所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アレンジ違いのセルフカバー盤やグループメンバー変遷後のメンツ違いの再演はアーティストの成長や、新しい解釈が見受けられ新鮮な興味を引かれることがあります。そんなオリジナル・初出でないものからも良質な音楽をご紹介します。
“In the AIR”。天野清継のアコースティックアルバム。
ジャズ~フュージョンシーンを中心に活躍するギタリストだが、クラシック~ポップスまで活動の範囲は広く、ナベサダや小林香織といった主戦場から、葉加瀬太郎などネオクラシック、平井堅や夏川りみ、Skoop on somebodyらポップスシーンにまで至る。
ちょっと以前を知る人は(まだタバコCFの規制が緩やかな時代)1990年代初頭のピースライトのCFで本人が出演し、本盤にも再録されているボロディンのオペラ「イーゴリ公」から「ダッタン人の踊り」をモチーフにした「Azure」を弾いているのを覚えているかもしれない(話はそれるけど、この当時のピースライトのCF音楽はどれもセンスがよく、チェロの溝口肇やヴァイオリンの古澤巌などフュージョン~ニューエイジあたりで頭角をあらわしてきていたアーティストを起用し、cybercatの棚に入るCDを増やすという悩みを与えたものだった)。
この盤はカバーとセルフカバーを含むアコースティックアルバム。「ギター1本」ではないが、多重録音でギター2~3本で構成されている(ナイロン弦とスチール弦の6弦、12弦ギターとスライドギター)。
高中正義も取り上げていた、
6曲目Billy Joelの「Just the way you are(素顔のままで)」。どちらかと言えばミュート奏法やペダル奏法での多彩な音色で攻めた高中に対して(マ、あちらはギターエフェクターのサンプル音源の意味合いもあったので当然は当然)、シンプルにアコギでアドリブする天野。エレギ対アコギの特性と言うことなのかもしれないけれど、フレーズ・ラインの美しさで押す高中に対して、ピッキングや強弱など音の表情で語る天野と違いが明らか。
続くTOTOの名曲「Georgy Porgy」
は2コーラス目からボトルネック奏法のスライドギターが加わり、3本体制(メロディ、コードのバッキング、ボトルネックのオブリガード)。1コーラス目でアルペジオっぽく演奏されるコードの流れを聴いていると、この曲が本当に名曲であることがわかる。メロディーラインがなくてコード進行だけ並べても美しい曲、というのはなかなか...
対して、自身の出世作「Azure」も再録されているけれど、これは元々がアコースティックなアレンジなので新味はない。またもう1コーラスアドリブが欲しかったところが終わってしまって、少し不完全燃焼。
「Over the rainbow」もスゴイ生っぽさを感じる録音で、隣に彼がいてつま弾いてくれている感じは情景としてはイイんだけれど、語り尽くされた曲なのでオリジナリティーという点では今一歩。速度が速く、ラグタイムのようなアレンジはおもしろいけど。
聴きこむと彼ならではの表現力溢れる佳曲と、「彼でなくても...」というものが混在しているけれど、後者の曲も出来が悪いわけではなく、彼のプレイを識っていると要求が高くなる、というだけで...
和みの、音楽です。
【収録曲】
1 (Never been) In the air
2. Field or innocent
3. Canadian Rockies
4. Don't know why
5. Kah-nee-ta
6. Just the way you are
7. Georgy Porgy
8. 北鎌倉
9. 茅ヶ崎
10. Puff
11. Eugine
12. My Romance
13. Azure
14. Prescott
15. Jerome
16. Over the rainbow
17. Coyote
18. Numana
Kiyotsugu Amano HP
「Georgy Porgy」
テクニックを聴くのではなく、曲の醸し出す情景に身を委ねる
天野がテクニック系のアーティストなので、それを求めそうになるが...
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購入金額
3,000円
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購入日
2008年頃
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購入場所
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