から1万円程度までの様々なイヤホンを購入して聴き比べていました。
そんな折、2016年12月に発売されたApple AirPodsが起爆剤となり、2017年はトゥルーワイヤレスイヤホン元年とも言えるくらい、様々なメーカーがトゥルーワイヤレスイヤホンを販売することとなります。例にも漏れず筆者もGear IconX 2018やBeoplay E8を入手し、通勤のお供として愛用していました。現在メインで使用しているGalaxy Note8とGear IconX 2018の組み合わせの相性が比類ないほど抜群であり、音質もある程度担保されている事と、GRANBEATとトゥルーワイヤレスイヤホンの相性の悪さからGRANBEATを手放し、Galaxy Note8 & Gear IconX 2018でしばらく活用していこうと考えていました。
そして今回のプレミアムレビューの募集。
昨年購入したイヤホンは全て1万円以下。
高級な有線イヤホンを使用しないまま、トゥルーワイヤレスイヤホンで満足していいのかという疑問が沸き、応募に至りました。
「スマートフォンとWestone Universal W40の組み合わせで、売れ筋の安価なイヤホンと比べどれほど音質に違いがあるのか」をテーマに、オーディオ初心者目線でのWestone Universal W40についてレビューしていきます。
比較対象となるのはe☆イヤホンで人気があったり、VGPなどで評価されている以下のイヤホンとなります。
オーディオ機器が表現したい音を素直に引き出すイヤホン
まずは簡単にスペックの紹介。
形式:密閉型
ドライバ:BA型シングルドライバ4基 (高1, 中1, 低2)
再生周波数帯域:10 ~ 18KHz
入力感度:118dB
インピーダンス:31Ω
パッシブノイズ減衰:25dB
入力端子:3.5mmステレオ
ケーブル/コード長:EPIC脱着可能ケーブル/1.2m(Y字型)
重量:12.7g
今回の視聴環境はスマートフォンでの視聴をテーマとしている事から、Galaxy Note8、Huawei P10 liteの他、レビュー応募時には対象としていなかったSony NW-A45です。
EPIC編み込みケーブルを接続して視聴しています。
パッケージ
まずは製品のパッケージから。
以前のWシリーズのフェイスプレートは「W」一文字でしたが、新しいモデルは「W40」のようにシリーズの番号がプリントされており、パッケージもそれに準じた印刷となっています。
パッケージ裏側。
各パーツの細かい説明が印刷されています。
内箱。
Wのロゴがエンボス加工で刻印されています。
箱はかなりしっかりしており、写真の裏側の部分はマグネットで固定されています。
内箱を開けたイメージ。
イヤホンとフェイスプレート、簡易マニュアル。
簡易マニュアルの下に、防滴・耐衝撃吸収タイプのモニターヴォルドケースが格納されています。
モニターヴォルドケースはこちら。
内部は発泡素材なので、持ち運び時に格納すれば安心。
イヤーチップとEPIC編み込みmmcxケーブルはこのヴォルドケースに入っています。
イヤーチップは写真左側が「STARチップ」、右側が「True-Fitフォームチップ」。
サイズが豊富なので、たくさんの人の耳にマッチするでしょう。
デザイン
イヤホン本体の外観は高級感は無いものの、4基のドライバを組み込んだと思えないほどコンパクト。
フェイスプレートは標準で黒・赤・青が用意されていますが、社外品のプレートもあるので、気分やファッションに合わせて柔軟に変更できるのが○。
Appleデバイス向けに使用可能な3ボタンコントローラー付mmcxケーブルが標準で取り付けられています。
このボタン操作ですが、再生・停止だけはAndroidスマートフォンでも問題無く操作できました。
■フェイスプレートの交換手順と注意点
フェイスプレートはハウジングの後ろ部分のネジを付属のドライバーで取り外し付け替えるだけの簡単な手順です。
ネジを外すと簡単にフェイスプレートがハウジングから外せます。
あとは付属のフェイスプレートを交換してネジで締めるだけで完了。
今回ハウジングの左右で色を変えてみました。
耳掛け型は左右で迷うことはありませんが、ぱっと見で判断できます。
気分によって赤だったり青だったり黒だったりで使い分けたいです。
フェイスプレートを交換する際の注意点ですが、ネジが小さくて紛失の可能性が高い他、強く締めすぎるとプレートが割れる可能性が高いです。
プレートはとても薄いので、軽めの締め付けにしましょう。
装着感
Westone独自のイヤーチップ「STARチップ」と「True-Fitフォームチップ」の2種類が用意されており、サイズも多岐にわたるため、多くの人の耳にフィットするでしょう。
