その抽象的な作風はアフリカ美術のひとつの極みとも評価されている。
村の治安を維持する任務を受け持つ秘密結社が使用するものらしい。
擬せられた獣はハイエナだろうか。
お月様みたいなつるっとした人顔のホワイトマスクが多いファングの仮面中、動物が擬せられたものは珍しいと思う。
長く強調された顔と首。そして塗りつぶされた瞳。
石彫制作に傾倒していた1910年頃のモディリアーニが、アフリカ原始美術に影響を受けていたことはよく知られるところだが、彼の後の作風に最も影響を及ぼしたのは中でもファング族の仮面だったようである。
かつてクリスティーズのオークションでモディリアーニの石彫作品「頭部」が落札されたというニュースの記憶があったので、調べてみると2010年6月であった。
なんでもフランスの美術品オークション史上最高値という48億円というから驚きである。
近頃はかつてとは異なる意味においての生活のため、観光土産としてマスクが多く作られている。
古い新しいにかかわらず、それら模造品にはない何かが「本物」のマスクには宿っている。
アフリカの仮面を意識し始めた頃に手に入れたマスクは、正直言って呪が薄いと言うか念が足りないとでも言うのか、とにかく味わいが決定的に乏しい。
先日も店で形の良さそうなドゴンの仮面を手に取って眺めてみたら、ただの木彫りで直ぐお店の人に返してしまった。
彫り抜かれた孔の奥から、じっとこちらを見返してくる眼差しを感じる。
その眼差しが眺めた遠い遠い大地の物語りをついつい覗いて見たくなる。
バイヤーによって二束三文で買われ、本来あるべき場所でない空間に持ってこられた、仮面をはじめとするアフリカ各地の民芸品。
神秘的なレリーフの施された扉の代わりにアルミのサッシが嵌め込まれた穀物庫。
味わい深い木彫りの椅子を売った代わりに使われている折り畳み式のパイプ椅子。
美しい泥染めの布の代わりに身に纏ったナイキのシャツ。
ふとそんな、失われてゆく民俗の光景が頭をよぎる。
片棒を担いでいるのはもちろん私なのだが。
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購入金額
0円
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購入日
不明
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購入場所
退会したユーザーさん
2013/04/21
実際仮面をつけてみたりすると
なんか・・怖いでつねぃ(・・;;
諸星大二郎のマッドメンじゃありませぬが
アフリカだけじゃなくパプアニューギニアあたりの
仮面も味がありまつねぃ(・・b
タコシーさん
2013/04/21
中の人の顔が見えない不安からでしょうかね
モジリアニの女性は仮面から来ているのですか....
興味のある話題をありがとうございました。
vingt-et-unさん
2013/04/22
仮面に宿る力が私に憑依するみたいで、何だか妙な感じがしました。
グアムの原住民チャモロ族の民俗や仮面も楽しみです。
vingt-et-unさん
2013/04/22
人間が持ち得ない超自然的な力を、仮面を着けることによって齎されるという事は、森羅万象を聖なる神として生きていた証しなのだと思います。
科学や文明が劇的に進化した現代人にとって、風化して久しい古代の記憶が呼び起こされそうな、何やら妙な未知のサンスが、不安を掻き立てる要素なのかもしれませんね。
北のラブリエさん
2013/04/22
vingt-et-unさん
2013/04/22
おはようございます。
なんとうれしいコメント(^O^)/
ありがとうございます。
藝術品に込められた念と、この仮面に宿す呪の差でしょうか?
sukiyakiさん
2013/04/23
vingt-et-unさん
2013/04/25
ご覧頂きありがとうございます。
アフリカやアジアの民俗民藝に興味を持ってからしばらく経つのですが、知識の幅としてはまだまだ浅い世界なんです。
はじめたカメラと同じく、これから長く楽しめそうです。