1976年発売のヤマハ製カセットデッキです。
世界的に著名なイタリアのマリオ・ベリーニ氏のデザインによる美しいそのフォルムは、ニューヨーク近代美術館の認めるところとなり、彼の地で永久展示されています。
現在なら、
このサイズでチューナー・アンプ・テープデッキを一体化しスタンドアローンで使える日常を想像しますが、時代は1976年。 カセットデッキ単機能のコンポーネントです。
ただ意外にも側面にはフォノプラグサイズのマイク端子が2つ備わり、AC電源以外に車載を想定した12V電源ソケットも備わります。
また底面には乾電池(単2を9本も!)を収めることが出来、SONYの商標になぞらえれば「デンスケ」としても利用可能です。
ただ実際に屋外で使われた方は少ないでしょう。
あくまでもデザインで選ぶための商品だったと思います。
ニューヨーク近代美術館(MOMA)認定の3台
実際にMOMAへ足を運んだことが無いので、ひょっとしたら他にもあるかもしれませんが、私がデザインに惚れて、買った製品のいくつかが、あちらでは永久展示扱いになっているようです。
こうして並べると、(SL-10は純正の斜め置き台を利用)サイズも角度もほぼ同じです。
このカセットデッキの角度は、ベリーニラインと称されており、どの位置から見ても、操作しても
全ての目盛りが判別できる、テープの走行を監視できるようにと考えられたものだそうです。
ライン入力調整・マイク入力調整・出力調整
また楽器屋さんらしいのが当時のハイ・ファイコンポーネントデッキとしては珍しいピッチ調整
の4項目は、スライドレバーで行います。 (入出力は左右独立)
イタリアンデザインらしく、各ボタンの大きさが同じなのでブラインド操作には適しませんが
プッシュスイッチで行うのは右端から
電源(流石に赤く塗られて間違えにくくなっている)
SONYが出していたフェリクロームテープを使う時の選択スイッチ(クロームテープとノーマルテープは自動選別) まだメタルテープは世に出ていません
ドルビーNR(ヒスノイズ低減装置)システム用 オン・オフスイッチ
野外録音時に重宝するリミッタースイッチ(レコードやFM放送を録音するときは不要)
上にある機械式カウンターと同期するメモリースイッチ(楽器練習時に便利)
カウンターの横にはリセットボタン
右端には電池駆動時にのみ作動する
バッテリーチェックボタンと メーター照明のオン・オフスイッチが並びます
アナログメーターはもちろん左右独立式で、-40dBから反応する高感度なものです
それに加えて-3dBで緑、+3dBで赤のLEDが明滅する工夫がありました。
高いレベルで録音すると高域がダラ下がりになり、低いレベルで録音するとヒスノイズが気になるというカセットテープの宿命を思えば、この種の工夫が施されたレベルメーターは有り難い仕組み。
録音中はRECORDが赤く ドルビー使用中はDOLBY NRと緑の文字が浮かび上がります。
テープ走行を管理するファンクションボタンは価格にして1/3以下のエントリーモデルのように、完全な機械式でした。
ガチャリとボタンを押し込む仕組みです。
当時流行していたFMエアチェックも、予め録音状態にするボタンと、ポーズボタンを推しておき、
別売りタイマーで強制的に電源を供給すると、モーターの回転を検知してポーズボタンが解除されるという原始的な仕組みでした。
同価格のSONY機やTEAC機、パイオニア機やテクニクス機は、既に電磁ソレノイドとリレーを組合せた操作に移行していたので、残念なポイントとして記憶している方もおられるかと思います。
テープのイジェクトも、まるでラジカセのようにガシャっと飛び出すものです。
本来この価格帯ならエアかオイルでダンプされ、ヌルリと蓋が開くのですが、、、。
もしその機械式ファンクションボタンが、デンスケのように屋外使用を考えてのことだったとしたら
コンセプト設定時に立ち返って考え直すべきだった! と今も思います。
マリオ・ベリーニもフェザータッチボタンを想定しながらデザインしていたのではないでしょうか?
