レビューメディア「ジグソー」

大ヒット作の前作に隠れた感があるが、アルバム全体の完成度はこちらの方がむしろ高い。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ダウンロードの切り売り販売が大きな比率を締め寝ようになった現在では、流行らない手法かもしれませんが、以前はコンセプトアルバム、という手法がありました。アーティストにとってアルバム、というのはその名の通り様々な楽曲がちりばめられた写真帖ですが、そこに収められる個々の楽曲のカラーをアルバム全体で統一しようというというのがコンセプトアルバムです。そんな手法が流行った20世紀に作られた作品をご紹介します。

George Duke。キーボーディストにしてプロデューサー。彼はどの年代を識っているかで、受ける印象が異なるかもしれない。

幼いころゴスペルのような黒人系の音楽に刺激を受けたが、1960年代末のデビューはジャズ畑。1970年代に入るとQuincy Jonesなどのグループに入り、グルーヴィな音楽系統へ。1970年代後半から1980年代前半に関してはさらにポップさも加わり、おりからのディスコブームもあって一番売れた時期。その後、ややブラコン~フュージョン色を強めたスムージィな作品を発表した後、プロデューサー業がメインとなり自身の作品発表はマイナー・レーベルへ居を移す。そして原点に還るようなソウルの香り漂うジャズがメインの作品を発表していた。

これまでGeorgeのことは2回ご紹介したが、この作品はクロくてファンキィなリズムを腰に感じながらも、都会的なスムーズジャズの薫りがする“Night After Night”

 

の時代ではなくて、彼が開発にかかわったショルダーキーボードが宇宙(そら)を飛ぶ、最大のヒット作“Dream on”

 

の直接の後編、といえるディスコサウンドバッリバリの一番演奏者として脂が乗っていたころの作品。

“Dream on”で売れたからか、この作品はさらにその上をいこうと?より大がかりなものになっている。まず総勢100人といわれる参加ミュージシャン。大編成のストリングスやブラスも導入し、プレイヤーも同一パートでも曲調によって替えている。さらにアルバム全体が一つの物語になっているようなコンセプトアルバムになっていてまるで映画のサントラか絵本からインスパイアされた作品

 

のよう。

原題の“Guardian Of The Light【光の守護者】”が表すように、当時一世を風靡していたSTAR WARS(一作目、いわゆるエピソードⅣ)の雰囲気もあるつくり。題名をざっと見ても「Overture【序章】」から始まって「Silly Fightin'【愚かな戦い】」だの、「The War Fugue Interlude【戦いのフーガ 間奏曲】」だの、「Stand【立ち向かう】」の後に「Celebrate【祝賀】」ということで、「Born To Love You【君を愛するために生まれた】」光の守護者がヒロインの「Give Me Your Love【愛を得て】」未来に向かって「Fly Away【飛翔】」していくさまが描かれている(たぶんw/この段落【】内は筆者による適当な適切な訳)。

Overture」。軽やかなでクリスピーなMichael Sembelloのカッティングと、ストリングスとブラス中心の厚いバックの導入から、いきなり、スラップの神様Louis Johnsonのグルーヴィなブリッブリのベースと、Michaelのミュートギター、重めのリズムのJohn Robinsonというシンプルな構成に一度落ち着くが、その後Jerry Hey率いるラッパ隊が加わり、ファンキィに。これからなにかがはじまるっというワクワク感に溢れた造り。めずらしくGeorgeがピアノを弾いている。

Light」はギターがCharles Fearingに換わるが、他のバンドメンバーは同じで、リズム隊はLouis+John。グイグイ引っぱるLouisのスラップベースに、タメ気味のJohnのリズムが絶妙だ。懐かしいEWF風のファルセットでGeorgeが歌う。ラストのストリングスがゴージャスに被さっていくくだりがイイ!

ファンファーレで始まるところがコンセプトアルバムっぽいが、MichaelのシャリーンとしたギターのカッティングとLouisの粘るスラップ、バックビートに入るハンドクラップで一気にディスコ!な「Reach Out」。ひとりコーラスのGeorgeの高音バリバリの美声と、レーザーガンの様な?音のシンセサイザーソロがステキ。最近この手の「人工音!」という感じの音を、曲の中ではなかなか使わないので逆に新鮮

この作品、前作の“Dream on”に比べると個々の楽曲の華に欠くため、セールス的には落ちたようだが、アルバム全体を貫くストーリーと、それを支える音の世界は、目の前に情景が広がり、まるで映画を見ているようで楽しめた。Georgeの高いプロデュース力を示した作品でもあるが、近年はプレイヤーとしてよりプロデューサーとしての仕事の方が明らかに比重が高かったのが、この作品がきっかけだとしたら、プレイヤーとしての彼も好きなcybercatとしてはある意味残念?

クレジットが探せなかったが、このアートワークいいなぁ..
クレジットが探せなかったが、このアートワークいいなぁ..
 

そんなGeorgeは近年もペースは落ちたものの、定期的に作品を発表しており、昨年(2013年)は亡き妻に贈る作品を世に出したりもしたのだが、この記事を書くのにあたって調べるとGeorge自身もあとを追うように昨年白血病で亡くなっていた。まだ70歳になる前の旅立ち。

この作品のように、Georgeも天空の光溢れる園で先に待つ妻と巡り会い、新しい物語を紡いでいってほしい..そう、思います。
George, I miss you..

【収録曲】
1. Overture
2. Light
3. Shane
4. Born To Love You
5. Silly Fightin'
6. You (Are The Light)
7. The War Fugue Interlude
8. Reach Out
9. Give Me Your Love
10. Stand
11. Soon
12. Celebrate
13. Fly Away

「Overture」~「Light」~「Shane」

更新: 2021/08/26
必聴度

大ヒットアルバムの「次」。セールス=完成度ではない(良い意味で)

大ヒットアルバムの次に同じほど売れる作品を創るのは難しい。

 

余勢を駆って売れはしたが、内容が伴っていないものもあれば、本作のように素晴らしい内容だが、売り上げは前作に届かない場合もある。

  • 購入金額

    3,500円

  • 購入日

    1988年頃

  • 購入場所

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