教授、こと坂本竜一。Yellow Magic Orchestra(YMO)のキーボーディスト。YMOはベーシストでありキーボーディストの細野晴臣とドラマーの高橋幸宏に坂本が加わった3人組のバンド。1970年代末の当時最新の技術を使って、でも曲は比較的わかりやすく、そしてオリエンタルな無国籍情緒をまとったもので、「テクノミュージック」を世界に広めた。
そんな社会現象ともなった「テクノ」、1980年代のはじめはこれ一色で、坂本もこの路線での活躍が多かった。その後「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」といった映画音楽を手掛け、オーケストラなどをバックにした「非」電気的な部分でも成功を収める。その後YMOの再結成などを挟みつつもソロではヴォーカル入りや前衛音楽、ハウスにポップとさまざまなジャンルをめぐった坂本が戻ってきたのが本作、“BTTB”、別名“Back to the Basic”。ボーナストラック扱いの最後の2曲をのぞけばすべて書き下ろしの新曲。ただその曲ごとの風合いはかなり異なる。出だしの印象派のようなニューエイジのような流れる音の中にも光るラインどりをとる曲たちに続いては民族音楽のようなエキゾチックな感じの音色を使った小品、薄いのこぎりを弾いたようなピュアンピュアン?した音が延々続く実験的な曲?などを挟んで、再びニューエイジ系に戻り、最後にYMO時代の名曲で〆られる。
トップの数曲は電気音楽・電気楽器の印象が強い坂本がピアノの詩人たるところを魅せるし、ラストの「tong poo」は多少のミスタッチはあるがそれをものともしない勢いで押し倒すので坂本の最高プレイの一つと数えてもよいものだが、真ん中があまりに異質で、ひとつのアルバムとして聴くとちょっとつらい(少なくともcybercatは)。でもそこも入れてこの☆の数なので、どれだけ他が良いかわかろうというもの。
アルバム最初の「opus」は優しいニューエイジ系の叙情的な曲。流れる水のようなたゆたう感じの音が聴き手の前に放たれる。でもその音は「流される」ことなく、坂本の情感が込められている。激さずでも力溢れ、滔々としているのに深い。単なる環境音楽、BGMではない。
「Lorenz and Watson」は調の構成が面白い。長短相半ばし、それもかなりフリーダムにスイッチングされる。テーマのちょっとファニーな感じと中間部の荘厳な和音による展開の対比が面白い。特にホ短調→ト長調への復帰の仕方が秀逸だな。
~中略~(ここらへんの曲はcybercat的にイマイチと思うので)
ラストの「tong poo」が魅せ場。YMOで初出となった、坂本の代表曲のひとつ。連弾なのだが、誰か別の人と演ってるのではなく坂本ひとりの重ね録り。しかも重ね録りと言っても2パートをそれぞれテープに録音してそれをミックスダウンしたのではなく、ベーシックパートをコンピューターに記憶させ、それを演奏させながら上物テイクを録るという手法だったらしい。そのため、ライヴ感と疾走感が溢れる素晴らしいテイクになっている。実はこの曲はボーナストラック扱いらしいが、はっきり言ってこの曲のために買っても良いくらい。坂本龍一の曲(テイク)の中では一二を争うほど好きな曲。
白地に黒でシンプルに題名が書かれたジャケット、それは坂本龍一の「素」の姿か。坂本の中には叙情的なメロディアスな部分も、エネルギッシュなテクニシャンの一面も、実験を楽しむ探求者の面もある。そんな「素」をだした作品なのだろうが、ちょっと生徒が教授について行けなかった感じ。教授(センセイ)!もすこし、わかりやすくお願いします(・_・)(._.)
【収録曲】
1. opus
2. sonatine
3. intermezzo
4. lorenz and watson
5. choral no.1
6. choral no.2
7. do bacteria sleep?
8. bachata
9. chanson
10. distant echo
11. prelude
12. sonata
13. uetax
14. aqua
15. snake eyes
16. tong poo
「tong poo」(ライヴだが、CDラストと同じこのアレンジ!)
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購入金額
3,059円
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購入日
1999年頃
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購入場所
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