所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。レコーディングで活躍する職人の自己主張、ソロアルバムワーク。プレイが良いモノあり、新たな一面を見つけるモノあり、楽しめる隠れた名盤も多いのですが、逆に本人もまだ自分の良さを判っておらず様々なトライアルをしている迷盤もあります。今回はそんな名・迷相半ばするアルバムをご紹介します。

Paul Jackson, Jr.（PJ）、西海岸の凄腕セッションギタリスト。主活躍フィールドはフュージョン～ブラック系の音楽だが、引く手あまたのセッションギタリストのためポップスからロック、R&Bからソウルまで幅広くクレジットに名を残しているのが見つかるはずだ。

このアルバムはそんな彼のファーストソロ、1988年の作品。時代背景的に打ち込み全盛だったので、このアルバムも基本打ち込みバック＋PJのプレイ＋ゲストソリスト＋ゲストヴォーカルの形態（ヴォーカルトラックは全曲ではないが）。

1曲目の「I Came To Play」、当時流行のオーケストラヒットのサンプリングリズムと"I Came To Play"というヴォイスのサンプリングスクラッチ。曲もそれ風のちょっとクロいダンスチューンで、ところどころ9小節区切りでさらに2/4の小節追加などリズム的に凝っていてインパクトある曲。でもPJのプレイが負けていないのがいいんだよね。あまりつぶしてない音でピッキングまで判るプレイが続き、このトリッキーな曲を上手くノセている。この曲のソリストはｷﾀｰｰｰｰｰｰｰ(゜∀゜）--------!!のGeorge Dukeのぶっ壊れピアノ！この機械丸出しの縦ノリの曲でこのプレイか～～ｗそのバックで今度は一転サイドギターに徹するPJのキレキレカッティング。フェイドアウト前の二人の掛け合いはPJもGeorgeに触発されたのかスケールアウトプレイで応酬。すごいス。

続く「My Love's For Real」は女性コーラスが入り、Gerald AlbrightのサックスとユニゾンでプレイするPJのコンプギターがまさに初期のTHE SQUAREか、というような曲調。ただソロは二人とも黒々してるのでTHE SQUAREとは違いが歴然。PJはここでお得意のコードカッティングソロを披露。

5曲目「Lost and Never Found」は一転してブラコンAORで、O'Bryan Burnetteが甘い歌声を聞かせる。バックではPJが「あの」ハーフミュートカッティングとオブリで盛り上げる。他人のアルバムでやってる通り！ソロは珍しくかなりオーバードライブした音色で、ソロ切れ終わりのロングトーン～ネックをスライドアップ→ダウンの展開がさすが。

ラス前の「Straight From The Heart」はリズムが入ると打ち込みなのだけれど、イントロはLiving ColourのVernon Reidかっつうほど金属的に歪んだギターの弾きまくり。リズムが入ったあともソウルっぽいかけ声が入る中、PJがディストーションかけまくりで弾き倒す。ライトハンドもばりばり。サイドではPJのワウカッティングギターがわぉわぉと。

ラストの「Great Is Thy Faithfulness」はアコギで、ベースのAbraham Laborielが絡み、バックがストリングスだけのちょっと賛美歌っちゅうかゴスペルっぽいと言うかの静かな曲。

PJの良さはやはり、カッティングと少しクロめの展開をするコンプトーンのソロ。本人もそれは判ってきたみたいで、今後のソロはそういった方面に収束して行ってるだけど、このアルバムは「俺こんなのもできるんだぜ」みたいな感じで曲間の落差がありすぎてちょっち↓。1曲1曲は悪くないんだけどね。

【収録曲】
1. I Came To Play
2. My Love's For Real
3. Morning Joy
4. Personal Touch
5. Lost and Never Found
6. To The Curb
7. Let's Wait Awhile
8. Straight From The Heart
9. Great Is Thy Faithfulness

Paul Jackson, Jr. Website

「I Came To Play」