先日下位のGeForce GTX 960を搭載する、Palit GeForce GTX960 SuperJetStreamのプレミアムレビューを書かせていただきましたが、やはり導入を検討していたもう一方となるGeForce GTX 970の方が気になってしまい、安売り品に出会ったこともあり思い切って購入してきました。
Palit GeForce GTX960 SuperJetStreamは良く出来た製品であるとは思うのですが、3スロット占有という物理的形状の制約があり、導入出来る環境が限られてしまう面があることも気になっていました。
今回購入したGALAX GF PGTX970-OC/4GD5 MINIはGeForce GTX 970搭載製品の中でも特にボードが小型であり、物理的制約を殆ど受けない辺りが魅力となっています。
外箱は比較的上位のビデオカード向けのものとしては標準的なサイズです。
一方で中身のボードはとてもPalit GeForce GTX960 SuperJetStreamよりも上位の製品とは思えないほどコンパクトなものです。
PCI Express補助電源コネクターは6Pin×2であり、さすがにクラス相応の消費電力が要求されることを表しています。
ベンチマークではクラスの違いを見せつける
先日掲載したPalit GeForce GTX960 SuperJetStreamのプレミアムレビューとほぼ同条件で、同じテストを実行してみました。スコアの比較等は、前述のPalit GeForce GTX960 SuperJetStream プレミアムレビューをご覧いただければと思います。
厳密には、組み込んだPCの起動SSDがCFD CSSD-S6T512NHG5QからSanDisk X300s 512GBに変更されていますので、描画性能への影響はないものと思いますが、システム全体の消費電力には影響するでしょう。よって、電力の話は参考程度にご覧下さい。
それでは、まずは以下4種類のベンチマークです。
・3DMark FireStrike(Futuremark)
・3DMark SkyDiver (Futuremark)
・FinalFantasy XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 (SQUARE ENIX)
・PHANTASY STAR ONLINE2 キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0 (SEGA)
3DMark FireStrike GeForce GTX 970
3DMark SkyDiver GeForce GTX 970
まず、3DMarkの2つのテストでは明らかにワンランク以上の違いを見せました。テスト実行中の描画を見ていても、私が使う限りではこれ以上の描画性能は必要ないのではと感じるほどのスムーズさです。
FinalFantasy XIVベンチマーク キャラクター編 GeForce GTX 970
こちらもPalit GeForce GTX960 SuperJetStreamのスコアの、実に1.5倍近い値を叩き出しています。この辺りの違いはワンランク以上のものを感じさせられます。
PHANTASY STAR ONLINE2 GeForce GTX 970
一方で意外な結果となったのがこちらで、Palit GeForce GTX960 SuperJetStreamを下回っています。比較的軽量なベンチマークでは頭打ちになってしまう部分があるのかもしれません。
さらに、私が重要視するCUDAによる動画エンコード・デコード支援の性能を見てみましょう。
こちらも僅かではあるのですが、Palit GeForce GTX960 SuperJetStreamの所要時間を超えてしまっています。誤差の範囲内といっても良い結果ではありますが、少なくともこの部分ではGeForce GTX 960に対するアドバンテージはありませんでした。
ワンランク以上の描画性能差はあるが、その代償も大きい
ここでGPU-Zでスペックを取得してみましょう。
GPU-Z GALAX GF PGTX970-OC/4GD5 MINI
GPU-Z Palit GeForce GTX960 SuperJetStream
MediaEspressoにおける性能がさほど伸びなかったのは、GPUクロック(厳密にはそれに比例するSPクロック)があまり上がっていないことが影響しているのかもしれません。GPUクロックが150MHz以上も違うわけですから、CUDAの演算能力にも少なからず影響はあるでしょう。
一応どちらもオーバークロックモデルではあるのですが、比較的大人しい上昇幅のGF PGTX970-OC/4GD5 MINIに対して、GeForce GTX960 SuperJetStreamはアグレッシブな上昇幅ですからね。
単純な描画性能という意味では、やはり製品のグレード差が素直に表れるのは間違いありませんが、GeForce GTX 970はその性能の代償として消費電力や発熱・騒音などがそれなりに大きくなります。テスト中のシステム全体の消費電力は386Wを記録して、先のテストで最大だったGV-N560SO-1GIに匹敵する程となってしまいました。アイドル時はMaxwellアーキテクチャらしく、100W前後(ほぼGeForce GTX 670並)に落ち着くのですが…。
