レビューメディア「ジグソー」

熟成を経た三種盛り

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アルバムという形態をとっていても曲調が統一されているものもあれば、バラエティに富んでいるものもあります。そんなイロイロな傾向の曲の詰めあわせのような作品をご紹介します。

是方博邦。大雑把にいえばフュージョンギタリストとカテゴライズされる彼だが、cybercatとしてはインストロックギタリストと呼んだ方が、しっくりくる感じ。ジャズや理論が先に来ると言うよりハートが来る、ブルース系のギタリスト。彼の特徴としてはサムピックを使った指弾きが多いこと。ここら辺が単なるロックギタリストとは傾向が異なり、結構好きなギタリスト。

そんな彼の6枚目のアルバム。ちょうどレコード会社が変わって海外レコーディング、メンツもThe YellowjacketsのRussell Ferranteや元Weather ReportのAlex Acuñaがアレンジしていたりとリキ入っている作品。

特に記載はないし、題名や装丁もそんな感じではないのだが、1曲目以外は曲名に動物(類)の名前や動物に関する単語が入っていて、いろんなものがいる「動物園」のイメージなのかなと。ラテンっぽいハネるリズムから打ち込みのような四角いビートまで様々な曲調の作品が味わえる。

HEART OF EARTH」。これはなんと言ってもリズム。3連「裏」系のラテンっぽいリズムはパーカッショニストとしても有名なAlex Acuña。躍動感溢れるベースはLarry Carltonとも共演したJohn Peñaという熱いコンビ。「弾ける(はじける)!」というのがまさに適切なAlexの6/8というよりは12/16...24/32かもwという感じの神リズムにJohn Peñaのドライヴィンなベースがからみ、その上で良く泣く是方のギターが歌う。ジャングルっぽいイメージかな?

SILVER CAT」はサポートギタリストのDavid Williamsのアレンジ。このセットはカッチリ系でヘヴィな音のJohn Robninsonがドラムを叩く。DavidアレンジのセットではFreddie Washingtonがベースを弾く曲もあるがこれは打ち込み。打ち込みとキーボードはTOTOのSteve Porcaroによる。結構硬い機械ノリのアレンジなのだが、その硬いリズムの上で弾きまくる是方のプレイがアツイ!!

Russell Ferranteのアレンジした曲は3曲あるが、ロマンチックでリリカルな感じのが2曲で「ZOO-ZOO-ZOO」は唯一の元気系。リズム隊は、ドラムスがThe YellowjacketsのメンバーWilliam KennedyでベースはJustin Morellの作品で一緒に演ったJimmy Johnson。明快なリズムでなんか中期THE SQUAREのようなわかりやすさがある。ただ音色がオルガン系中心なのがRussellらしいが。

このアルバム、リリース当初は是方に期待するより音作りが「硬い」感じがして(基本John Robninsonのドラムが音作り含めてカタイんだよなー←これはこの作品に限った事じゃないけど)、「キャッチ―な方向に走っちゃったなー」という感じだったけれど、今聴くと音造りなどが適度に古くなり(熟成されて?)、意外に是方のプレイが引き立つ。そしてアレンジャーによって毛色の異なる曲が詰め込まれていてバラエティ豊か。

この後彼は2枚のオリジナルアルバム

 

 

を残してしばらく表舞台から去るが、その2作品はこの作品が基礎になっているな、と後から俯瞰すると良く判る。

装丁は動物園を思わせるような部分はカケラもない
装丁は動物園を思わせるような部分はカケラもない

人によるバックの曲が半数、打ち込みを使ったのが半数と、いい感じの機械との融合。でもギタープレイはオレ節だかんね、という自信に裏付けされたプレイが様々な曲調に乗ったのが堪能できる良盤です。

【収録曲】
1. ハート・オブ・アース/HEART OF EARTH
2. オランウータン・ツイスト/ORANGOUTAN TWIST
3. 哀愁のクジラ/WHALE
4. ピューマ・ギャング/PUMA GANG
5. シルバー・キャット/SILVER CAT
6. ペンギンの初恋/PENGUIN
7. ズー・ズー・ズー/ZOO-ZOO-ZOO
8. パープルサウルス/PURPLESAURUS
9. ロマンシング・バード/ROMANCING BIRDS

「SILVER CAT」

更新: 2019/10/12
必聴度

カタイ機械ノリが時代を感じるが...

その中でイイ音で是方がいい音で「歌って」いる。

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (8)

  • パッチコさん

    2015/05/22

    コレカタさんいいですね。
    このアルバムが出たころに、ギターワークショップというビデオがあって、シンプルかつ重要なポイントをついたギター講習ビデオ(まさにVHS)でした。
    10年以上まえに楽器フェアで本人を見つけたのですが、すごいオーラで声をかけられなかったのは内緒。
  • cybercatさん

    2015/05/22

    是方って表舞台に出たのはKORE-CHANz

    位しかないかもしれませんが、いい味出してるプレイヤーなんですよねー。
    日本のフュージョン系ギタリストだとナニワ

    のカズボン(岩見和彦)と並んで好きなギタリストの双璧です。
  • 北のラブリエさん

    2019/10/12

    そういやOTTOTORIOのスタジオ版買ってないや。
    KORE-CHANz豪華でしたよね。
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