所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。実力、時代、志向、プロデュース、運、すべてがあるポイントで上手くかみ合わなければ残れない音楽業界ですが、実力がありながら忘れられてしまったアーティストは数多くいます。そんなアーティストの残した「名盤になりそこねた名演」を掘り起こしてご紹介していきます。
LIA。彼女との出逢いはしっかりと覚えている。1988年、渋谷のタワーレコードで試聴機にかかっていた。正直言って最初の「True Obsession」を聴いたときには、「こんなもんネ」と言う感じで。ちまたにあまた溢れる打ち込みバックに、オーケストラヒットなどのサンプリング音がかぶさり、ダンサブルに仕上がっているファンキィポップ以上には思わなかった。ただ歌は「表情が豊かでシャウト気味に歌っても下品にならず上手いな」「低いところも結構出てるし、高音も良く伸びる」と感じ、ディスクを替えるのではなく次の曲に送ってみる気に。
送って、送って、4曲目、「Without You」。これがドはまり。ほぼこれ一曲のために買ったと言っていいくらい。男性シンガーとデュエットで歌うバラード。良く伸びる肺活量多そうなボーカル。クライマックスではシャウトもあるが、それでも伸びる。これに泣き泣きのサックスがほとんどエロいくらいに絡みつき、打ち込みのバックをものともせず、情感たっぷりの楽曲に仕上げている。ほぼレジ直行だったのを思い出す。
でも輸入盤だったためか、まったくライナーノーツが不備満載で、プロデューサーこそジャケット裏に曲別のクレジットがあるが、「LIAがなにものなにのか」「参加ミュージシャンは誰なのか」など曲情報関係は全く記載なし(後者に関しては頭の3曲のみ載ってるが、他はなし)。もちろん歌詞カードなし。当時はインターネットなんぞで調べるなんて誰も思わない頃で、それ以上の情報を得ることができなかった。
プロデュースもその「ファンキィポップ」路線がメインだったようで、掃いて捨てるほどいる同様路線のシンガーからぬきんでることかなわず、特に話題にもならず日本からは消えていった。
今改めてインターネットで調べてみても、あまり情報がない。引っかかってくるのは"LIA"というのは"Lia Grant"というのが本名(もしくは芸名フルネーム)っぽいというのと、やはりあまり作品は残していないということ、シングルカットされた(らしい)1曲目の「True Obsession」と5曲目の「Tell Me It's Not Too Late」のクリップなどが一部、YouTubeで残っているくらい。
彼女の魅力は、強い低音と肺活量溢れる中高域のロングトーンで、バラードやゴスペルの方がヨカッタと思う。前述の「Without You」や、7曲目「Constantly」のようなバラードで押すか、ダンサブルなアップテンポチューンで行くなら、打ち込み&オケヒットながらクロっぽくゴスペル調のロングトーンシャウトが冴えるラストの「More Than Looks」の方が、全然彼女の良さが出てると思うのだが...
キャッチィなダンスポップで売り出して、その後バラードやゴスペル調の曲で違いを出そうとしたのかもしれないが、そんなありきたりのアプローチ、当たるはずもなく....
埋もれるには惜しいアーティストだと思いますが、プロデュースミスだと思われます。惜しい!
【収録曲】
1. True Obsession
2. Too Many Nights Without You
3. Got To Love
4. Without You
5. Tell Me It's Not Too Late
6. Soft Touch
7. Constantly
8. More Than Looks
「Without You」
特に「Without You」は必聴
男性ヴォーカリストと張れるほど力強い低音から、伸びる高音まで表情豊かな歌唱が聴ける。
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購入金額
1,800円
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購入日
1988年頃
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購入場所
タワーレコード
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