レビューメディア「ジグソー」

カッティングの上手い二人が構築されたアレンジで挑む「弾いてみた」

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。動画投稿サイトの隆盛でメジャーデビューしていなくていままででは埋もれていたようなシンガー/プレイヤー/アーティストが注目されるようになっています。各動画サイトの「弾いてみた」カテゴリーではテクニックや歌心を持つ数々のプレイヤーが動画投稿して人気を博しています。そんな中、ギタリストカテゴリーのなかで高い人気を誇る二人が組んで、ガッツリ弾き倒した作品をご紹介します。

中西マウリー。ともに2009年「けいおん!」系楽曲の弾いてみた動画で投稿開始し、ソロのみならずカッティングに華があることで識られる。

ボカロ界隈では「ピストンP」としても活動する中西は、緑のジャージがトレードマークで、その抜群のアレンジセンスと手首の返しが素晴らしいカッティングが身上。

マウリーはカッティングのキレが良いJazzmaster使い。ところどころに挟まれるピッキングハーモニクスなどの技のセンスが極上!演奏はほとんどセーラー服(いわゆる長門コス)で行う「姫」である。

この二人は2010年からコラボしはじめたが、ギタリスト2人のコラボ動画というと、ともすればソロ合戦となってしまうものが多い中、二人ともが得意とするカッティング主体のコラボが多い(マウリーの演奏衣装から二人を「カッティング夫婦」とも呼ぶ)。中西の抜群のアレンジセンスとマウリーのそれを難なく弾きこなすテクニックもあって、二人同時にカッティングしたり、ミュートカッティングを音符によって二人にわけたり、全く違うフレーズで片方がオブリに回ったかと思えば、流れるように超速ユニゾンに入ったりしてとても楽しい。すべてのコラボ動画で左chに中西、右側にマウリーが配されているので、二人の弾き分けや絡みが良く聞き取れるよう、動画には「ヘッドホン推奨(イヤホン推奨)」のタグがつけられている。そうして聴くと分散和音を二人で分け合って弾くような部分では左右に音が飛びまくりとても華やか。

そんな彼らのコラボの軌跡を収めた作品。とは言っても、何曲かは公開動画と明らかにプレイ内容やソロのラインが異なるので録り直しも多い。中「西」とマ「ウリ」ーで「西ウリ」⇒スイカ。割られたスイカの中には彼らの代表的機材であるStratocasterとJazzmasterのシルエットが描かれている(当然マウリーを表すJazzmasterが右)。

CDはまず2010年の二人の初コラボ曲「裏表ラバーズ」から幕を開けるが、続く「聖槍爆裂ボーイ」が何と言っても素晴らしい。コラボ投稿動画としては最新(2015年)となるこの曲は、れるりりの爆速チューンをものともせず二人で弾き倒す作品。鬼のような速さのカッティングと、二人に音符が振り分けられたリフがとてつもなくトリッキー。いわゆる「ソロ」はアウトロのところの3~4小節ずつしかないんだけれど、全然物足りなくないというか、むしろもっとカッティング聴かせろ、みたいな。なおこの曲は聴いた限り投稿動画と同一。

「とあ」の「ミュージックミュージック」は原曲にギターは入っていないが、ピコピコと入っている電子音をクリーンな音のカッティングで表現。これは元曲もこうあって欲しいというほどハマっている。特にマウリーのワウのかかったカッティングはツボハマリで、切ない感じのこの曲にすごく合ってる。アウトロの中西のオブリもイイナ~

「セツナトリップ」はいわばセルフカバー。Last Note.の原曲↓そのものが実はギター担当が中西とマウリー。

【GUMI】セツナトリップ【オリジナル】

それが本作ではCDとDVDに再録されている。そういえばこの曲も元々左右に散らされた「2本のギターで1パターン」のような複雑なバッキングだと思っていたが、DVDのプレイ動画を観ると特にAメロの超絶さが際立つ。オケがオリジナルとなるあやちゃんヴァージョン

で結構聴き込んだ曲なので、ソロの違いは若干の違和感があるも、二人のプレイの振り分けがきちんとアレンジされたものであることがわかる。
二人が「オリジナル」といえる「セツナトリップ」は画があるとさらにしゅごい..
二人が「オリジナル」といえる「セツナトリップ」は画があるとさらにしゅごい..
「弾いてみた」動画は「観る楽しみ」もあるので、見た目を重視するあまり音源だけ抜き出して聴くとうるさくて聴けない場合もあるけれど、これは弾きまくっているにもかかわらず音(CD)だけで十分鑑賞に堪える...つかアガる。

他にも踊ってみた動画で圧倒的支持を受ける「恋愛裁判」は、このアレンジではミュートリズムギターがきっもちいいしい、初期のコラボ曲「ワールズエンド・ダンスホール」はさらにシンクロ率上がっていて聴き所満載!

ただこのカッティング夫婦、最近投稿が絶えて久しい。もともと二人のコラボは多作ではなく平均年イチ強程度で間が空くときは1年以上空いたりする。最終投稿日(2015年8月)からは2年しか空いてないので、まだ「コラボ投稿をやめた」とまでは断言できないけれど、マウリーの方は最近ニコニコへの単体投稿も絶えており、twitterも投稿回数が非常に少なく、内容も音楽系のものがほとんどないのでちょっと心配(中西の方は順調で、所属するバンド、ハニワことHoneyWorksの武道館公演も決まった)。

自分的には学生時代に組んでいたバンドのギタリスト(先日Facebookで再会したらギター講師でメシ喰ってるラシイ)の影響もあって「カッティングの上手いギタリストの方が上手い」と思っているので、カッティングが上手い二人のコラボCDはご馳走。
DVD付きで約2000円なら安いよなァ...
DVD付きで約2000円なら安いよなァ...
またふたりでコラボってくれないかなー....そう思えるカッティングおなか一杯の作品です。

【収録曲】
<CD>
1. 裏表ラバーズ
2. 聖槍爆裂ボーイ
3. 恋愛裁判
4. アンハッピーリフレイン
5. ワールズエンド・ダンスホール
6. ミュージックミュージック
7. 脳漿炸裂ガール
8. セツナトリップ
9. 種明かし~TANEAKASHI~
10. 夏風ビーンズ
<DVD>
1. セツナトリップ

「聖槍爆裂ボーイ」


「西瓜の名産地【中西・マウリー】」


通販サイトBroBra
  • 購入金額

    1,980円

  • 購入日

    2017年08月28日

  • 購入場所

    BroBra

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • cybercatさん

    2017/09/12

    これはギター好きにはたまらんですね。
    「セツナトリップ」もオリジナルギタリスト×2とはいうもののギター大きめの録りでオイシイでっせ。

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