実は個人的にどうもしっくりこないのですが、世間での評判がとても良いのが、JVCが発売するWOODシリーズの製品群です。ウッドドーム振動板を採用していて独特の音質傾向を持つ製品群であり、シリーズ中1モデルくらいはそこそこ良いと思うものもあるのですが、どうも買おうと思うほどの魅力は感じられなかったのです。以前現行モデルの最廉価機HA-FW7を買ったのですが、全く気に入らず直ぐに不要品箱に入れてしまい、レビューすら書いていませんでした。
しかし、前世代のHA-FX850、HA-FX1100については、その中では比較的印象が良かったということもあり、安くなればそのうち手に入れてみようと思っていました。そこで中古品がタイムセールで安くなっていたHA-FX850を入手してみました。
外箱は欠品でしたので、このような形で届きました。
このシリーズの特徴でもある、SpiralDotイヤーピース等の付属品はきちんと残っていました。
ケーブルの外観はあまりコンディションが良くありませんが、MMCX端子を採用しているモデルですので、これはどのみちバランスケーブルに交換してしまいますから気にする必要は無いでしょう。
中低域の甘さが独特のキャラクターを生む
今回は2.5mm4極バランスケーブルとして、onso iect_01_bl2m_b_120を組み合わせた上で、プレイヤーとしてAstell&Kern KANNを使って試聴してみます。
まず第一印象としては、以前聴いた時の記憶とはかなり違っていたということです。当時はプレイヤーがAK100(初代)やAK100IIなどだったのですが、それらの非力なアンプではこのシリーズは全く鳴らせていなかったということが理解できました。
実は以前eイヤホンの店頭で現行のWOODシリーズHA-FW01/02/03の試聴会を開催していたときに、全機種試聴してみたのですが、当時持ち歩いていたAK100IIではHA-FW03が最もまともに聞こえ、HA-FW01は全く音になっていないということがあったのです。しかし、HA-FW01を用意されていたアンプのJVC SU-AX01にバランス接続して試聴すると、別物のように良くなったということがあり、アンプに対する要求は意外なほど厳しいということはあるのだろうなと思っていたのです。
今回はDAPをアンプが強力なAstell&Kern KANNにして、さらにバランス接続していたことから、思ったよりはかなり良く鳴るな、と感じさせられる程度には良くなりました。その上で評価すると、「Alone / TOTO」では中低域が濃厚でこの部分の解像度はもう一歩といったところでしょうか。また最低域の方はむしろやや薄めで、沈み込みの深さはもう一歩です。
ただ、バランス接続の効果か音場は以前の印象よりは広がっていますし、甘めの中低域もスローテンポな楽曲ではむしろ味に感じられます。意外にも「Song for Guy / Elton John」(ベスト盤「Diamonds」収録)などは空間の見通しも良くヴォーカルやピアノの音色が良好で好印象でした。ただランダム再生で次に流れた「West End Girls / Pet Shop Boys」はやはり全般的にキレが甘く、この曲の良さが出ません。
アンバランス接続については、ACOUSTIC REVIVE REC-130SH-Sとの組み合わせで聴きましたが、印象としてはバランス接続時とそれほど大きくは変わりません。
「Dangerous / David Garrett」を聴くと、ダイナミックドライバーモデルとしては、ちょっと固いかなとは思いますがヴァイオリンの音色は比較的よく出ています。ただ、低域方向にもう少し深さがあればというところです。厚みのある中低域よりも、もう少し低いところが出ないとこの楽曲は厳しいようです。REC-130SH-Sは、純正ケーブルよりは甘さが消え、このモデルにはマッチしているように感じられます。
というわけで、WOODシリーズということでさほど大きな期待はしていなかったのですが、KANNとの組み合わせやリケーブルによって予想よりは遙かに好印象でした。中低域が厚く甘いというのは弱点といえば弱点ですが、それもこのモデルの音色として許容できる程度です。
正直言って新品ではちょっと高いかと思うのですが、今回の価格であれば十分に魅力的な製品といえそうです。
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購入金額
6,000円
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購入日
2018年05月13日
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購入場所
eイヤホン
harmankardonさん
2018/05/19
XDP-300Rで聴くと,FW01の圧勝でした.
やはり,価格的にも釣り合う組み合わせは必要ですね.
マルチBAとは全く違う音質ですが,もともとD型が好きなので,FX1100のボーカルはお気に入りです.
jive9821さん
2018/05/19
実際に試聴会を担当されていたJVCケンウッドの担当の方も、この中ではFW03が最も万能型という趣旨の説明はされていましたね。ただ、きちんとしたアンプを使えばFW01が本領を発揮して上位モデルらしいところを見せるのも確かです。
AK100IIやAK70で使う限りは、FX850も今までの悪いイメージそのものでしたから、アンプの駆動力はやはり大事です。
cybercatさん
2018/05/21
WOODは「万能イヤホン」ではないですね。あの中低域にある盛り上がりと、「響き」が合う曲にはゴキゲンに合いますが、ダメな曲には全然あわへん。
jive9821さん
2018/05/21
WOODシリーズは組み合わせるプレイヤーと聴く楽曲次第という印象ですね。
KANNと組み合わせている限りでは「個性的」という程度の傾向ですが、AK70では単にキレの悪い低音が垂れ流されているとしか感じられないのです。
KANNで使うという前提ではありますが、今のところは、不用品箱に入れる必要がない程度には気に入りました。