所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。どの分野にも「伝説の..」と呼ばれる人がいます。その分野の混沌期に現れ、大きな影響を与えながらその後忽然と消えた人がそう呼ばれることが多いと感じます。ボカロ曲が一般化するにあたって大きな足跡を遺しながら、現在はなりを潜めている人の遺した作品をご紹介します。
kemu。2010年代初頭に活躍したボカロP。爆速系のバンドサウンドを中心としながら、親しみやすいメロディにより多くの「歌ってみた」シンガーを生み、その構築されたリズムセクションはそのスピードとあいまって挑戦系の「演奏してみた」プレイヤーを生んだ。そしてストーリー性のある歌詞は「演じてみた」の投稿が多いことでも知られる。事実、ニコニコ動画に投稿した全曲(8曲)でミリオン(100万再生以上)を達成した唯一のPとして知られるほど熱烈な支持を受けている。
しかし彼の遺した形のある作品はこの“PANDORA VOXX complete”関連とその派生物のみである。インディーズでの発表となる1stアルバム“PANDORA VOXX”、それに9曲のボカロ曲を加えたメジャーデビューアルバムである本作=“PANDORA VOXX complete”、そのヴォーカルパートをポーカロイドから複数の人気歌い手による人声の歌唱に変更した“PANDORA VOXX REBOOT”。インスト曲はそれぞれのアルバムで独自のものも多いが、ヴォーカル曲としては本作でほぼ全ての作品を網羅している。あとはミックス違いやヴァージョン違いに過ぎない。
つまり、2011年末の初投稿から鮮烈な印象を残し、そのおよそ1年半後の2013年半ばの8曲目の投稿と同日に「夢のようでした。もしかしたらまたどこかで。」とtweetしてその後ぴったりと楽曲発表をやめたkemuの活動のほとんど全てがこの2枚組のアルバムに収められている(もともとは2枚組。それにMVの付いたBlu-rayもしくはDVDがつく限定盤がある⇒当然?持ってるのは限定盤だよっw)。
いままでニコニコ動画に発表された全曲(01-2、01-3、01-8、01-12、02-2、02-3、02-8、02-10)を含み、それ以外の曲も良曲揃い。さらにインスト曲はプログレ調の凝ったアレンジで飽きさせない良盤。ただやはり投稿されたkemuの代表曲のいくつかをここではご紹介。
「インビジブル」。kemuの投稿2作目にして最初のミリオン達成曲。kemuの曲の特徴として、多くの曲が爆速であると言うこととともに、いくつかの曲は懐かしい「和」の旋律を持っていることが挙げられる(同系統に「六兆年と一夜物語」)。この曲はドラムもちょっと祭り太鼓風のフレーズがあって楽しい。2016年1月時点でトリプルミリオン超。
5曲目の投稿となる「地球最後の告白を」はストーリー性の高い歌詞が秀逸。♪どうやら僕に訪れた/悪戯は/相当タチの悪い/不老不死のおせっかい~追い越してく/戻れない憧憬/好きな人に/さよならを~そして/君が知らずに/幸せな灰になった後で/僕は今更/君が好きだった/って気付いたよ♪という切なさ。歌詞を聴きたいボカロ曲って(ボカロの滑舌?があまりよくないこともあり)それまであまりなかったけれど、自分にとってそれをひっくり返された点は大きい。2016年1月時点でダブルミリオン超。
「イカサマライフゲイム」は3つ目の投稿。これは歌詞が不気味で残酷。♪イカサマライフゲイム/雁首揃えたジョーカーは/嗤う/やがて/未来予知は訪れる/最後の通達/いやに明瞭で憎らしげ/『明日/君は』/『どうがんばっちゃっても死にますよ』♪と歌われるが、超高速(BPM約200)で爆走していく曲はむしろ爽快感さえある。これもダブルミリオン超...というかむしろトリプルミリオン手前。
付属のBlu-rayはニコ動投稿された8つの楽曲中最後の二つ(「リンカーネイション」と「敗北の少年」)を除く6本のMVに、未投稿MV「ぼくらの報復政策」を加えたものが収められる。
これらはkemuのチーム「KEMU VOXX」による。KEMU VOXXは音楽担当のkemu、イラスト担当のハツ子、動画担当のke-sanβ、SMC担当のスズムで構成されていた。ハツ子のCOOLな絵(マキちゃん!)とke-sanβの人目を惹くシカケの多い動画がkemuの疾走感溢れる音楽に合っていた...が、投稿8曲目の「敗北の少年」のMV(本作未収録)のラストに「Thank you.We'll meet again, someday.」と記し、前述のtweetを放った後kemuは何処かにキエテシマッタ....