裏面の電池蓋
眺めるために残しております
内臓のベルト切れを、一度メーカーで修理しています。
生産終了後軽く10年以上を経ていても、修理に応じてくれるヤマハの姿勢は評価に値します。
経年劣化で必ずダメになるゴムベルトを多用していますので、今現在もその時の状態に戻っています。
電源は入り、モーター音は聞こえますがテープは進みません。
放置している理由は、音がとても悪いからです。
それは古くなったからではなく、当時から 音は悪かったんです。
多くのメーカーのカセットデッキを、低価格品から高級品まで、色々情報交換していました。
時に友人宅に押しかけて試聴しました。 触らせてもらいました。
時にお宝レコードをダビングして交換しました。
当時、私達のコミュニティが持っていた共通のコンセンサス。
TEACやDENONの様にオープンリールを主戦場として戦っているメーカーは、対オープンリールとしてカセットテープを考えており、そのポテンシャルを見切っている。
故にこの2社の機械の録再音は、高域がなだらかに下降しつつも歪が少ない傾向
オープンリールを市場に提供しているものの、SONYとTechnicsとAKAI3社は、TEACとDENONに比してカセットテープの性能を限界まで引き上げようという意図が感じられる。
比較的硬質ながら、キレの有る録再音が得られる。
東芝Aurexは、dbxに対するadres またそれを前提にした倍速利用など 大手とは思えぬトリッキーな手法で存在していました。
ナカミチはあまりに高価なので、気安くお邪魔できる友人邸には存在してません。
で、このヤマハです。
後に世に出た1000番台のデッキは知りませんが、この800番は ほんとに音が、、、、。
歪の無い音といえば聞こえが良いのですが、とにかくぼんやりとした音調でした。
レンジが狭く、キレが無い。 ドルビーも初期のそれに多かった「ヒスノイズとともに音楽成分まで一緒に失われる」ものでした。
でも デザインが良いので捨てません。
オブジェとして十分価値があると思います。
普段は仕舞っておりますが、ひさしぶりに出してきてSL-10の横に並べ、改めて見惚れました。
オーディオラックの大改修が行われることがあるとしたら、もう一度並べてあげたくなりました。
購入価格と時期は この製品が発売開始された時のデータに基づいております。
私自身は20年前に友人から格安で譲り受けております。
幅312×高さ98(150・斜め置き時)×奥行312mm
重量 約5キロ
これを所有している自分を「審美眼がある」と思えばよいのか
「見た目に騙される」と自省するべきなのか 未だ判りませぬ。
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購入金額
75,000円
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購入日
1976年頃
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購入場所
cybercatさん
2017/02/02
>これを所有している自分を「審美眼がある」と思えばよいのか
>「見た目に騙される」と自省するべきなのか 未だ判りませぬ。
なぜか身に沁みる言葉でございます、ハイ。
フェレンギさん
2017/02/02
ミュージカルフィディリティ! かっこよすぎて痺れますね。
デザイン以外から入って、後に気に入るケースもありますが、ビビッときたら、、、ね!?
タコシーさん
2017/02/02
フェレンギさん
2017/02/02
選局ダイヤルの重みが心地よくて、端から端までスルスル〜っと滑るようにカーソルが移動しましたし、大まかに合わせてやると、後は自分が微調整できちんと追い込む仕組みにも惚れ惚れしてました。
上下に動かすアルミのスイッチの手応えは独特でしたね。 コクン という感じ。
後にTechnicsのシンセサイザー方式のチューナーに買い換えることになりましたが、意外にも可動部の無いシンセチューナーは寿命が短くて、パイオニア機も含めて数台買い替えました。
今は手元にチューナーと呼べる製品はありません。
がじおさん
2017/02/02
きれいに磨きたい。(^^
フェレンギさん
2017/02/02
一応洗浄したんですよ、、肉眼ではこれほどの汚れは見えませんでした、、。
夜だったし、、、。
画像を見て愕然としつつアップしちゃいました。
Yujiさん
2017/02/03
フェレンギさん
2017/02/03
自分がデザインに魅了されていたのに、買える価格だったのに、タイミングが合わずに見逃してしまった製品としてSONYのTC-FX1010があります。
完全にフラットなパネルに痺れておりました。 でもこのヤマハと同じで、音は価格に見合わないものだったのかもしれません。