前回掲載した、ヨドバシカメラ「夢のお年玉箱 2017 デジタルオーディオプレーヤー/ブルートゥーススピーカーの夢」の中身だったのが、このXDP-100Rでした。
Web上で見られた他の方の報告によると、外装色シルバーのものが入っているというパターンもあったらしいですが、私が購入したものはこちらのブラックです。
ご存じの方も多いと思いますが、本機はオンキヨー&パイオニアイノベーションズという、オンキヨー、パイオニアという2つのオーディオブランドの事業統合(厳密にはオンキヨーがパイオニアのホームAV等の事業をこの会社に吸収統合した)により発足した会社で開発されており、基本設計を共有する兄弟モデルとしてONKYO DP-X1、Pioneer XDP-100Rという2製品をリリースしました。位置付けとしてはDP-X1が上位ということになります。
ハードウェアとしての基本仕様はほぼ共通していて、ヘッドフォンアンプとしてESS SABRE 9601Kを、D/AコンバーターとしてESS SABRE ES9018K2を採用しているという特徴も同様です。ただし、DP-X1のみ2.5mm4極のバランス端子を装備している関係上、バランス出力時に機能するようそれらを2基ずつ搭載しているという違いがあります。ちなみにアンバランス出力時にはD/Aコンバーターも含め1基ずつしか動作しないとのことです。
一方でXDP-100Rのみとなる特徴としては、筐体上部に金属製のバンパーが装着されている(ネジ止めされているので取り外しも可能)こと、下部にスピーカーを内蔵していることです。個人的にはこのクラスのプレイヤーで内蔵スピーカーを持たせる意義が今ひとつ理解出来ないのですが、以前SONYも最上位モデルNW-ZX1にスピーカーを内蔵させていたことを思い出しました。
基本的には両者の違いはその程度で、実売価格は発売当初から現時点に至るまで約1万円ほどDP-X1の方が高いという状況となっています。バランス接続が欲しい方はDP-X1を、必要無ければXDP-100Rを、それぞれ選択するべきというメーカー側のわかりやすい意思表示ということでしょう。
個人的にバランス接続は出来れば欲しいところなのですが、一応バランス接続対応のAstell&Kern AK100IIが既に存在していること、今回は「夢のお年玉箱」の価格差が2万円あったことから、コストパフォーマンス重視でXDP-100R(が入っていると予想された箱)を選択しました。
それでは、ここでXDP-100Rを開封してみましょう。
箱の中身は本体の他はクイックスタートガイドとmicroUSBケーブル程度で、極めてシンプルです。充電器等は特に付属していません。
本機はOSとしてAndroid 5.1.1を採用していて、Playストアも利用出来ますのでアプリケーションの変更や追加等も可能です。ただ、今回はそのようなものは利用せず、あくまで出荷状態に最新アップデートを当てただけの状態でテストを行います。また、楽曲データは2基あるmicroSDカードスロットに、それぞれメモリーカード(32GB、64GB各1枚)を挿入して、WAV等のロスレスデータを64GB側に、mp3等の不可逆圧縮データを32GB側に、予め転送して用意しました。そのため、本体へのPCからの直接の転送は行っておらず、転送ソフトについては言及しません。
組み合わせを選ばず、概ねそつなく鳴らす
それでは、早速試聴です。以下のイヤフォン、ヘッドフォンを使いました。
これ以外にも、某IE80もどきや、まだレビュー未掲載ですがSENNHEISER IE60等、手近にあったものを適当に使っています。
色々なヘッドフォン、イヤフォンで使ってみてまず気付くのは極端に相性の悪い組み合わせは特にないということでしょうか。AK100IIでは極端に相性の悪いものがあったり、逆に普段以上に良く鳴るものがあったりと、接続する相手との相性が非常に厳しい印象があったのですが、XDP-100Rは何を接続してもそのヘッドフォン、イヤフォンの持つ音に沿って本機の特徴が出てくるという印象を受けました。
強いていえば、イヤフォンでは低域の特定の帯域を盛って、アクセントを強調しているような音作りと感じます。高域方向は極めて緻密で細かい音がよく出てきますし、解像度もアンバランスとしては高水準でしょう。ただ、決して素直な音という訳ではなく、積極的に演出を加えているように感じられます。表現が難しいのですが、曲の持つ印象をより強調するような音といえば良いでしょうか。DAPであることを考えれば、そのようなアプローチもありでしょう。
個人的にはATH-CKR10との組み合わせがまとまっていて好印象ですが、ゆったりとした音に仕上げたければSENNHEISER IE60との組み合わせもなかなか良いのではないかと思います。UE900を使ってふわりとした音場を楽しむのも勿論ありです。これまでDAPで鳴らすのが難しかったFOSTEX T50RP mk3nが、割合高水準に鳴らせたことには驚きました。
音質的には「色づけの少ない」とはお世辞にもいえないものの、決して不快感のある色づけではなく、総じて優秀にまとまっていると評して良いでしょう。
信頼性には大きな不安が
まず、音質については購入価格から判断すれば全く文句はありませんし、本来の価格でも比較的高い評価は与えられる水準です。今回の価格で買えるようなライバル製品は、せいぜいSONY WALKMAN A20/A30シリーズ程度でしょうから。
個人的にはUI等も特に不満を感じるようなものではなく、使い勝手も含めて高水準と思っているのですが、この機種で問題となるのは信頼性です。
まず各所のユーザー評価で最も指摘されているのが、ヘッドフォン出力端子の強度不足です。私は使い始めからまだ数日ですので問題は起きていませんが、早いユーザーの例では1~2カ月で端子が緩んできてしまい、そのうち音が出なくなることが増えるという症例が多発しています。
これは端子部の構造自体と強度不足という、根本的な問題であるのですが、メーカー側では改善する様子はないらしく、本機の後継モデルであるXDP-300Rやその上位仕様となるDP-X1Aでも変化は無いといわれています。
実は同じ「夢のお年玉箱」で身内がやはりXDP-100Rを買っていたのですが、そちらの個体はmicroSDメモリーカードスロットに問題を抱えていて、片方のスロットは挿したメモリーカードが二度と出てこないという状況に陥ってしまっています。もう片方のスロットも抜き差しすると常に何かに引っかかる感触があるということで、スロットの組み上げ自体に問題がありそうです。また、この個体は同じように使っても私の個体よりも遙かにバッテリー消費量が激しいという問題もあり、とにかく品質が安定していないという印象が強いのです。しかも、今回の症例で初期不良扱いではなく修理が打診されるというのも、対応としては極めてお粗末ですし…。
DAPとしては比較的大柄な筐体を採用していて、構造的にそれほど無理があるとも思えませんので、下請けの製造クオリティーが低いということなのでしょうが、この辺りが改善されなければいくら音質が良くても積極的には選びにくいものがあります。音質を語る前に、まずは基本的な利用に支障が無い品質をお願いしたいところです。
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購入金額
25,000円
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購入日
2017年01月01日
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購入場所
ヨドバシカメラ
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