Earth Wind & Fire(EW&F)。1970年代のディスコ、ソウル、ファンクのムーブメントを語るに絶対に外せないバンド。故Maurice Whiteを中心に組まれ、最盛期は本体12名、ラッパ隊のPhenix Horns(近年はEarth, Wind & Fire Horns)を合わせると15名を超える大所帯バンドで、数々のヒットを飛ばした。そして未だにアルバムを出すとチャートジャンルによっては一桁まで登ってくる存在感があるバンドでもある。
そんな彼らが最も輝いていたのが、米Columbiaレコード時代。3rdから15thアルバムまで長きにわたって在籍したが、このうち10枚がゴールドディスク以上を達成しており、2014年のホリディアルバム“Holiday”まで入れても21枚しかスタジオアルバムをリリースしていない彼等の作品の7割以上がこの初期の20年で出されている(Warnerでリリースされた1stと2nd含む/ちなみに2017年現在彼等の芸歴?は46年におよぶ)。
そして彼等の代表曲もまたこのあたりに集中している。
このベストアルバム-“The Eternal Dance”-は、彼等がColumbiaからWarner系のRepriseに移籍する際に、それまでの集大成としてデビュー時に在籍していたWarnerからのリリース盤も含めたかたちで編纂されたベスト。また全盛期時代のライヴを中心に何曲かの未発表音源も入っているので、EW&Fなら完全網羅だぜ的強者も購入する価値がある一品。一般的にベストアルバムというものはヒット曲を出だしに持ってきたり、バラードとアップテンポの曲の配分が良くなるように、曲の製作時期にこだわらず編まれたりすることもあるが、この作品はすべての曲が忠実に年代順に並んでいる。そのため頭から通しで聴くと彼等の20年間の音楽性の変遷もわかる作品となっている。ヒット曲の多い彼等だが、聴き込むと必ずしもヒットした曲でなくとも良質な曲があるのがわかる。ということで今回あえてヒットチャートのトップにはならなかった曲をご紹介。
まず1枚目はデビューの1971年から6thアルバム“That's the Way of the World”で全米1位に輝く1975年までの、頂点極める上り調子の年代の作品が収められている。初期のドロくさくアカ抜けない、でも熱く濃いファンキィでソウルフルな曲調から、ラストの「That's The Way Of The World」はまさにAORという感じのスマートさ。この曲は以前フュージョンコーラスグループNew York Voices
がカバーした曲としてご紹介したこともある。さすがにNew York Voicesの洗練されたお洒落さはないが、EW&Fのオリジナルも美しいコーラスで彩られ、泥臭さはみじんもない。ただこの曲は初の全米No.1アルバムのタイトルチューンながらシングルとしては最高5位で、同アルバムからはもっとファンキィな「Shining Star」の方が1位を獲得している。
続く2枚目は1975~1977年のわずかあしかけ3年の、でも一番「濃い」あたり。大ヒットライヴアルバム“Gratitude(灼熱の狂宴)”から、故長岡秀星がジャケットデザインを勤め、邦題がなんか宗教じみてきた“太陽神”=“All 'n All”という彼等が一番「熱かった」あたり。この時期には「Sing A Song」に「Getaway」、「Serpentine Fire」とNo.1ヒット目白押しだし、あの「宇宙のファンタジー」こと「Fantasy」も含まれるのだが、あえて「Can't Hide Love」。ゆったりとしたグルーブながら16ビードで、ンパッンパッンパッと駆け上がるブラスラインと、ここぞという絶妙な音選びで攻めてくるVerdine Whiteのベースラインが印象的な通好みなこの曲は、実はEW&Fのオリジナルではないのだが、後のカバーもこのEW&Fのものをベースにしているくらい彼等のこのアレンジが有名。
3枚目は10年以上の期間と7枚のオリジナルアルバムをカバーする。Columbia時代のラストアルバム“Heritage”以外はアルバムチャート的には決して「悪い」というわけではないし、名曲「September」に「Let's Groove」、「System Of Survival」とNo.1ヒットはあるし、他にも複数の全米順位一桁代のヒットソングもあるのだが、“All 'n All”以降は徐々にクロさ、熱さが影を潜め、コンテンポラリー系、フュージョン系のニュアンスが強くなってきて以前のEW&Fとは別物のバンドのようになってくる。ここでご紹介するのはヴォーカルが入らなければまさにCASIOPEAか、と言う感じのクイクイでキメキメのタイトなリズムの縦ノリの曲が「In the Stone」。従来の曲と比較するとかなり「異端な」曲だけれど、立派なシングルカット曲。
この3枚で、ほぼEW&Fの全てがわかる。今もバンドとしては「生きて」いるのだけれど、このベストアルバムからあとに2枚のオリジナルアルバムを出したところで、EW&Fの創始者でバンドリーダーだったMauriceが現場を離れ、製作に専念するようになり、EW&FはPhilip Bailey
のバンドになっていく。
そしてついに昨年永くパーキンソン病を煩っていたMauriceが鬼籍に入って、かつてのMaurice色のEW&Fは望んでも再び還らないことに。EW&Fは半世紀近い活動歴を持つ古参バンドのわりには関わった主要メンツがまだ存命だが、それでも音楽活動を停止している人も少なくないので、今後PhilipのEW&Fが再びチャートの頂点を極めることがあっても、黄金期のMauriceカラーのEW&Fが復活することもあるまいと。そういう意味では「MauriceのEW&F」を語るにはコレ持っていればほぼ完璧、な作品です。
