レビューメディア「ジグソー」

妥協でなく、容認。ヒトから刺激を受け、それを消化し、自らを進化させる。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。年月はヒトの好みに融通と丸さを加えます(一部年を経るにしたがって頑固さが増し、かたくなに他を排除していく場合もありますが(^^ゞ)。異ジャンルのアーティストでも認める。「お、あいつもやっとンな」みたいな。共演して新たな刺激を受ける、そして新しい世界が拓かれていく。結成35周年を迎えてなお、そんな新たな刺激を求めて異種格闘技を辞さない、そんなグループの最新作をご紹介します。

NANIWA EXPRESS(浪花エキスプレス、NANIWA EXP)。彼らは昨年(2012年)結成35周年を迎えた老舗フュージョンバンド。途中15年ほどの解散期間があるが、特筆すべきはメンバーチェンジの少なさ。もともとの構成はベーシスト清水興、ギタリスト岩見和彦、キーボーディスト中村建治にドラマー鎌田清で活動していたが、デビューに相前後してドラマーが鎌田から東原力哉にチェンジ、ほぼ同時にサックス+キーボードとして青柳誠が加わった(鎌田は1stアルバムに1曲のみ共演で参加)。そして2013年現在は青柳が「活動休止」ということでグループの活動に帯同しなくなっているが、相変わらずHPの記載には載っていて、グループ的には脱退扱いではない(事実2012年末のライヴでは青柳が加わった)。35年不動のメンツ。ただもともとクロ系好きでファンキィな清水、粘るチョーキングがブルージィな岩見にロックからジャズまで間口が広い中村、ジャズを基本としながら独自のビート感でリードする東原、自己の演奏活動としてはジャズに絞りながらもアイドルからロック系まで幅広いアレンジをも手がける青柳と「5人の最大公約数がフュージョンでした」という感じ。他の端正なクロスオーバー系フュージョンとも明確なメロディとリズムを持つジャパニーズフュージョンとも違う、カオスな味わいのフュージョン。

そんな彼らが35周年を記念したベスト

とともに出した「新作」。この作品では活動休止の青柳はまったく参加していない。一方3人のヴォーカリストを入れた3曲は彼らの新しい局面を魅せる。ヴォーカリストは青柳を差し置いて?wすでに「5人目のナニワ」との呼称も定着してきたGENKIこと人見元基とYammy、CHAKA。GENKIはいわずと知れたへヴィメタルバンドVOW WOW

の伝説のボーカリスト。Yammyはレゲエ系のSly&Robbieに曲を提供してグラミー賞ノミネート曲になったかと思えば、JAZZバンド「LO-4」のヴォーカリストを勤め、ほぼ同時にHIP HOPグループのヴォーカルも担当していたというクロスジャンルな女性ヴォーカリスト。CHAKAこと安則眞実はポップユニットPSY・Sの元メンバー。PSY・S以降はジャズシーンに活動の中心を移しているが、J-POPのサポート、アニメソング、ファンクなどその守備範囲はジャンルを問わない。

そんなヴォーカリストたちに刺激を受けながら成したのが本作。かつての「上方フュージョン」のみを期待して聞くとハズされる。実に多彩。

「1.2.3.」。少し、T-SQUAREっぽさも感じるさわやか・明確系のフュージョンだけど、リズム隊が違う。ベースのクロい粘りがグルーヴィだし、ドラムスは16ビートの刻みが違う。T-SQUAREならハイハットの16分音符+装飾の二つ打ちで攻めそうなところを、ライドシンバルの8分音符刻みを中心に、でもスネアの装飾音で16ビートを描き出している。「濃いT-SQUARE」??ww

「A Song For Jasmine」は松岡直也

ばりのピアノに、最近東原が多用するパーカッション、ティンバレスで彩られたラテンなボーカルチューン。...どっかで聴いたメロディだと思ったら、3rdアルバムの名曲「JASMIN」。元曲はSE系のシンセの音で緊迫感を出したイントロに、怪獣(東原)のドラムスがドドドドと割り込み、前のめり系のせわしないリズムでギターのメロディーが入るというスリリングな曲だったが、見事に色っぽいラテンチューンに変身。

「Along The Avenue」はギターのカッティングが気持ちエエ、ナニワらしい16ビートナンバー。ハイハットの遊びっつーか、揺れで単なる16ビートに終わらせない怪獣はともかくとして?wエレピのコロコロとした音が心地よい。

本作は2枚組で、あと1枚はBONUS CD。8曲ものライヴ音源が収められている。人見元基を入れたテイクは実に2011年3月12~13日収録。人見は避難所からライヴ会場にたどり着いたらしい(HPのDISCOGRAPHYに詳しい)。ここでの必聴は1stアルバムに収められていた大作、「Between the Sky & the Ground」。オルガンの音色をフィーチャーしたものが最近のアレンジだが、さらにカルロス菅野と熱帯JAZZ HORNSが加わり、熱くてゴージャスな仕上がり。途中のソロ回しもむしろ熱帯JAZZ HORNSの連中を中心に演られ、ちょっと違った様相。

歳を経て、自分たちの表現を求めるのでいっぱいいっぱいなのではなく、他のジャンルのアーティストからも刺激を受けて深化する。これは妥協ではなく、他者への容認。

いや「どんなんきてもワシらの音にしちゃるけんね」という彼らの自信と、それを裏付ける技量、そして築き上げてきた長い歴史がそう思わせるのかも知れませんが。
COOL DUDEと対を成す「静かな」ジャケット。
COOL DUDEと対を成す「静かな」ジャケット。
【収録曲】
1. 1.2.3.
2. Overwhelming
3. The Future Song (feat. GENKI)
4. 一匹狼
5. GABA
6. Ascension
7. A Song For Jasmine (feat. Yammy)
8. Along The Avenue
9. Trust In Me (feat. CHAKA)
10. Swingin' Cats
11. Quiet Devotion

<BONUS CD includes LIVE PERFORMANCE 2011>
1. SONIC BOOM *
2. SPOT #
3. SUMMER TIME # with GENKI
4. SITUATION # with GENKI
5. Between the Sky & the Ground + with CARLOS KANNO & 熱帯JAZZ HORNS
6. Brush Taps + with CARLOS KANNO & 熱帯JAZZ HORNS
7. Field Athletor + with CARLOS KANNO & 熱帯JAZZ HORNS
8. METEOR *
. * 2011/03/13 BLUES ALLEY JAPAN
. # 2011/03/12 BLUES ALLEY JAPAN
. + 2011/10/16 Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

(CDのバージョンではありませんが、オルガン音フィーチャーのライヴバージョン)「Between the Sky & the Ground」

  • 購入金額

    3,990円

  • 購入日

    2013年01月17日

  • 購入場所

    TOWER RECORDS

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • cybercatさん

    2013/06/03

    GENKIファン、キターーーーーーーーーーー(あれ?違ったっけ??)w
    でもいい感じの悟りの境地で?もはや本人たち、気持ちエエ音楽やりたいだけやねん、というのが感じられて素敵。
    他のフュージョンバンドがメンバーに若手を加えてリフレッシュし、はつらつと若々しい方向に行こうとする中、オッサンパワー炸裂なところがとてもイイ。
    アクがあってw
  • 北のラブリエさん

    2013/06/03

    年季のはいったメタラーです\(^o^)/
    とりあえず買いますか!
    ほぼほぼ外れないだろうことはいままでのレビューで確認済みだし( ̄▽ ̄)
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