レビューメディア「ジグソー」

こちらの面は彼女のinside?outside?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。人って様々な面があります。強面で恐れられている人物が、動物には蕩けるような顔をみせたり、情熱的で激しい気性と思われているひとが、オフでは静かに植物を愛でるのを趣味にしていたり...あくまで我々が見ている「面」というのはその人の「一面」でしかないかも知れません。アーティストであればなおのこと自分の中の引き出しやチャンネルは多いかも知れません。前作とは大きくイメージが異なる作品をリリースしたアーティストの2作目をご紹介します。

女性ギタリスト、瀬川千鶴。ジャズ~フュージョン系を中心に活動するが、王道で明解なプレイから、エキセントリックで攻めたプレイまで幅広くこなす。もともと彼女を識ったのが、Frank Zappaを敬愛するニューウエーヴプログレギタリスト

としてだったので、その後のアコギをフィーチャーした活動や1stソロアルバム

の爽やかな印象となかなか結びつかなかったが、この作品でやっぱりこのテの一面もあるんだニヤリ、と。

真冬のリリースにもかかわらず、初夏の風のようだった1stアルバム“A Day”とはかなり様相が違う作品となっている。

まずはオープニングの「inside,outside」。符割りを複雑にして変拍子感を強調した曲。キメキメのフレーズをものともしないドラムス松下マサナオ、キーボード別所和洋のプレイが緊張感を高める。千鶴も中間部のソロのフレーズはかなりぶっとんでる。最後のユニゾン風に全部の楽器が同じ譜割りで盛り上げていくのはイイナ。

「風」はイントロの透き通るアルペジオ⇒Aメロのリヴァーブが強いフレーズ⇒変拍子風フレーズのBメロ⇒フィードバックが効いたサビと曲の表情とギターの音がころころと変わる曲。音像的には遠めで鳴っていて、自分が吹いている「風」の中にいるというよりは、「風」にそよぐ風景を遠くから眺めている感じ。まろやかな中村亮のフレットレスベースソロが心地よい。

ラストの「Architecture」は、千鶴の生ギター1本。アルペジオ+タッピング+ハーモニクスをうまく使った奏法で透明感が高い曲。「張る」曲が多かったこのアルバムで、落ち着ける曲(テクニック的には決して簡単な曲ではないが)。

吹き抜ける風のようにさわやかだった1stと異なり、ハードでスリリングな曲も多い2nd。でもこちらの方がもともと自分が彼女に抱いていたイメージに近いというのも事実。
今回ドラムスは2名参加
今回ドラムスは2名参加
1stの彼女も、2ndの彼女もどちらも千鶴。だから人って面白い。

【収録曲】
1. inside,outside
2. Day off
3. keep going
4. 風
5. Architecture

「inside,outside」

  • 購入金額

    1,080円

  • 購入日

    2017年07月13日

  • 購入場所

    Amazon

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