筆者は標準で取り付けられている「STARチップ」がピッタリでした。
Shureに代表される耳掛け型なのでしっかり安定し、歩行中の振動も気にならないレベル。
コントローラー付ケーブルとは別に用意されているEPIC編み込みケーブルへリケーブルすれば、柔軟なケーブルとタッチノイズの少なさから、より心地良い装着感を得られます。
遮音性・音漏れ
豊富なイヤーチップがあるので耳に合う物を選べばそれなりの遮音性が得られます。
電車内で使用した際も微かにアナウンスが聞こえる程度。
音漏れについても開放型では無いので、常識的な音量であれば漏れにくいです。
ノイズキャンセリング機能が無くても、リスニングに集中できます。
音質
■Galaxy Note8
HARMAN International Industriesを買収したSamsungのスマートフォンであり、性能や機能性が圧倒的。
ハイレゾももちろん対応しており、得意分野はJ-POP、K-POP、R&BやEDM。Amazon Prime Musicとの相性が抜群。
Galaxy Note8ではシェネル「Destiny」、ジャスティン・ビーバー「What Do You Mean?」を視聴。
シェネル「Destiny」はハイレゾ音源です。彼女のパワフルな声、サビの盛り上がりが忠実に再現されており、演奏の低音ビートが上手く纏められていました。
以前ZERO AudioのZB-03で視聴していた時はこのビートが煩いくらいでしたが、全体的にWestone Wシリーズらしくウォーム系で耳あたりの良いサウンドでした。
ジャスティン・ビーバー「What Do You Mean?」はAmazon Prime MusicのAAC音源。リズムビートが心地良く、弾むようなサウンドが適切に表現されています。
こちらの音楽は廉価なイヤホンに比べ、明らかに音の粒が細かいのが感じられます。
Amazon Prime Musicとの相性が抜群と書きましたが、更に相性が良くなるでしょう。
■Huawei P10 lite
大人気の格安スマホ。
ハイレゾ非対応の上、BluetoothをオンにするとWi-Fiが著しく遅くなるなど、音楽や動画の視聴には適していません。
とはいえ、有線イヤホン直挿しであれば、それなりに音楽は楽しめる端末。
こちらもシェネル「Destiny」、ジャスティン・ビーバー「What Do You Mean?」を視聴。
それぞれの曲の特徴はGalaxy Note8の項で伸べた通りなので割愛。
Huawei P10 liteでも素敵な音楽が楽しめるのか?という命題の元、こちらの端末でWestone Universal W40を試した結論としては、音が良くはなりませんでした。
むしろ、端末の音質の低さが際立ちます。
つまり、Westone Universal W40は質の良い端末であればその能力を十分に引き出しますが、そもそも質の悪い端末ではそれ以上の能力は当然引き出せません。
良く考えれば当たり前ですが、5,000円前後のイヤホンではあまり感じられなかった差異が感じられるという事は、Westone Universal W40の音源の再現能力が高いという証左になると思われます。
■Sony NW-A45
「ミュンヒンガー指揮 シュトゥットガルト室内管弦楽団 Vn.クロツィンガー 1958年録音」の中の「ヴァイオリン協奏曲 ヘ短調 「冬」」を視聴。アナログ音源の録音データです。
ヴァイオリンの響きが素晴らしく、鳥肌物。
コンサートの臨場感も十分に表現されており、自然に目を閉じて視聴してしまうほど。
ヘッドホンに負けないくらいの解像度の高さによるリアルな音場再現性で、感動すら覚えます。
クラシック音楽に関してはずぶの素人ですが、オーケストラの音源を次々と探すようになりました。
全体的にフラットではあるのですが、BAが低音に2基あるものの低音が強いというわけでは無く、低音から高音まで満遍なく音が広がっています。
これまでのイヤホンではあまり聞こえなかった細かい音も良く拾っており、ローエンドイヤホンとの差をまざまざと見せつけられました。
3つの端末で聴き比べして感じたのは、バランスの良さと素直さ。
中華系イヤホンにみられるような低音重視でもなく、音の軽いイヤホンにみられるサ行の刺さりもないので、強烈な個性はありません。しかし個性がないのが個性であり、言い換えれば、自然な音を楽しめる事の素晴らしさに気づかせてくれました。
Westone Universal W40はWシリーズの中ではミドルレンジにあたりますので、さらに上のイヤホンではもっと自然さを味わえるのでしょうね。
