超高額なケーブルの代名詞的にNBSやシルテックが猛威を奮っていた時代に比べると今は、ステルスやノードストの登場を皮切りに新興でも極めて優秀なハイエンドオーディオケーブルを作るメーカーがタケノコのように乱立しております。
国内メーカーも老舗を含め、頑張っている状況ですが結局の所、やり込んでいくと私はいくつかのメーカー製品に落ち着いてしまいます。
電源では
ヨルマデザインプライム
田口さんのアレグロ
あたりを中核に、味付けや周辺に
ステルスドリーム各種
BMIのOCEANIC
シュンヤタいろいろ
ノードストのヴァルハラ
色づけには
アルミネーターやカプトベータ、ブラックラベルの1,2あたりを加えてみることもございます。
インコネにも同様に上記メーカーの製品が殆どですが、特に重宝しているのはステルスのサクラとヨルマのプライム。この2本は絶対な安心感のある2本として複数本導入しております。
ただし、インコネに関しては本当にいろいろな意味で難しく、やはりどうしても
シンプルに、クオリティ感
(信号劣化が皆無であることが一つの理想)
ホログラフィックにならない音場感
(広がりかたは上下左右前後において重要な要素です。私にとっては)
心地よく包まれる粒子感
(やはり粒立ちが良いだけでは心地良くなく、そのカラーレーション、細やかさ、太さ、消え入りの速度もエレガンスで野性的な音を目指すならば重要要素です)
血湧き肉躍る鮮度感
(音楽は楽しくないと!)
異様ではない解像度感
(稀にCG的デジタル感たっぷりの音に出会いますが、不気味としか言いようがない・・・)
こんな要素が大枠で欲しくなって来るわけです。
これらは当然元来の機材が出している音以上になることは無いのですが、ただ、それを極めて巧妙に演出するためには必要不可欠な要素であると思っております。
勿論、華美になりすぎたが故に本来の音楽性を失ってしまうことは本末転倒。
ただし、そのことにすら気を付かせないほど、最近のハイエンドオーディオケーブルの進化はめざましいものがございます。
今回買ってみたこの製品は、上記の全てを兼ね備えているかというと決してそんなことはありません。
もとより、完璧なケーブルなど世の中には存在し得ないでしょうし、悩む楽しみを無残にも奪われてしまいますので、そんなケーブルは存在すらして欲しくないと思っております。
でも、正直な印象としては大枚はたいて買ったケーブルなのであれば、多少は頑張って欲しい!というのが買ってしまった身の親心。
どんなケーブルにも使いどころがある!そう信じて使いこなすのが、最近の私のオーディオの楽しみ方ですが、それにしてもこのケーブルは本当に苦労しました。
なによりもまず、信号入力側にロックが付いていないくせに非常に重い、さらには設計もカーボンコネクター故か、ややゆるめ。
そうすると多少動かしただけで、すっぽりと簡単に抜けちゃうわけなのです。
まずはそこをしっかりとケアすることから始まりますが、それ以上に大変なのは音。
繋いだ瞬間に誰でも解るほど「クッキリ・シャッキリ・カッチリ」します。
とはいえ、某メーカーのケーブルのように決してギスギスにはならず、所謂、情報量に関しては全くスポイルされた印象はございません。
ただ、相当に「芯が通った」印象になります。
これはこのあとヒマがあったら登録しようと思っているこのメーカーの電源ケーブルにも同様の傾向ですが、他社比較をした時により如実な違いを感じられるという意味合いでは、確実にこのインコネの方だと思います。
たとえばヨルマのプライムは、粒子感、鮮度感、開放的な音場感、しっかりした芯とその周囲に優しく伴ったエレガンス。
繋いだ瞬間に、そんな気持ちよさを、はっきりと感じられるのに対して、この製品は逆に
「うぉーなんか凄いのは解るけど、大丈夫なのかっ!?」とやや不安になる印象です。
ステルスのサクラに求めるのは超ワイドレンジでキラキラ広がる開放的粒子感。にも関わらず、しっかりぶれないダイナミックさを表現したいというニーズなのですが、それはそれ以上でもそれ以下でもなく、確実にサクラでないと絶対に出ない音だという確固たるキャラクタが確立されているが故だと思います。
そしてこのグリフォン。
このケーブルから感じるのはまずは
・高解像度
・ワイドレンジ
・所謂S/N性能が高い(高解像度と相まって異様と思える程に)
・曖昧さゼロ
・太い芯
です。
でも、それらが相まみえると、ズバリ「クオリティ感はメチャクチャ凄いが、硬くて、シャリシャリしてて、ゴリゴリしてる」という方向性になりがちです。
実際に、オカシナ機材をオカシナセッティングで、オカシナ電源ケーブルに繋ぐと見事にそうなります。
オーディオは見事なまでにバランスさせない限り成立し得ない、パズルゲームのようなものですので、当然ですが、システムの中に入れ込む製品は、その相性を熟考して採用を決定いたします。
本来目指すべきかも知れない最高の音楽再生といった観点、そして先ほどのバランスといった意味合いでは、このケーブルは私のシステムには「合わない」という結論に達するでしょう。
しかし、私がこれを導入してみたのは「積み上げた山が崩れることを恐れていては決してそれ以上の頂を目指すことは不可能」だからなのです。
