レビューメディア「ジグソー」

涙が出るほど懐かしい...

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。聴いたことがないのになぜか懐かしい。そんなキモチになる音楽が世の中にはあります。そんなココロの扉を開くオトを紡ぐピアノの詩人をご紹介します。

村松健。何度かご紹介している

ピアニスト。分類不能かもしれない。フュージョン、ニューエイジ、ヒーリング、クラシック、環境音楽....そのいずれの棚にあるかCDショップでイチバン探しづらいアーティストでもある。初期は深いリバーブとダンパーを踏んだ伸びる音、バンド形態をはじめとして他楽器との共演が多かった。しかし後期になればなるほど音は研ぎ澄まされ、生っぽく迫る音になった。

本作はそんな彼のベスト盤、といってもただの寄せ集めではなくほとんど新録。11曲中7曲が録り直しで、再録音は基本ピアノ1本。カザルスホールでのライヴや自宅スタジオでの録音、喜多方の大和川酒造地方風土館での録音が新録。昔のオリジナルヴァージョンはリバーブやイコライジングの衣をかぶっていたが、今回のものはザクっと心に切り込んでくる..でもスっと溶けこむ、不思議な近さ。特に自宅スタジオの2曲がイイ。

その自宅録音の「恋をなくした日に」。スタッカート気味に入れられる、あまり残響の多くない左手の和音。コロコロとどこか懐かしい旋律を聴かせる右手。それがサビになると一気にダンパーが踏まれ響く音になる。そのときのサスティーンが心に入ってくる。

「かえりみち」は前述「恋をなくした日に」と同じく自宅スタジオでの録音だが、やはり過剰な残響はなく、オンで録られている。左手のスタッカート気味の今度はアルペジオが、彼独特のどこか懐かしい日本的旋律を支えている。

「大きなとちの木~11月」。これも新録だが、前述の2曲ほどデッドで近い音ではなく、反響がいい具合についている。彼の少し童謡チックでロマンチックなメロディが沁みる。それがアドリブに行くと崩してジャジィに。音符も粘りが多く、採譜不可能w
ほし・つき・ぴあのと読める画
ほし・つき・ぴあのと読める画
最近活動拠点が奄美に移り、三線とピアノのコラボと言った方面がメインになっている彼。そんな彼がまだピアノという表現力の大きい楽器一本で音を届けていた時代の名作です。

【収録曲】
1. 出逢いと別れ
2. 恋をなくした日に
3. かえりみち
4. パープル・ストリーム
5. ムーンシャドウ~オン・ザ・ビーチ
6. 星が生まれる丘
7. キャンドルパワー
8. 封じこめられた光と影
9. 月とお話し
10. 大きなとちの木~11月
11. 生まれ変っても

「恋をなくした日に」(このアルバムのヴァージョンではありません)

  • 購入金額

    2,800円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

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