【収録曲】
<DISC1:Volume I (1971 - 1975)>
1. Fan The Fire
2. Love Is Life
3. I Think About Lovin' You
4. Interlude
5. Time Is On Your Side
6. Where Have All The Flowers Gone
7. Power
8. Keep Your Head To The Sky
9. Evil
10. Mighty Mighty
11. Feelin' Blue
12. Hey Girl (Interlude)
13. Open Our Eyes
14. Shining Star (Alternate Version)
15. Happy Feelin'
16. Reasons
17. Shining Star
18. That's The Way Of The World
<DISC2:Volume II (1975 - 1977)>
1. Kalimba Story / Sing A Message To You (Live In Long Island, 1975)
2. Head To The Sky / Devotion (Live In Atlanta, 1975)
3. Sun Goddess (Live In Baltimore, 1975)
4. Mighty Mighty (Live In Atlanta, 1975)
5. Interlude #2
6. Can't Hide Love
7. Sing A Song
8. Sunshine
9. Getaway
10. Saturday Nite
11. Spirit
12. Ponta De Areia - "Brazilian Rhyme" (Interlude)
13. Fantasy
14. Serpentine Fire
15. I'll Write A Song For You
16. Be Ever Wonderful
17. Beijo (Interlude)
18. Got To Get You Into My Life
<DISC3:Volume III (1978 - 1989)>
1. September
2. Boogie Wonderland
3. After The Love Is Gone
4. In The Stone
5. Dirty (Interlude)
6. Let Me Talk
7. And Love Goes On
8. Pride
9. Demo
10. Let's Groove
11. Wanna Be With You
12. Little Girl (Interlude)
13. Night Dreamin'
14. Fall In Love With Me
15. Magnetic
16. System Of Survival
17. Thinking Of You
18. Gotta Find Out
19. That's The Way Of The World (Live On HBO, 1982)
「That's The Way Of The World」
「Can't Hide Love」
「In the Stone」
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購入金額
7,500円
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購入日
1992年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2017/08/24
モーリス・ホワイトのいるころのツインボーカルがやはり好き・・・
あとはJBとかTowerOfPowerとか。
ジョージ・クリントン系列はあまり聞いてないですがやはり好きです。
cybercatさん
2017/08/24
EW&Fはやっぱり「Mauriceの」バンドだと思いますね。だから外部の血を入れた“Millennium”以降、さらに言うとMaurice完全撤収後の“The Promise”以降はEW&Fの名での活動はムリがあるかも...
.....それにPhilipの星回り的に「water」が欠けているのかわかんないしw
jive9821さん
2017/08/24
個人的にはVerdineのベースを聴いていると、いかにもEW&Fだな、と少し安心します。映像で見ると出ている音と体の動きのリズムが全然違っていて驚きますけど。
ちなみに「In the Stone」は、Bill Champlinがカバーしたバージョンが結構お気に入りです。
cybercatさん
2017/08/24
何人かの方が、このシリーズのレビューで、そういうハメ?に陥っていますがw、読んで下さる方と音楽の出逢いを取り持てたならレビュアーとしてこんなに幸せなことはありません。
>個人的にはVerdineのベースを聴いていると、いかにもEW&Fだな、と少し安心します。
表に出るのはMauriceやPhilipの声だったり(かつては)Alのキレッキレのカッティングだったりするのだけれど、実はオリジナルメンバーでもあるVerdineのベースが基礎にあるので「らしさ」があるのかな、と。