AMDのサーバー向けCPUブランドである「Opteron」の名を冠した8コアCPU。 Opteronとはいえ、ソケットはAM3+でコア自体はFX-8150等と同じ”zambezi”。
FXとの違いはクロックとTDP。定格2.4GHz /TurboCore:2.7GHz / MaxTurbo 3.5GH とかなりクロックは抑えられているが、その分TDP65Wという低発熱。一方キャッシュ周りはFX-8150と同等。
なので一般的な自作向けマザーでも動作するものがあるという…ああなんかデジャブだな。
そう、手元にあるXeon E3/E5に近い立ち位置だ。導入ハードルの高い2011環境のXeonE5-2620やバルクのみで入手性に難がありすぎたXeonE3-1260Lと比べると、廉価なAM3+マザーでも使用可能で、リテールパッケージ品が入手できるOpteron 3280は手を出しやすい存在。
2012年6月の発売当時、サーバー向けCPUでありながら自作PC向け販促キャンペーンが行われ、メーカーが正式にOpteron3280を動作リストに載せているマザーに加えてキャンペーンにあわせて代理店が独自に動作確認をしたマザーもある。
家にあるマザー「ASRock 890GM Pro3 R2.0」もASRockの動作リストにはOpteronの名前がないが、キャンペーン当時に動作確認が行われていたので大丈夫だろう。
しかしFX-8150と同じく第一世代FXなので、今更感もある。しかもこの890GXマザーを搭載しているのは家族用のPCなので買ったところで自分はあまり使えない。
何か買うきっかけが欲しい。SofmapでAMDCPU買うと愛真多心と松風碧と美星藍が描かれたクリアファイルか。欲しいな。どうしょうかな。とりあえず店員さんにクリアファイルまだあるか聞いてみよう。
「AMDのキャラクタークリアファイルありますか?」
「はい、今なら前の絵柄の2枚もお付けできますよ。」
「Opteronください!!」(即答)
Opteron風呂敷までついてきた。これ例の予約キャンペーンのやつじゃねえか。どっからもってきた。まあこれでルンルンしてたら数日差で3000円も安い値段になるゲリラセールが発生するという絶望があった訳だが、それは見なかった事にしておこう。
さすがに上位FXのような缶ではないが、専用のパッケージデザインと「Outstanding Performance-per-watt」のキャッチが頼もしい。
リテールなのでロゴシールもしっかり付属。
リテールクーラーはシンプルなタイプでAPUと同等品と思われる。TDP通りの発熱ならコレで十分だろう。でもAMDロゴくらい欲しかったなあ。但し今回はリテールクーラー未使用。
組み込むPCはWindows Me時代のミニタワーVAIO PCV-J15を改造してATX電源化したゲテモノで、マザーは先述の通りASRock 890GM Pro3 R2.0。CPUは現在PhenomII X3 700eなのでそれとの使用感比較になる。
Duron 800MHz→Athron64 3000+→PhenomII X3 700e→Opteron 3280
と、順調にAMDルートを達成。
上記水冷ユニットのレビューで内部構造を紹介しているが、CPU周囲のスペースが無いので簡易水冷で無理やり冷却しているというムチャしやがって構成。簡易水冷自体の冷却力は高いのだが、ラジエータが吸気側となるのであまり発熱の大きいCPUにするとケース内部がホカホカになってしまう。はっきりいって冷却力に余裕があるとは言えない構成だ。
とりあえず大前提として正しくCPUが認識され、安定して動作してくれた。何故かCPU-ZのロゴはFXになっているが。PhenomIIでは若干不安定だったDDR3 1600動作が安定してくれたのも収穫。
さて実際動かしてみると、簡易水冷の冷却力もあるのだろうが、Prime95を30分回してもアイドル+6度程度(今回は39度)に落ち着き、ラジエーターのファン回転数も低く抑えられるので静か。とにかく今回の環境ではOpteron3280とPhenomII 700eの発熱は大差無い。
同じTDP65Wでの換装とはいえトリプルコアからヘキサコア、それもFX系のイメージがあったのでビクビクしていたのだが、TDP65Wという数値は誇大広告という訳ではないようだ。
また消費電力もPhenomII X3 700e比でアイドルは4W程度低下。負荷時は+18W程度だが、3コア→8コアとスレッド数が倍以上という事を考えれば全然低い。PC全体の数値…ましてや水冷ユニットやブルーレイドライブも搭載した構成でこの消費電力なら小型電源ユニットやACアダプタでの動作も狙える。
Bull系はオーバークロックすると消費電力と発熱がかなり上昇するというのがネット上の情報からも伺えるのだが、逆にここまでクロックが下がれば発熱も相応に低下しているのでかなり扱いやすい。消費電力・発熱共にピーキーなイメージのあったFX-8150に対して、小型PCでの運用も十分射程範囲だ。それだけにAM3+のMicroATXマザーの選択肢が少ないという矛盾が悲しい。
WEIのプロセッサスコアは7.4。ちなみにXeon E3-1260LやCore i5 2500Tと同じ値。
さすがにFX-8150に対して大幅にクロックを下げているのでベンチマークは振るわない…というか890GX+HD5450のハイブリッドクロスファイアというロマン構成なので3D系のベンチが正しく動かない!
