レビューメディア「ジグソー」

これから聴きたくなってくるアルバム筆頭!

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。インストアルバムって一般的には売れないものです。YMOの“YELLOW MAGIC ORCHESTRA”のようなジャンルを創り世界的な現象になったような名盤でさえチャートとしては冴えません(外国でのブームの逆輸入現象として続く“SOLID STATE SURVIVOR”はチャートトップに輝くが)。そんな中、当時シティポップの騎手とされた人物が放ち、ソコソコのセールスをあげた良質のインストアルバムをご紹介します。

角松敏生。シンガーソングライターにして音楽プロデューサー。既にオリジナルアルバムとして20枚以上、中断はあるものの芸歴35年の大ベテラン。初期はイケてるルックスにリゾート系(キーワード的には夏!海!女!←w)~アダルトシティ系(同じく夜/酒/女←w)のダンスチューンを多く手がけ、女子大生中心にシャレオツな音楽としてもてはやされた時代があった。ブーム以前の活動開始当初からかなり凝った曲の造りと内外の有名プレイヤーを迎えた作品で玄人衆のウケはよかったが、その一番ピークだった1980年代後半~1990年代初頭にかけての時期に、2枚のインストゥルメンタル・アルバムを出している。

cybercatは角松に関しては、そのソングライティング力と楽曲プロデュース力は非常に高く評価しているが、彼の歌唱力はそれほどでもない。そういう意味ではインスト作品こそがcybercatにとってのネガの部分がないため、この2作はよく聴いている。

1990年発売の2作目は既にご紹介したが、

こちらは1987年リリースのインスト第1作。この時代、歌モノの方は夏系から街系に舵を切っていたがインストのこの作品は暑くなる季節に聴きたい曲が並んでいる。

短い導入部、という感じの1曲目に続いて、デーハーな2曲目「SEA LINE "RIE"」が作品の幕を開ける。土井アキラの時代を感じさせるゲートリヴァーブう゛ぁっりう゛ぁりのスネア音、林有三のプログラミングに佐藤博(ピアノ兼任)と友成好宏のツインキーボードによるゴージャスな装飾を施し、さらに生ブラス隊を入れたこの曲は強烈なインパクトを残す。角松のギタープレイもツポをついたプレイでメロディラインが歌っている。でもなんと言ってもこの曲の華は不世出のベーシスト、故青木智仁のプレイ!硬いゴリゴリのスラップからブリッジ部での歌うランニングベースまで変幻自在で、この音響加工が多い曲の「芯」となる揺るぎない「定点」を造っていて、ブレない。彼のベースがドン、と構えているのでふわふわした加工音や煌めくSEが生きる。まさに「ベース」。彼を見出したのは、角松の音楽界に対する最大の功績とも言えるかもしれん。この曲は必聴。

なんとも直球の題名を持つ「OSHI-TAO-SHITAI "KAORI ASO" (MEMORIES OF DUSSELDORF)」(⇒アソウカオリって誰や?w)。これは村上”Ponta”秀一のど派手ドラムスと青木のスラップ!スネアが定位置に入らないトリッキーなリズムパターンをサラっと演って、フィルインまでユニゾンまで合わせるイケイケチューン。ソロも小池修の流麗なテナーサックスソロ~友成好宏のラテンなピアノソロとシンセソロ、ギターソロを挟んで青木のフレットレスベースソロ+スラップソロと続いており、連続ソロまわしからの復帰は喰い喰いリズムのキメでテクニック満載のまさに「フュージョン」!この曲は時々無性に聴きたくなる。

次の「52ND STREET "AKIKO"」は全く風合いが違う曲。リズムは打ち込みで雰囲気は初期THE SQUAREのような暗めのクロスオーバー系の風合いがあるのだけれど、ギターの音がイイ!!泣くフレーズもスバラシイし、小池のサックスソロと数原晋のフリューゲルホルンソロはちょっと遠目でリヴァーブの掛かりが「夜」って感じ。フィルインのほとんどバリエーションがない打ち込みのリズムの無機質さが角松のギターを活かしてる。

全体的に楽曲の統一感はやや薄いものの、良質な楽曲が並んでいてスバラシイ。特にこれからの暑い季節にはピッタリ!のイケイケチューン揃い。ドライブにサイコー!
最近では珍しい折りたたみ式のライナー
最近では珍しい折りたたみ式のライナー
でもすべての曲に女の名前をつけるはやめなs(ry

【収録曲】
1. WAY TO THE SHORE "ERI"
2. SEA LINE "RIE"
3. NIGHT SIGHT OF PORT ISLAND "MIDORI" (NIGHT FLIGHT OF DC-10)
4. SEA SONG "NAOMI"
5. SUNSET OF MICRO BEACH "SATOKO"
6. OSHI-TAO-SHITAI "KAORI ASO" (MEMORIES OF DUSSELDORF)
7. 52ND STREET "AKIKO"
8. THE BASS BATTLE "CHAKO"
9. MID SUMMER DRIVIN’ "REIKO"
10. LOVIN’ YOU "SAWAKO"
11. SEA SONG (REPRISE)
12. JUNE BRIDE instrumental version

「SEA LINE "RIE"」

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    1991年頃

  • 購入場所

23人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • いきものがかりさん

    2016/04/14

    「 SEA IS A LADY 」 いいですね。 これと、「 T’s 12 INCHES 」 を聴きまくりました。私の青春です。
    角松のCDたくさん持ってましたが、mp3にして、みんな売っちゃいました。今は、iTuneで聞いてます。
    ベースの青木さんが亡くなったのが悔しいです。 あのスラップベースが大好きでした。
  • cybercatさん

    2016/04/14

    そのあたりの角松はほんっと良かったですね。
    自分は逆に角松的には異端の?“ALL IS VANITY”からさかのぼっていったクチですが、このあたりこそ「角松節」だ、と聴いて思いました。

    最近ヴォーカル再録盤“SEA BREEZE 2016”が出ましたが、むしろこっちのリマスターが欲しいなー。ちょっと時代的に加飾が過ぎてもう少しプレイヤーの息吹を感じたいと思います。今のままでも大好きな作品であることは変わりないのですが。

    青木さんは本当に残念ですね。ここ

    にも書きましたが、角松にとっても残念でならなかったでしょうね。

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