レビューメディア「ジグソー」

一期一会的なすばらしさ

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。金字塔。そのジャンルを代表する作品でもそんな作品がライヴ一発取りであることがあります。それは一般的には観客(会場)との一体感、そのライヴイベントの特殊性/プレミア性などによる場合が多い。でも何の特別なイベントでもなく、MCやオーディエンスノイズを排した盤が輝ける金字塔となることもあります。そんなスタジオ録音を超えたライヴ盤をご紹介します。

CASIOPEA。今(2012年)は活動を停止している日本を代表するフュージョンバンド。1970年代中盤から活動停止の2006年まで約30年の歴史を持つため、何度かのメンバーチェンジはあった。へそまがりな?cybercatは今まで比較的後期のアルバムを取り上げてきたが、

ついにこのアルバムに。

「JAPANESE FUSION」の一つの到達点。楽曲、テクニック、プレイ、緊張感、全てが高いバランスをみせている。このアルバムは彼らにとってオリジナルアルバム5枚、ライヴアルバム1枚を経た7枚目の作品。このアルバムは過去の5枚のオリジナルアルバムから7曲が選ばれている。通算3枚目のライヴ盤からこのアルバムまで(そしてこれ以降も長らく)メンツは不動。さらにこのアルバムはライヴ盤、一発録り。こういった様々な要素が積み重なって、評価が高いアルバム。

まず曲は初期のテクニカルで、タイトで、ギミック満載の名曲が並ぶ。CASIOPEAのベスト10を決めればここで取り上げられた曲で半数近くは埋まると思う。

メンツはいわゆる“黄金期”メンバー。リーダーで多くの曲を書くギターの野呂一生、デビューから活動中止の2006年まで行動を共にする向谷実がキーボード。そして初期カシオペアのタイトでクリアなサウンドを支えたリズムセクション、ベース櫻井哲夫とドラムス神保彰。

そして一期一会的な緊張感あふれるプレイは、これがライヴアルバムであること。ほとんどオーディエンスノイズ(拍手やかけ声)は消され、積極的なサウンドエフェクトがかけられているため(特にドラムの残響コントロール)、まるでスタジオ録音のようだが、これはライヴ録音。しかも一切のオーバーダビングはなし。あくまで、音色や音響効果を変えたアフタープロダクションのみ。

...とうていそうとは思えない、構築されたアレンジとその再現を実現する正確無比な演奏。本当にこれが8本の腕と2本の足(ドラマー以外では演奏には足を使っていないようなので-ボリュームコントロールやエフェクター切り替えは除く-)で出された音とはとうてい思われない。

まずなんといっても、「Asayake」。この名曲は2ndの初出以降、CASIOPEAの代表曲として、ライヴでは必ず演奏されてきたテーマソング的チューンだが、このアルバムのテイクをベストに推す人は多い。後期はキメのリズムを喰って目新しさを出したり、若干速く演奏してスピード感を出してみたり、さまざまな手を加えてそれはそれなりに新味があったが、やはりこの“MintJams”盤があってこそ。このアルバムのプロデューサー宮住俊介のブログにも、以下のような事が書いてある。CASIOPEAは「ライヴの」バンドであり、レコーディングされた時がその曲の完成ではない、と。レコーディングした曲がライヴでどんどん良くなってくる、だから「完成した」楽曲をもう一度録音したくなる、と。まさにこの曲はそんな感じで、オリジナルの“SUPER FLIGHT”版より遙かにいい。ソロも冗長でなく、良くまとまっている。音のタイトさとキレが若さを感じる。

Midnight Rendezvous」は1stからの再録。ベースのファンキーで暗いラインが、たまらなく夜。これはスネアの残響が一発一発細かく変えられているが、他はほとんど手が加わっておらず、闇い夜の逢瀬のイメージ。途中ギターソロの前にブレイクがあり一発クラップ音が入るが、観客の手拍子を一発抜きだし、エコーを加えるという加工がされている。サンプラーもない時代に今なら簡単にできることが昔は大変だったろうな、と。

Domino Line」。この曲も代表曲で近年まで良く演られたが、ソロなどが長すぎもせず、このテイクが最も良くまとまっている。例のドミノ倒し(16分音符を1音ずつドラムス⇒ギター⇒ベース⇒キーボードの順にまわして「タタタタ」という音を表現する)はもう一回あった方が収まりが良いかもしれないけれど...

このアルバムはライヴ録音のため、当時4000名収容のコンサートチケットが即日完売する彼らが、わざわざ300名の観客を前に演奏したもの。2日間のベストテイクをとったはいうものの、その一期一会的な瞬間の美しさで、日本フュージョン史上に燦然と輝く名盤。まだCDがアナログレコードより高価だった時、最初に買った数枚の中の一枚、想い出の逸品です。

【収録曲】
1. Take Me
2. Asayake
3. Midnight Rendezvous
4. Time Limit
5. Domino Line
6. Tears of the Star
7. Swear

「Domino Line」


CASIOPEA Web

更新: 2021/06/01
必聴度

この盤を聴かずしてジャパニーズフュージョンを語るなかれ

一発録りのライヴパフォーマンスとは思えない、プレイと音の完成度。ライヴならではの一期一会的なプレイと、高度なアフタープロダクションの融合。

  • 購入金額

    3,800円

  • 購入日

    1986年頃

  • 購入場所

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    2012/01/18

    これ、スコアもってますよ。
    一所懸命追いかけながら聴きましたw
  • cybercatさん

    2012/01/18

    北のラブリエさん、いつもどうも!
    >これ、スコアもってますよ。
    >一所懸命追いかけながら聴きましたw
    無謀にもバンドでコピーしましたwww


    .       .            .     結果は...惨敗ww

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