出力傾向を調査
直近で十数本ほど1万円以下の有線イヤホンを購入しましたが、その中でも一般的に評価の高い以下の三本とWestone Universal W40の再生周波数を比較しました。
それぞれのイヤホンの出力傾向が読み取れるかと思います。
テストに用いた音源は20hz~40Khzまで時間経過で出力するWAVファイル。
Sony NW-A45でこのWAVファイルを再生し、PCにつないだマイクで音を拾った結果です。
ソフトは「高速リアルタイム スペクトラムアナライザー WaveSpectra」を使用しています。
なお、このWAVファイルをダイレクトに読み込んだ場合のイメージはこちら。
四本それぞれの結果をまとめました。
マイクの性能が低いので、100Hz以下の低音の信用性が低いのと、22Khz以上の高音域は拾えていません。
画像を拡大するとより大きいイメージが表示されます。
≪音の傾向≫
■Westone Universal W40
3.5KHz前後および8Khz~10Khzあたりがピーク。
10Khzを超えると急激に落ち込むが、15Khzあたりでやや盛り返している。
AudioCheckで実際に視聴して確認しました。
聞こえた再生周波数帯域は10hz-18Khz。
公称スペックと同等でした。
http://www.audiocheck.net/soundtests_headphones.php
■final E3000
3khzおよび6Khzがピークだが、全体的になだらかな山で周波数ごとの音の強弱が変わらない。
10Khz超えた後も比較的安定した出力が確認できる。
■ALPLEX HSE-A1000B
3.5Hzと6Khzがピーク。ピーク時の音量はfinal E3000より大きいため、メリハリがある。
山が高いので煩く聞こえるかもしれない。
■ZERO Audio ZERO BASS ZB-03
ピークは5Khzだが、それ以外は割とフラット。
ハイレゾ対応イヤホンだが、final E3000ほど高周波数が安定していない。
再生周波数だけでは音場や解像度とは直結しないため音の良し悪しとはあまり関係ありませんが、イヤホンがどこに注力しているかの傾向の目安にはなるかと思います。
mmcxケーブルについて
■3ボタンコントローラー付mmcxケーブル
商品説明ではAppleデバイス向けと記載されていますが、Galaxy Note8でも再生、停止は可能でした。通話もリモコンの裏側にマイクがあるので可能。通話音質も問題ありません。
iPad Air 2でも動作確認しましたが、再生・停止に加え音量調整も通常通り行えました。
Siriもしっかり反応。
製品開封時に装着されていますが、ケーブルの取り外しが非常に困難です。
ネット上でも同様の意見が散見されます。
とにかく固いので、ペンチで挟んで気合を入れて無理矢理引き抜きました。
ケーブル側のコネクタはペンチの傷でボロボロになっています。
今回はなんとか取れましたが、イヤホン本体側への負荷を考えると二度と使いたくありません。
■EPIC編み込みmmcxケーブル
こちらのmmcxコネクタは普通に着脱できます。
3ボタンコントローラー付mmcxケーブルに比べ輪郭がはっきりしており明瞭です。
ケーブルが柔らかく、編み込みのため絡みにくいので、持ち歩くのにも最適。
これまでもリモコン無しのイヤホンばかり使ってきたので、このEPIC編み込みケーブルで十分満足できています。
■Bluetoothケーブル
OKCSC Bluetoothイヤホン(DD4)のmmcxケーブルでテスト。
コーデックはSBCなので音の情報量がどうしても少なくなるため、有線で繋いだ時よりも心許ない音質です。
OKCSC Bluetoothイヤホン(DD4)そのもので聴いている時とも差異が感じられないので、出力側の質が伴っていないとWestone Universal W40にとっては役不足です。
mmcx BluetoothケーブルはWestone製のものがありますが、Androidスマートフォンは8.0以降OSレベルでaptX HD/LDACに対応するので、それらに対応したSONY MUC-M2BT1をお勧めします。
癒しの先にある沼
レビュー記事冒頭にある通り、トゥルーワイヤレスイヤホンに落ち着いた矢先にこのWestone Universal W40との出会い。
ウォーム系の音質は耳に心地よく、聴き疲れがありません。
音を心から楽しめるのは癒しの効果もあります。
多少の音質に目を瞑ってでも利便性へシフトしていたわけですが、有線の、しかも高音質のイヤホンに出会ってしまうと、リケーブルしたらどうなのか?とか、DAPなら更に良い音が聴けるんじゃないか?等、一旦抜け出したはずのオーディオの沼にまた引きずられそうです。
