レビューメディア「ジグソー」

デビューアルバムが今も続く路線の礎となっているのは、メンバー不変の彼らならでは。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。変わらないことの強さ。バンド/グループというものは普通複数のメンバーで構成されます。そのため、それぞれの考え方の違いや、嗜好の差、周辺環境などによって、長期間同一のメンバーで活動し続けるのはとても難易度が高いことです。そんな中、デビュー以来不動のメンバーで活動を続けるバンドのデビュー作をご紹介します。

 

NANIWA EXPRESS。ナニワ・エキスプレス、浪花エキスプレス、NANIWA EXPとも称する、ジャパニーズフュージョンの老舗バンド。個人(ソロ)は別として、同時期から今でも活動を継続するフュージョンバンドは、CASIOPEA(3rd)とT(HE)-SQUARE、PRISMくらいになってしまったが、それらがメンバーチェンジをしつつ、なんとか命脈を保っているのに対して、NANIWAは、今までの歴史の中では、活動休止期間と一時期1名離脱して残り4名で活動していた時期もあるものの、メジャーデビュー時の5人が変わらず現在もメンツであり続ける希有なバンド。

 

その付き合いはデビュー前年の1981年から続く(バンド自体の結成は1977年)。

 

リーダーのベーシスト清水興と、ギタリストでメインコンポーザーの岩見和彦がオリジナルメンバーだが、翌年に中村建治(キーボード)が参加し、デビュー前年にサックス&エレピの青柳誠と、ドラマー東原力哉が加わる。以降、4年間で5枚のアルバムをリリースしたのち、一時解散。散発的な限定再結成を挟んで、約15年後にデビュー時の5人で再始動。途中8年ほど青柳が離脱していたが、替わりのメンバーを入れることなく4人で活動を継続し、2014年から再び5人で活動し現在に至る。

※5人体制に戻ったときの記念ライヴ↓

 

一番若い青柳ですら今年還暦という状態で、40年以上このメンツで活動していると、もはや運命共同体?

 

それもこれもこのデビューアルバム“NO FUSE”から始まった。

 

BELIEVIN’」。NANIWAを代表する名曲。ベースとドラムスの刻む、複雑だけどグルーヴィでファンキィなリズムに乗せて、覚えやすいメロディが奏でられる、カズボン(岩見)のソングライティング能力が発揮された曲。ソロはサックス⇒ギターの順。サキソフォニストの青柳は、一時期自分にとってのサックスの限界を感じたということで、この部分がエレピソロに置き換えられたライヴテイクも多いが、やっぱりサックスの方が「しっくり」くるな。

 

メロウな「BLUE WILLOW」。BLUE WILLOW=青い柳...つまりメンバーの青柳誠を表す。もちろん、その青柳の筆だが、後年はあまり吹かなくなったサックス(テナー)がフィーチャリングされていて、とてもリリカルかつムーディな曲。実はcybercatが、NANIWA EXPRESSをNo.1 favorite Fusion Bandとしているのを決定づけた曲でもある。他の「フュージョンバンド」が、ロック調の曲とポップな曲に、定型的なバラード...という構成なのがほとんどだったが、この曲はリキヤはブラシを振り回しているし、ギターの音も緩やかにオーバードライヴしているだけというおとなしさ。リズムもスウィンギィでジャジィだが、でも明らかにジャズとは違って「フュージョン」しているメロディライン。目立つ曲ではないが、NANIWAの懐の深さが感じられる名曲。

 

FIELD ATHLETOR」。これは中村の曲。他とは大きく違う曲調だが、エレクトロジャズという感じで、フランジングした高速ランニングベースとバックビートにスネアが入らないドラムスで、スリリングなAメロ、わかりやすくキャッチーなテーマ、フルユニゾンのキメっキメのBメロと表情が違う3つのパートで構成される。サックスソロの部分はとてもジャジィでフリー。その一方で中村のシンセサイザーソロの部分は、「ザ・アナログシンセサイザー」という感じの音色とプレイで、落差が大きい。スタジオアルバムなのに、ラストテーマの前には、リキヤの1分半近いドラムソロが挟まれ、破壊力バツグン。

 

その他にも、ライヴ定番のお祭り曲、結成当時のオリジナルドラマー鎌田清をゲストに呼んだツインドラムと、ゲストのラッパ隊で盛り上がる「高野サンバ」こと「THE KOYA-SAMBA」や、SONY(当時)の同期?Marlene(マリーン)がコーラスを取る「FOR MY LOVE」など注目曲がてんこ盛り!「上方フュージョン」の雄として華々しいデビュー作だった。

 

そんな彼らにも時は等しく流れ、バンド結成40年以上、最年少メンバーでも還暦を迎える...という状態でメンバーに異変が。

 

なんと、裸足の野獣ドラマー東原力哉が、原因不明の運動障害を起こし、今年は例年恒例となっていた地元ライヴスポットでの連夜公演をキャンセルするとのこと。

 

このライヴ、毎年恒例で大阪にて行われていたので、西日本側にいるうちにいつかは行こう...と考えていたが、それを果たす前にこの状態に。

 

アレックスこと青山純、Keith Knudsen、Michael Hossack、老齢が問題ではないがJeff Porcaro、そしてつい先日の村上“ポンタ”秀一....自分にとってのドラムヒーローだった人々が次々に鬼籍に入っていく。

 

そういう意味では、ヒトに残されている時間には限りがあるのだな、と。

 

もしリキヤの生演奏を再び聴けるチャンスが訪れたなら、逃さず聴こう、と思いながら引っ張り出した作品でした。

廉価盤の「CD選書」シリーズ。もちろん最初はアナログ盤で購入したが。
廉価盤の「CD選書」シリーズ。もちろん最初はアナログ盤で購入したが。

 

【収録曲】

1. BELIEVIN’
2. THE STATE OF LIBERTY(自由の女神)
3. BETWEEN THE SKY AND THE GROUND
4. BLUE WILLOW
5. THE KOYA-SAMBA(高野サンバ)
6. FIELD ATHLETOR
7. FOR MY LOVE

 

「THE KOYA-SAMBA~BELIEVIN’」-5分以上にもわたる力哉のドラムソロを聴け!-

 

更新: 2021/03/16
必聴度

80年代ジャパニーズフュージョンを代表する名作

本作がリリースされた1982年というと、CASIOPEA(現CASTIOPEA 3rd)の“Mint Jams”、THE SQUARE(現T-SQUARE)の“脚線美の誘惑”、PRISMの“VISIONS”、鳥山雄司の“Silver Shoes”、本多俊之の“SHANGRI-LA”、PARACHUTEの“Sylvia”、松岡直也 & ウィシングの“DANZON”(厳密には前年末発売)と「これぞ日本のフュージョンだっっ」という名盤が目白押し。

 

その中でも、“Mint Jams”とともに、同年発売のジャパニーズフュージョンアルバムの双璧と思う。

  • 購入金額

    1,500円

  • 購入日

    1990年頃

  • 購入場所

12人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    2021/03/26

    だいじょうぶですかねえ・・・

    私にとってもボンゾとかは最初から伝説の人ですけど、コージーとか樋口さんとか。
    そこに今回のPONTAさん。

    もう少しまったりなリズムでーーーーー!
  • cybercatさん

    2021/03/26

    心配ですね...
    もう少し、あとノリでお願いしたい!

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