実際に使ってみるとハイエンド系の製品らしさは随所に感じられるパフォーマンスは見せてくれましたが、私の用途であればGeForce GTX 960でも充分だったかなと考えてしまう部分もあります。アグレッシブなオーバークロックを施されたPalit GeForce GTX960 SuperJetStreamでも消費電力や発熱では優秀さが目立ちましたので、より幅広いユーザーにお勧め出来るのはむしろGeForce GTX 960の方かもしれません。
とはいえ、本当のハイエンドクラスと比べれば遙かに扱いやすい製品であることは間違いなく、GeForce GTX 960では僅かに描画性能が物足りないというのであれば、間違いなく最適な選択でしょう。
ちなみにWindows XP環境が必要な方は、正式にサポートされているGeForce GTX 960にしておく方が無難です。GeForce GTX 970も使う方法が無いわけではありませんが、正式にはサポート外となってしまいますので。
私自身はGF PGTX970-OC/4GD5 MINIを新メインPCに組み込み、Palit GeForce GTX960 SuperJetStreamをコンテンツ観賞用のPCに組み込むという方向で組み替えを考えています。いずれも良く出来た製品であることは間違いありませんので、用途に応じて好ましい方を使うべきでしょう。
Media Espressoについての追加テスト
CyberLink Media Espressoを利用した動画エンコードについて、アーキテクチャの世代が違うものについては新しいほど順当に成績が良くなるという結果が得られたのですが、同一世代のGeForce GTX 970とGeForce GTX 960とでは必ずしも描画性能差と一致しない結果が得られました。
そこでもう少しテストのバリエーションを追加してみました。今回はMedia Espresso 6.x系で最新リリースとなる、Media Espresso 6.7.4131_47226を利用しています。
本文中のテストではMPEG2-TS(約30分)を1280×720のH.264 MP4へと変換した際の所要時間を計測していたのですが、今回は以下の2つでテストを実施しました。
・Test 1:H.264同士の解像度変換
ファイル形式自体は同じH.264で、解像度を1920×1080から、1280×720へと変換するというものです。結果は次の通りとなりました。
GeForce GTX 970 03:21
GeForce GTX 960 03:25
これも誤差の範囲程度の違いではありますが、今度は僅かながらGeForce GTX 970が上に来ました。
また、この変換の間のビデオカードへの負荷を、GPU-Zでモニターしてみた結果が以下の通りとなります。
H.264変換中のGPU負荷率 GeForce GTX 970
H.264変換中のGPU負荷率 GeForce GTX 960
どちらのパターンでも、あまり大きな負荷がかかっていません。僅かに遅かったGeForce GTX 960ですが、負荷率がGeForce GTX 970以上に低い辺りも面白いところです。
Test2:MPEG2(フルHD)→DivX(VGA)の変換
続いては同じような形で、1920×1080のMPEG2ファイル(約24分)を、VGA解像度のDivX AVIに変換した際の記録です。
GTX 970 02:49
GTX 960 02:20
何とこちらは、誤差とはいえない範疇でGeForce GTX 960の方が速いという結果になりました。負荷率も見てみましょう。
MPEG2→DivX AVI変換 GeForce GTX 970
MPEG2→DivX AVI変換 GeForce GTX 960
GPU負荷率はほぼ同等ですが、GeForce GTX 960の方が大幅に高いクロック周波数で動いているという辺りがポイントなのかもしれません。
事前の予想では動作周波数の差が影響しているのではないかと考えていたのですが、どうもこの結果からはそれだけでは説明出来ない部分もあるといわざるを得ないようです。ひょっとするとGM204とGM206とで、CUDAによる動画デコード等の効率差が存在しているのかもしれません。
ずば抜けた3D描画性能を必要としないのであれば、GeForce GTX 960の方がより使い勝手の良い製品という印象を受けます。GeForce GTX 970は描画性能最優先のヘビーユーザーが使うべきということでしょうか。
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購入金額
37,778円
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購入日
2015年03月09日
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購入場所
BUY MORE秋葉原店
sorrowさん
2015/03/12
ベンチマークとビデオ変換が一致しないという、面白い結果ですね。マルチスレッドへの最適化でしょうか?MediaEspressoでエンコ中に、GPU-ZでGPUのコアやメモリの負荷率を見ると、何かヒントにならないでしょうか?
jive9821さん
2015/03/12
コメント有難うございます。
私にとっても少し意外な結果でしたので、時間が空きましたら追試をしてみたいと思っています。
強いて言えば、今回の条件ではMPEG2のデコードにのみCUDAが使われていますので、コア数をフルに使いきるほどではなく、単純に動作クロックの差の分だけGTX 960の方に有利に働いたのではないかと考えています。
追試ではMPEG2以外のファイルについてもテストしてみたいと思います。