一方CPUのベンチマークはCINEベンチは今まで使った事無くて他のCPUのスコアデータ持ってないし、CrystalMark2004R3は4スレッドまでの動作だし…何より自分自身のPCじゃないのでなかなかデータとれないんですよね。先にデータとってから組み込めばよかったか?
希望があればベンチマークとって載せますけど、今更感もあるのでひとまず保留で。
しかし実際の体感速度で言えば(元のCPUが700eというのもあり)かなり上昇している。低クロックで確かに瞬発力は無いのだが物理8コアを生かして細かい引っかかりがかなり抑えられ、言い方は変だが「ぬるぬる動く」。
また低クロック低クロックといっても、実際の動作ではTurboBoostで動く事が大半で、実質2.7GHzのCPUと思ってもいいかもしれない。
エンコードやゲーム、そしてベンチのような、重負荷がかかりまくる用途ではクロックの低さが仇となるのは確かだが、オフィスやタブブラウザをガンガン使ったり、更に常駐ソフトが色々動くという細かい負荷が積み重なっていくような環境ならその体感速度は決して侮れない。
手持ちの低クロックXeon E3-1260L&E5-2620と立ち居地・性能共に近い性格を持ったCPUと言えそうだ。FX-8150の「高クロックによる瞬発力」と引き換えに「低発熱・低消費による扱いやすさ」を得ているので、わざわざ自作向けにリテールで発売した意味が判った気がする。
私自身は「12800円で買った」「低クロックマルチスレッド大好き」なので大満足なのだが、用途を選ぶ性能なのは間違いない。そして初出時の価格では割高感を感じずには居られないし、更にマザーボードの選択肢が少ないという点がせっかくの扱いやすさをスポイルしてしまっている。
しかし旧式化した今なら安く買える(※)のだから、弱点の一つだったコストパフォーマンスはむしろ高い。同じく低価格化したFX-8150のように電源・発熱周りを気にする必要もないので動作確認がとれているAM3+マザーが余っているなら贅沢なサブPCとしても面白いだろう。
※これを書いた当時はSofmap通販でも12800円で入手ができたのだが、vProレビューでヒイヒイしている間に通販在庫終了。2013年6月現在、秋葉原ならリユース館等でまだ店頭販売されている。
何よりこのWindows Me時代の小さなVAIOに、誰が8コアのOpteron突っ込んでると思うだろうか?この肩書きのギャップがたまらない。趣味なのだから楽しんでナンボだ。
実際毎日使用している家族も「なんか前より動きがスムーズになった」と言っているのだからそれでいい。
最後に一つ面白いグラフを。私が普段インテル系CPUのレビューに使用しているフォトショップのぼかしフィルタ速度を今回のOpteronでも計測してみたものだ。
33秒とこのグラフの中ではブービーになってしまっているが、コイツラは軒並み20000円オーバー、30000円オーバーのものもあるのだから、実売価格で言えば一回り上のラインナップだ。
そしてこのフィルタ速度、クロックへの依存が結構大きい傾向があるので、もしこれが高クロックのFX-8150や8350だったら…また、マルチスレッド等の対応が強化された現行のフォトショップなら…FXシリーズはなかなか面白い結果を出してくれるかもしれない。
-
購入金額
12,800円
-
購入日
2013年04月13日
-
購入場所
Sofmap リユース館
ふっけんさん
2013/06/05
kazgbさん
2013/06/06
OPTERONが良い感じの値段で揃っていたので、こっち買ったほうが有意義じゃない?っとか思ってました・・・
オワテない!
はにゃさん
2013/06/06
AM3+マザーを買ってなくてよかったと胸をなで下ろしたw
Vossさん
2013/06/06
でも、やっぱ板の選択肢が悲しいほど少ないよね。
下小川さん
2013/06/06
後継で第二世代FXのコアを使ったOpteron 3380ってのがあるらしいけど、いつになるのか、というかリテール販売されるのかさえ謎だったのと、いろんな意味で話題になった第一世代FXを手元においておくのもいいかなああなんて。
でもほんと、MicroATXマザーが無いなあ…
http://news.mynavi.jp/news/2013/05/31/215/index.html
今更(GIGABYTEのGA-78LMT-USB3というのが登場したけど、やはりコイツも760G+SB710で旧型PCのリプレース用がターゲットに見えるし。
とっぷりんさん
2013/06/06
いつになるかなぁ…。
下小川さん
2013/06/07
こっちは簡易NASのPogoplugなんですが、以前みたいな超低消費PCを流用したものにしなおそうか悩み中です。