レビューメディア「ジグソー」

ちょ~ぜつタイトな神保のドラムスがキレッキレ。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。インストバンドにおけるドラマーの役割は重要です。特にテクニカル系のバンドでは楽曲の方向性を決定づける場合もあります。デビュー3作目でドラマーチェンジを迎えた1980年代の「ジャパニーズフォージョンシーン」を代表するバンドの作品をご紹介します。

 

CASIOPEA。今年(2019年)でデビュー40周年を迎える老舗フュージョンバンド。一時期活動休止していた時期があったが、現在の「CASIOPEA 3rd」名義も加えると、30枚以上のオリジナルアルバムをリリースしている。現在の名称の「3rd」は活動休止明けの第三期であることを明示したモノだが、彼らの黄金期といわれているのは、いわゆる「1st」の時期。

 

大学時代に、ギタリストでリーダーの野呂一生と、ベーシストの櫻井哲夫が組んだバンドを母体として、その後キーボーディストに向谷実を迎えてこのバンドの核が出来る。ドラマーは初期は、鈴木'リカ'徹がPRISM

と(おそらく)掛け持ちして参加していたが、デビュー時点では佐々木隆が正式メンバーであった。

 

しかし、佐々木が2ndアルバムの“SUPER FLIGHT”のリリース後脱退すると、櫻井が同じ大学で共演したこともある神保彰を引っ張り、ここに野呂・櫻井・向谷・神保の黄金期メンバーが揃うことになる。

 

神保のレコードデビューはライヴ盤“THUNDER LIVE”で、ここでの一発録りならではの才気走ったプレイも衝撃的だったが、続く4枚目のアルバム、オリジナルアルバムとしては3枚目の本作“MAKE UP CITY”が、一転してとてもCOOLで都会的だったのも意外だった。

 

ここでの神保のプレイは、温度感の低い、鋭いプレイ。年代的音色傾向としてもこの時期はデッドな音の造りが流行っていた(というかライヴなドラム音は機材的に録るのが難しかった)ため、余韻も少なめで♪ドン・チャ・ドン・チャ♪というより♪ドッ ・チャ ・ドッ ・チャ ♪というタイトな音色。

 

タイトということは、リズムのずれがある場合、如実にわかってしまうのだが、神保のプレイはメトロノームのように正確で、かつテクニカル。このアルバムの神保のプレイを聴いたSteve Gaddが、そのドラミングを絶賛したというのも頷ける空間の切り取り方で、まさにズバッと鋭い日本刀の切れ味。初スタジオレコーディングに賭ける神保の気合いが尋常でない。

 

まず出始めは「Gypsy Wind」。ドラマチックで少しエキゾチックなイントロに続いて、2拍4拍の定位置にスネアが入らないトリッキーな神保のプレイがスリリングに曲を盛り上げる。向谷のソロの間中、バックにはあまりコード(和音)感がなく、タイトなベースとドラムスの絡むキメフレーズが続く。ここでのシンセソロの音色は、後に「向谷ブラス」などと言われるようになるほど彼らの音色を支配したデジタルできらびやかな初期のデジタルシンセ(ヤマハDXシリーズ)を使い始める前で、アナログシンセの暖かさが、超COOLなリズム隊とのうまく対比をなしている。

 

続く「Eyes Of Mind」は、次のアルバムでアメリカフュージョンシーンの大御所Harvey Masonのプロデュース・再録

によって、よりポップに生まれ変わったが(そのときは「EYES OF THE MIND」と改題)、こちらの方がスリリングで切れ味鋭い。イントロ後半のミュート気味のベースとバスドラのキレ、アウトロのユニゾンの部分のドラムのマシンのような正確さはさすがだ。

 

タイトル曲の「Make Up City」は意外にも地味?野呂のコード弾きによるメロディーと、向谷の奏でるFender Rhodesが素晴らしくCOOL。ここでのリズム隊は他のテクニカル指向の曲ほど魅せ場はないが、ラストテーマに戻る直前のギターのアドリブのバックの演奏はタイトさがスバラシイ。

 

CASIOPEAに関しては、このオリジナルアルバムから始まる黄金期で頂点を極めた後、フロント隊とリズム隊の分裂(第二期)、「司会屋」実の異名を取った、ライヴでのトークの中心向谷の脱退(第三期)等があり、最近にファンとなった人たちは現在もライヴで演奏され続ける“MINT JAMS”

以降の曲しか知らない場合も多いけれど、黄金期の始まりと言える「神保起点」はこのオリジナルアルバムからで、そういう意味では聴き逃してはいけない作品。

 

制作的にも、2ndまではBrecker兄弟や、Jake H.Concepcion、深町純など外部ミュージシャンの力を借りていた彼らが、自分たちのみで創り上げた最初のアルバムでもある。そういう意味では一般的な知名度はイマイチながら、若い彼らの力がみなぎっている「隠れた名盤」です。

ちょっと一昔前のSF小説の挿絵風のジャケットが時代を感じさせる。
ちょっと、ひと昔前のSF小説の挿絵風のジャケットが時代を感じさせる。

 

【収録曲】

1. Gypsy Wind
2. Eyes Of Mind
3. Reflections Of You
4. Ripple Dance
5. Life Game
6. Make Up City
7. Pastel Sea
8. Twinkle Wing

 

「Make Up City」

更新: 2019/04/22
必聴度

今も演奏され続けられている超メジャー曲は少ないが...

ウルトラタイトな乾いたリズムは、彼らの若い才能にあふれている

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    1987年頃

  • 購入場所

14人がこのレビューをCOOLしました!

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