..でも、1年半更新のなかったKEMU VOXXのHPが、kemuの最初の投稿「人生リセットボタン」の投稿日11月7日に更新されたのは2015年のこと。その時ke-sanβこと稲垣敬氏から「kemuからささやかなプレゼントがあります。」とtweetされたことに対しては、「もうちょっと寝ます」と返したkemu(さらにそれにke-sanβがリプしたのが「もう少し寝るのは良いけどあの日に遅れないようにね。」...あの日?)。その更新された動画には「おとぎ話を覚えてる?」という問いかけと、「Thank you for 4th anniversary」というメッセージが刻まれている。
そろそろ目を覚まして?みんな待ってるよ!
.....その「日」はKEMU VOXX結成の日=「1月7日」なのか?..そうなのか??
【収録曲】
<DISC01>
1. Opening (Inst)
2. 人生リセットボタン
3. カミサマネジマキ
4. 君にモテたい
5. Buzzing (Inst)
6. モップヒロイズム
7. タイムマシンと入道雲
8. 六兆年と一夜物語
9. Intron (Inst)
10. ぼくらの報復政策
11. 独白
12. インビジブル
<DISC02>
1. Mythology (Inst)
2. リンカーネイション
3. 地球最後の告白を
4. 天才シンガー凡才シンガー
5. 期末試験の帝王
6. Daze (Inst)
7. 嘘つきシューティングスター
8. イカサマライフゲイム
9. 何でもない朝に
10. 敗北の少年
11. Ending (Inst)
<Blu-ray>
1. 人生リセットボタン
2. インビジブル
3. イカサマライフゲイム
4. 六兆年と一夜物語
5. ぼくらの報復政策
6. 地球最後の告白を
7. カミサマネジマキ
「PANDORA VOXX complete 【クロスフェード】」
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おまけ:kemuの曲の特徴として「歌詞に物語性がある」「リズム系の構築が人間業じゃねぇ」と言うのがある。これにより、ニコ動で「演じてみた」「演奏してみた」の投稿の元ネタに使われることが多いPでもある。彼の曲つながりで出逢えた演じ手、弾き手も多いので感謝したい。
以下このCDの紹介とはややずれるが、上で紹介した曲の「演じてみた」「演奏してみた」。(いずれも本家はニコニコ動画で、そちらの方がコメントも含め楽しめるのだが、ZIGSOWの仕様上Youtubeの方が視聴しやすいので動画はそちらを。ニコニコ動画は題名からリンク張ってます。)
「インビジブル」。スゴ腕ドラマー3110(齋藤)。ドラム講師でもある彼は理想的な演奏姿勢と正統派テクニックに加え...回す。とにかく回す。みればわかる。すっとこどっこい“(┓^ω^)┛))スットコドッコイ♪”(下↓の「地球最後の告白を」の最初も激回し動画あり)
「地球最後の告白を」。演じ手=マジシャンびーも。物語性のあるマジックとアイデア溢れる構成が妙。歌い手などの動画のさわりを流してそれを目指そうとしながら挫折してトランプに逃げる?のがお約束w “お前が貧乏でよかった”
「イカサマライフゲイム」。ベーシストCOSSUN。ピック弾きの鬼。エレキベースの奏法には大きく分けると指弾き(ツーフィンガー)、スラップ、ピック弾きがあるが、それぞれ得意な分野・曲調があり、基本ベーシストは曲によって弾き分ける。....が、彼はそれを9割9分以上ピック弾きで押し通すっ。“見ろ!右手がキツツキのようだ!!”
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購入金額
2,800円
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購入日
2015年10月07日
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購入場所
ヤフオク!
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