創世記のヤハウェ神も同じく、「地の土くれから人を造り、彼の鼻に生命を吹きこまれた」。
太古の我が国にもかつて「天地が初めて發けし時・・・・・・國稚く浮きし脂の如くして、海月なす漂へる時」があったように、バンディアガラも同じく「地は混沌としていた」のであろうか。
ドゴン族は現在のマリ中央部、ニジェール川流域のバンディアガラの断崖などにおいて、複数の村を形成し居住する農耕民族でその数おおよそ25万人。
フランスの民族学者マルセル・グリオールによる研究で明らかにされた壮大な宇宙観(シリウス信仰)を持つ神話体系と厳格な宗教儀式や、極度に抽象化された独創的かつ直線的な仮面彫刻などで世界に知られる。
ブラックアフリカ諸民族中、もっともアフリカらしい宗教、習慣、美術を伝えている民族ともいえ、アフリカ彫刻といえばドゴンの彫刻を思い浮かべる人も多いようである。
こちらの彫刻はドゴン族の穀物庫の扉である。
大切なトウモロコシやイネなどの穀物を害虫や災害から守るための土蔵の保管庫の扉で、守護的な意味で蜥蜴、人物、乳房などのシンボリックな彫刻が施されている。
50cm×42cmと比較的小さいものであるが、生命感あふれ、神秘的で細密な世界が表現されている。
買い付けてこられた方に大凡の年代などを伺ってみたのだが、アフリカの彫刻が作られるひとつの特徴として、作者に帰属するという意識がないため、製作者や作られた年代は特定できないらしい。
現地の気候風土の厳しさを考えると数十年程度の物だと思われるとのことだった。
目も眩む太陽に曝され続け、砂混じりの風に洗われて丸みを帯び、深い艶を発する木の肌を撫でていると、遠い国の昔話を想像する。
やはり無垢の美が存在している。
純朴に削り出された、展覧会には無縁の原始的な美の凄味に圧倒される。
そしてその美しさは、喩えようのない神聖さを不思議なほど見事に醸成している。
扉の上部左右に鎮座している人型は、創造神アンマの子、ユルグとノンモなのであろうか。
下の画は、唯一手持ちのアフリカ美術に関する資料集『アフリカのかたち』に掲載されている、ドゴン族の穀物庫の写真である。意匠が酷似している。
ユルグとノンモに挟まるように、ドゴン族の喪明けの儀式ダマに登場するカナガ仮面を着けた男たちも彫られている。
ロレーヌ十字に似た頭頂部の飾りを含むと100cmを優に超える、こちらも是非いつの日か出会うことを願う魅力溢れる仮面である。
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購入金額
0円
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購入日
不明
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購入場所
sukiyakiさん
2013/04/23
いい写真ですね。
vingt-et-unさん
2013/04/26
念願だった大きなタイプのものではなかったのですが、ドゴンの神話を網羅したかのようなレリーフからは宇宙を感じます。