レビューメディア「ジグソー」

「フュージョン」という枠は彼らにはない

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。フュージョンと言い、クロスオーバーと言い、人々はジャンルの狭間にある音楽に名前をつけまた新たなジャンルとしてきました。でもアーティストはそんな枠を自ら架したりはしません。ジャンル分け不能なカオスな魅力を表現した作品をご紹介します。

NANIWA EXPRESS。上方フュージョンの雄として、1980年代中盤の一大フュージョンブームにおいて存在感を発揮していたバンド。端正なCASIOPEA

 

明解なT(HE)-SQUARE

 

に対して彼らはカオスw。ジャズ、ロック、ブルース、ソウル...各メンバーの好みと出身フィールドが微妙にずれていて、でもそれをぶつけ合って一つの音楽にしていた。

そんな彼らがフュージョンシーンから去るのは、そのジャンルのブームの終焉より早く1986年。デビュー後はわずか4年で活動を終えた。

 

その後各メンバーは、レコーディングや自己のグループ、制作側などで活動し、20年近く経った2003年、「NANIWA EXP」としてアルバムを出した。本作は翌年出された復活第2作。

この20年、という年月は彼らにどういう変化を及ぼしたのか...。1980年代の彼らを期待して聴くと外される。ジャズはより尖り、ロックはより熱く、ブルースはよりドロくさく、ファンクはより粘っこく深化した。それが一つのアルバムに、いや一つの曲に押し込められる。以前より遙かにカオス。遙かにこゆいw。

再結成したメンバーは、デビュー当時のオリジナルメンバー(ドラムス東原力哉、ベース清水興、ギター岩見和彦、サックスとキーボード青柳誠、キーボード中村建治)だったが、このアルバムではさらにメガトン級の起爆剤がゲストプレイヤーとして加わる。

Dennis Chambers。あのJohn ScofieldやBrecker Brothers、Santanaなどと共演したスーパードラマー。その片手ロールなどの超絶テクニック、切れ目ない音の弾幕といえる様な超高速連打、それでいて一つ一つの音は機関銃がはぜるようなパワー....エネルギーの塊のようなドラムス。彼が数曲で絡む。正ドラマー東原力哉に換えて、ではなくツインドラムとして。

Dennisがメンバーの誰より目立ってるww
Dennisがメンバーの誰より目立ってるww
 

そのツインドラムが炸裂するのがまず、「Come Dancing」。ルーズなツインドラム独特のグルーヴにファンキーでファニィなベース。パーカッシヴだけど太い音のギター...このノリは他のどんなフュージョンバンドも持っていないな。元曲(Jeff Beckの“Wired”に入っていたNarada Michael Waldenの曲)が元曲なので、ブルージィなギターソロのラインが、このバンドは「ジャズ」というより「ロック」の要素が色濃いことが判る。ラストの力哉とDennisのツインドラムのバスドラ「ドドドド」攻撃でノックアウト!...つか、これじゃあDancingって踊れませんがな(^^ゞ

Dennisが入ったもう一曲はさらにロック!「Whole Lotta Love」は、言うまでもなくZepの「胸いっぱいの愛を」。左チャンネルのギターと右チャンネルのベース!wでリフを刻み、ダーティなディストーションをかけたキーボードでメロをとる。ルーズなツインドラムが炸裂!途中のドラムソロは、Dennisが先に弾けるような爆裂千手観音ドラミングで切れ目なくドラムを鳴らしたかと思うと、怪獣力哉は口径の大きさが判る低く唸るドラムで応酬。Dennisとは違う意味で叩きまくり!

NANIWA王道路線としては「Still...」、ちょ~泣きのバラード!「哀愁のヨーロッパ」かと言うくらいベタベタのプレイだけど、それをやりきるのがカズボン!途中の青柳のピアノソロもロマンチック。日本人の琴線触れまくり。

他にも環境音楽に近いような実験的なジャズあり、ダンサブルなイロクなファンキィチューンありで、もうカオス。

ジャケットもか~な~り、カオス。
ジャケットもか~な~り、カオス。
 

一聴するだけで「これはフュージョンではない」。それを超えたところに彼らの音楽はある。ジャンル分けはリスナーや評論家、CDショップが勝手にやることで、「ワシらはやりたいようにやるもンね」。そんな感じでw

【収録曲】
1. DOLIO
2. Come Dancing(feat.Dennis Chambers)
3. X tribe(feat.B.Bandj)
4. Lakeside Breeze
5. Berkshire Stomp
6. Whole Lotta Love(feat.Dennis Chambers)
7. S.L.
8. Early Bird
9. Mandrill
10. Urban Barbarian
11. Lone Prospector
12. Still...

 

「Whole Lotta Love(feat.Dennis Chambers)」

更新: 2021/11/14
必聴度

フュージョンとは違う位置に彼らはいる

いや、それこそがフュージョン(融合)だ。

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    2004年頃

  • 購入場所

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (10)

  • cybercatさん

    2012/11/28

    北のラブリエさん、1980年代のフュージョン側から入ったら「彼らは変わった」「あれはフュージョンじゃない」だけど、こっち側から入ったらもはやなんでもありw

    そういえば彼ら、最近地元関西ではヘヴィメタバンドVOW WOW

    の元ボーカル人見元基とセッションしているみたいなので、さらにカオスですw
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