その第一弾が、SONY NW-A45の購入になります。
家電店にWestone Universal W40を持ち込み、いくつかのDAPを聴き比べる際、DAPの表現を素直に伝えてくれるWestone Universal W40はDAPの選定に大活躍。
今後も機器の選定の際にはお供させます。
また、今回のレビューにあたって、様々なクラシックミュージックを視聴しました。
クラシックミュージックは学生だった時以来、しかも学生時代は授業で仕方なく聞いていた程度の興味だったのですが、今プチはまり中。
これもWestone Universal W40に出会わなければ起こらなかったムーヴメントです。
それくらい、Westone Universal W40はオーディオ素人の筆者にも多大な影響を与えるほどのイヤホンでした。
ライフスタイルを変えたイヤホン
一週間通勤で使用しました。
環境は主にNW-A45。
ケーブルは編み込みケーブルを使用。
会社を出てから装着しています。
駅へ向かうまでの間、徒歩によるタッチノイズおよび振動によるハウジングの影響は皆無。
電車内でも遮音性がなかなか高いので、音楽への没入感は十分。
じっくり聴きたいクラシック音楽も楽しめています。
レビュー冒頭に記載の通り、このイヤホンを使用する前はトゥルーワイヤレスイヤホンを愛用していましたが、電車入線時や混雑時の切断があるため音楽に集中できず単なるBGMとして聴いていましたが、有線であるWestone Universal W40は当然切断は無く音質も素晴らしいので、能動的に音楽を聴くというスタイルに変わりました。
また、これまで使用していたイヤホンではあまり意識しなかった楽曲の「静寂」の表現に驚いています。
例えばLittle Glee Monsterの「Jupiter」では、曲の冒頭のアカペラで、歌→静寂→ブレスの流れの歌とブレスが鮮明であるため、間の静寂が際立つのでゾクゾクします。
楽曲のメリハリや表現力の高さに脱帽です。
機種ごとの音質のレビューでも記載しましたが、使用する端末によって表現のレベルが大きく異なります。
レビューで使用したGalaxy Note8よりもエントリーモデルのNW-A45の方がDAPとしてのポテンシャルが高く満足していますが、もっと高級なDAPであれば更にWestone Universal W40の能力を生かせるのかもしれません。
Westone Universal W40の罪な点を一つ。
これまで使用してきた一万円以下のイヤホンを聴き直してみると、とても聴くに堪えられません。
一度美味しい牛肉を食べると、安い肉に不満を感じるような感覚と同じです。
一週間使い続けただけで、すっかり耳が肥えました。
ボーダーが上がってしまったため、更に美味しい味付けを探すとなると、免疫の低いオーディオ初心者にとっては深くて危険なオーディオの沼にはまる事間違いないです。
今回のレビューのテーマは「スマートフォンでの使い勝手はどうか?」が主題でしたが、結論は「スマートフォンレベルではWestone Universal W40は役不足」です。
それなりの再生環境が無いと、Westone Universal W40のポテンシャルを活かせられません。
スマートフォンで聴く程度のレベルなら、特性を生かすためにaptXやaptX HD対応のBluetoothイヤホンかトゥルーワイヤレスイヤホンで十分。
DAP等の環境があるならWestone Universal W40なら間違いなく期待に応えてくれるでしょう。
Westone Universal W40は今後もメインイヤホンとして愛用していきたいと思います。
みっちゃんさん
2018/01/28
癒しの先にある沼は、深そうですね~
リケーブル沼が最初に待ってますね(^^;)
sandbagさん
2018/01/29
はい、リケーブルの沼は目の前に既に見えています(笑)
会社の近くにe☆イヤホンがあるので、いろいろ試してみたいと思っています。
ほどほどにはしたいですね(^^;
aPieceOfSomethingさん
2018/01/29
まだ最終レビューまで日にちが残っていると思うのですが、すでにこの分量のレビュー..。
とても気合が入っていて楽しく読ませていただきました。
次回更新も楽しみにしています。
sandbagさん
2018/01/29
コメントありがとうございます。
良いものは良いとできるだけ伝えたいと思っています。
ある程度書きたいことは書いたので、締め切りまでのんびり追記していきます(^^)