渡辺香津美、フュージョンの黎明期もまだクロスオーバーと呼ばれていた頃から活躍するギタリスト。1970年代半ばより活躍する彼にとっては初期の作品となるが、彼の一般への露出は1980年のこのアルバムから始まったと言えるだろう(通は前年のKYLYNですでに注目していたハズだが)。
“TO CHI KA”、印象的な黄色のジャケット。黄色いジャケットに黄色い帽子の香津美が微笑む裏には黄色っぽい毛色のイヌと、黄色いレスポールジュニア。この黄色いアルバムは1980年日本を席巻した。それはあるCMに使われたから..
出だし「LIQUID FINGERS」。難しい喰い喰いのチョッパーベースとタイトなドラムスはMarcus MillerとSteve Jordanのコンビ。香津美もノリノリで速弾きあり~の、ハーモニクス奏法あり~ので攻めてくるが、名サポートキーボーディストのKenny Kirklandのフォローを得てギターが歌う歌う。
タイトル曲「TO CHI KA」は意外に静かな曲でヴィブラフォーンのMike Mainieriとデュオのアコギの曲。音が対話しているようだ。
「COKUMO ISLAND」は玄人衆の評価が高い曲で、なんと言ってもテナーサックスのMichael Brecker!このアルバムのもう一つのリズムセットで演奏されるこの曲のベーシストはTony Levin。フレットレスベースのイントロから曲中に入るとドラムスのPeter Erskineのトップシンバルが曲をドライブする。香津美は他曲に比べると良く歪んだ音で弾きまくり!それに負けてないのがMichael!曲が半分も終わったあたりでやっと出てくるのだが、ドラムスがバックビートなしの状態から静かにはじまり徐々にバスドラ二つ打ちでノって来てライドシンバル4つ打ちのロックスタイルになる頃にはスケールアウトバリバリのノリノリ。晩年はどちらかというと教科書のように整ったうまさを魅せていた彼だが、このころは壊れてますw。この3分以上にわたるソロはMichael Breckerのベストに挙げる人も多い名演だ。
そして...「UNICORN」..出世作であり、1980年にはこの曲を街で聞かない日はなかった。リズムセクションは再びMarcus Miller+Steve Jordanの躍動感あふれるセットに戻る。様々な奏法を駆使してきらびやかなソロ部分と16分音符喰い2連符というスリリングなAメロ部分。それをささえるリズムも16部音符ウラウラの難しいキメをバチッと決める。Mike MainieriのコロンとしたヴィブラフォーンのバックではMarcus MillerとSteve Jordanがリズムのキメでビートを造るという難しいことをやってる。
このスリリングな「UNICORN」があるブランドのイメージソングだった。それは日立のオーディオブランド、Lo-D。平面スピーカーなどの最先端の商品があるかと思えばオーソドックスに物量を投入して仕上げた高級パワーアンプなどもあり、音好きを喜ばせることにたけたブランドだった。そのLo-Dのイメージソングとして焼き付けられたこの曲のメロディーは長く心に残っており、Lo-Dの商品を見ると反射的に黄色を思い出したほどだ。
一風変わった(ヒトと違う)独自技術で存在感を示していたLo-Dブランドも今は、ない。日立という大企業の中でコンシューマー部門というのは大きくはない。本業に注力する中では「切られる」部門や製品群もあるだろう。でもその中には他にはないきらめきを持っていた製品もある。そんな製品を覚えておきたい。
サヨナラ、Lo-D、そしてサヨナラ、Wooo...
【収録曲】
1. LIQUID FINGERS
2. BLACK CANAL
3. TO CHI KA
4. COKUMO ISLAND
5. UNICORN
6. DON'T BE SILLY
7. SAYONARA
8. ANHATTAN FLU DANCE
渡辺香津美Official Web
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購入金額
2,800円
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購入日
1988年頃
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購入場所
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