以前、同じサードウェーブデジノス製のスティック型PC、DG-STK1Bを使ってみましたが、無線LANの感度がひどすぎる上に自身の発熱で殆ど大幅なダウンクロックで動くという、はっきり言ってしまえば使い物にならないという結論となっていました。
DG-STK1Bはファンレスであったことが最大の問題で、風が常に当たっていないと金属筐体であっても充分に発熱出来ない上に、無線LANが自身の筐体に阻害されてまともに受信出来ないというものでした。
一方、今回のDG-STK2Sは世代が新しくなっているため、DG-STK1B比では改良されている箇所が少なからずあります。主な差は
・CPU:Atom Z3735F→Atom x5-Z8300
・USB:USB 2.0×2→USB 3.0×1+USB 2.0×1
・無線LAN:IEEE802.11b/g/n(2.4GHz帯のみ)→IEEE802.11a/b/g/n/ac(2.4/5GHz帯対応)
・冷却:ファンレス→冷却ファン内蔵
というところです。
CPUの世代差については、実はCPUコア自体には大きな差はありません。クロックが若干上がる(1.33GHz→1.44GHz)分だけ、処理能力は若干向上しているはずですが…。どちらかというと、内蔵のグラフィックスコアの世代が進化していることが大きな違いとなります。
さすがにDG-STK1Bのような1万円割れまではいっていないのですが、税込13,800円と発売直後よりは随分値下げされたので、少しは使えるものになったのか確かめてみようと思い、購入してみました。
ドスパラの直販サイトでは既に販売終了となっていましたので、デジノスAmazon店から購入しています。
添付品はHDMI延長ケーブルとACアダプター、スタートガイド程度です。DG-STK1Bと比べても更に本体の存在感が増した気がします。
実際に使えるようにするには、少なくともこれだけのものを接続する必要があります。
本体が大型化しているため、HDMI端子に直接挿すことはまず不可能でしょう。従って
・HDMI延長ケーブル
・ACアダプター
・入力デバイス(この写真ではLogicoolのUnifyingレシーバー)
が繋がった状態でなければ使うことは出来ない訳です。この製品のとあるレビューで見たのですが、「ここまで来たらスティック型という形状にこだわる必要も無いのでは?」という気がします。
ある程度は使えるようになった
さて、DG-STK1BはChromecastが全く問題なく使える場所で、無線LANが受信出来ずに使用を断念した訳ですが、今回はそのような不都合は無く、ごく普通に利用開始となりました。
Windows10は32bit版が入っています。まあ、メモリーが2GBしかありませんし、eMMCも32GBですから少しでもフットプリントの小さい32bit版を採用するのは正解でしょう。
CPUの情報はCPU-Zで確認してみましょう。
この時点では1.28GHz動作ですが、低負荷時には定格の1.44GHz動作も多く見られます。
一応eMMCの速度も計測してみました。
格安PCのeMMCとしてはごく標準的な値ではないかと思います。
さて、DG-STK1Bでは無線LANの問題の他にも、自身の発熱に耐えきれないという問題もありました。特に負荷をかけないでも、しばらくすると発熱が限界に達して動作周波数が大きく落ちてしまうというものです。
このDG-STK2Sの場合、Microsoft Edgeによるブラウジングでは、タブを2~3枚開いた程度であればこれくらいの温度となります。
決して低い温度ではありませんが、DG-STK1Bと比べればまだ余裕があります。ただ、グラフィックスコアが進化しているCherry TrailであってもフルHDの動画再生などはかなり高負荷の処理ということになります。DLNAサーバーからVLC Playerのストリーミング再生機能で動画を再生してみましょう。
このような状態で、動画を5分ほど再生してみます。
コア温度が80°台に張り付き、動作周波数も定格の半分以下となってしまいます。こうなると動画も時々止まったり、コマ落ちが多くなったりしてあまり快適には再生出来なくなってしまいます。本体内蔵ファンがあるとはいえ、やはり熱がこもるTVの裏などでは長時間使用は厳しいようです。周囲のエアフローは考慮しておく必要があるでしょう。
使えないものでは無くなったが…
DG-STK1Bとは違い、ごく普通にWindowsの操作感を試すことが出来たという時点で、格段の進歩を遂げたことは間違いありません。
無線LANもIEEE802.11acに対応しましたので、速度の安定感もあります。Webブラウザーで情報を閲覧する程度であれば充分に実用的なところまでは辿り着いたと思います。
しかし、この類のデバイスで期待される用途の一つと思われるメディアプレイヤーとしての実力は、残念ながら実用範囲まではもう一歩というところです。最初の1~2分は充分軽快に再生出来ていて、これなら使い物になると思っていたのですが、しばらくするとコマ落ちや遅延が発生し始め、動作温度を確認してみると前述の通りだったという訳です。
GPUがHaswell世代のIntel HD Graphicsに上がっていて、実行ユニット数も増えているという大きなメリットはあるのですが、GPU周波数はBay Trailよりも大幅に下がっている(311MHz→200MHz)ため、劇的な性能向上には繋がっていないように見受けられます。まだフルHD動画の再生を軽々とこなすという域には達していません。
もっとも、DG-STK1Bがエアフロー等も含めて使えていた環境に、このDG-STK2Sをそのまま持っていけば、恐らくこの熱の問題も気にならない程度で落ち着いてくれるのではないでしょうか。純粋に1世代進化しているということは実感出来る程度には改良されています。
Cherry TrailのスティックPCはあまり選択肢が無いため、他社のBay Trail搭載製品が主な比較相手となりますから、その中では充分に競争力を持った製品ということが出来るでしょう。ただ、既に同種のスティックPCを使っている人が、敢えて買い換えるほどの価値は見出せません。これから1代目を使う方であれば、選択肢の一つとなり得る製品です。
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購入金額
13,800円
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購入日
2016年05月22日
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購入場所
サードウェーブデジノスAmazon店
アラクレさん
2016/06/06
やはり根本的な問題はスティック状にあるとしか思えないです(笑)
ただ大した差ではないにしろ、世代を重ねるごとに性能がよくなっている
(ようやく性能を引き出せるようになってきた、ともいう)訳ですし、
コレ系の1本目としていく分には良さそうな感じではありますね!
jive9821さん
2016/06/06
DG-STK1Bがあまりにもひどすぎたので、今回は普通に使えただけでも格段の進化と感じられてしまいます。
スティック形状にこだわらず、もう少し余裕のある熱設計であればかなり実用性も高くなると思いますね。
とりあえずスティックPCを初めて使うという方には、PCとして普通に動くという意味ではお薦め出来るかも知れません。