まぁ、言い方を変えると「完成すると飽きるから、もうちょい毛色の違う機材を加えてみたい」というだけの話です。
その後、結果的には本当に久しぶりに我が家のメインシステムに組み込まれることになったのですが、その苦労は腰にクル!どころか肩にも、そして重い機材の入れ替えによって指先までもが関節痛になるほどのものでありました。
またその話は後日とするにして・・。
今はめでたく。
FM266とFM811の間に収まっております。
ココはヨルマのプライムが居た所だったのですが、最後の最後にココを試して(それほどプライムには全幅の信頼を持っていたのですが)結果、置き換わってしまいました。
その決定的な理由は
「しなやかで解像感、クオリティ、音の質、エレガンス・・何処をとっても非の打ち所がないプライムだが、唯一、野性味だけが物足りなかった」
一方、グリフォンは
「クオリティ感はプライムよりも上。質感は硬いがFMの音に混ざると得も言われぬ、しなり感と艶感を表現する。エレガンスに関しては明らかにプライムに劣るが、夏の音としてはアリ。特に古いモノLPジャズ再生は最高」
というものです。
おそらくはまたプライムに戻したくなるとは思っているのですが、今はこれを聴いて、心からメロメロになれる日々が、かなり楽しくある次第です。
オーディオは本当にお金も時間も体力もかかる遊びですが、刹那的な感性芸術という意味合いでは、確実にやりがいのある趣味の到達点のひとつである事を、再認識いたしました。
【製品】
http://www.stage3concepts.com/PRODUCTS_Gryphon_page.htm
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購入金額
0円
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購入日
2013年08月19日
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購入場所
北のラブリエさん
2013/08/19
特上の!
お富さん
2013/08/20
でも、美味しく食べきるためのセッティングを作るのに100年寿命が縮む思いをするかも知れませんね〜(出費も含めて!!!笑)
お富さん
2014/01/11
上手く調整すると本当に面白い、意外といっては何ですが飽きの来ない(新しい発見のある)ケーブルだと思います。
ロメオさん
2014/04/06
はじめまして、ロメオと申します。実は、私もこのケーブルのオーナーをやっておる者なのですが、お富さまの素晴らしいレビューから、このケーブルの価値を再認識した次第です。
GRYPHONについては、周波数レンジについてはPRIMEやトラペOPUSなどより狭めかなぁ、と思っていましたが、FM Acousticsの格調高いアンプをお使いの貴殿のレビューを拝読しまして、もう一度聴いてみねば、と思いました。改めて、素晴らしいレビューに感謝です。
蛇足ながら、私も物書きを楽しんでおりまして、失礼でなければ読んでやってください。
http://cablefan.net/archives/584
突然、失礼いたしました。それでは。
お富さん
2014/07/12
こんばんは。
せっかくコメントを頂戴していたのにも関わらず、お返事が遅くなりましたこと深謝申し上げます。
拙い、というか、ほぼ独白状態でしかないレビューをお読み頂けました事、御礼を申し上げます。
そして、大変に素晴らしいサイトを運営しておられますね!!
じっくりと拝読いたしました。
すべてのレビューが興味深く、時間を忘れて読みふけってしまいました。
なかなかケーブル関係のレビューでは、私が感じる内容とは異なる感想を持つ方が多い中、勝手ながら、とても共感を覚えた次第でございます。
是非これを御縁に今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
MESSAさん
2015/08/17
久々に凄いアナログを聴いて、お富さんの事務所で聴かせて頂いてノックアウトされたアナログの音を思い出しました。Stage3 グリフォンは友人からお借りしたのですが、家では使いこなせず。でも、Concentrationのパワーアンプをかりて、こう言う音の機器なら行けるかな?とも思いました。また、お時間合ったらアナログの音を聞かせて下さいね(^^)/
お富さん
2015/08/22
ご無沙汰しております!
アナログはオーディオソースの原点かつ王様ですので、いつかはたどり着きますよね。
私もSP、LP共に極め尽くしたと思っておりましたが、最近、Yujiさん方面でゴリゴリと作り上げられたとあるターンテーブルを聴いて、ん~、自分なんてまだまだであったか!と、嬉しい残念感を味わっております。
グリフォンは本当に使いこなすのに苦労しますね。
でもポテンシャルは相当高く、ここぞという使い方をすれば個性が際立ちすぎずしっかりとシステムに溶け込んでくれます。
アナログ、タイミングが合えばまたご一緒に楽しみましょう。