1979年末に発売されると、その先進性、デザイン、音質が評価され一気にベストセラーに。
後に15番や7番など、姉妹機がリリースされています。
他社もそれに追従し、リニアトラッキングレコードプレーヤーが一世を風靡しました。
私は発売前にオーディオフェアで一目惚れ。 どうしても欲しくなり、つてを頼って最初期モデルを入手し現在に至ります。 稼働率は限りなくゼロに近いですが、、、今も完動品です。
専用規格のカートリッジの入手性が悪くなっていますが、省スペース性能、知識や技術を必要としないユーザーフレンドリーな本質は、これからアナログオーディオの世界に足を踏み入れようとする
現代の若いファンにとって福音となる可能性があります。
中古ショップでの実売価格は5万円前後とか。
購入に際して、注意してほしいポイントは実用性欄に記載しておりますので、よければ参考にして下さい。
元祖ジャケットサイズ アルミダイキャストの質感が素晴らしい
縦横315ミリ、厚さ88ミリ。
アルミダイキャスト製 重さ6.5キロ。
まさにLPレコードジャケットを15枚程積み重ねた程度の大きさに収まる元祖ジャケットサイズ・フルオートレコードプレーヤーです。
ちょうど真半分に上下が別れるように上蓋が開きます。
その上蓋部にリニアトラッキング式トーンアームが仕込まれています。
下部には、ほぼ面一に埋め込まれる形でターンテーブル。
全てがマイコン制御されています。
従来の概念では、レコードを収めるだけの箱にしか思えません。
このプレーヤーシステムは、松下電器産業の総合力なくして実現しなかっただろうと思われます。
質感という意味では、上蓋の多くの部分を占める透明部がアクリル製であることが残念でした。
当初、ガラスを使うという計画もあったそうですが、熱膨張の関係からアクリルに落ち着いたとか。
1979年末に発売された商品ですが、35年以上を経た今でも、十分耳目を集める素晴らしいデザインと云えるのではないでしょうか?
因みに発売当初はずっと品薄状態が続きました。
内部情報によると、ダイキャストの金型が従業員の不注意から破損してしまい、計画通りの量産が叶わなかったとか、、。
それにしても、定価10万円のレコードプレーヤーが納期待ちの人気とは、当時のオーディオ熱が忍ばれます。
針先のお掃除という最低限のマナーさえ守れば後は針圧調整、水平設置、オーバーハング等の必要なしスイッチを押すだけ・まさしくフルオートでした
一般的なレコードプレーヤーにおいて、トーンアームと呼ばれる部品は、やじろべえの原理で構成されています。
細いJ字・S字・あるいはストレートパイプの先に取り付けられているのがヘッドシェル。
その概ね四角い板状か箱型のヘッドシェルに、カートリッジと呼ばれるレコードに刻まれた溝から微小な信号を取り出す小さな箱が付けられています。
レコードに刻まれた溝は、V字型で連続したうねりを持っています。
カートリッジの先端近く下部から伸びるカンチレバーと呼ばれる軽金属パイプに備わった、「針先」が溝のうねりを捉えて、振動を発電装置に伝えます。
これが左右の(ステレオ盤)音楽信号に振り分けられて、他の箱(アンプ)に送られます。
レコード盤とカートリッジの位置関係は、とても複雑で神経質なものです。
レコード盤に押し付ける重量を針圧と呼び、先に書いたやじろべえの短い方に取り付けられている
大きなウェイトの位置を調整しながら 適正な値を決定します。
また、カートリッジとレコード盤との上下方向の位置関係も大事で、前下りも後ろ下がりも認められません。
当たり前ですがレコード盤は外周と内周では、描く円の直径が異なります。
その円周の一点にカートリッジの針先が接触するのですが、その溝に対して、きちんと沿う形で接触できるのはほんの一瞬だけ。 その1点の外側でも内側でも、角度において妥協しなければなりません。
ターンテーブル中心のスピンドルと呼ばれる1点と、トーンアーム回転軸の1点。
それとレコードに刻まれた溝とスタイラスが接触する1点。
これらを総合的に見て、妥協すべき1点を決定し、それに合わせてシェルとカートリッジの位置を決定する必要があります。
これらが完全に調整出来たうえでも、まだ腐心すべきところがあるのがアナログの大変なところ。
多くの場合レコードプレーヤーは、4本脚ですが、それぞれにかかる重量に差があります。
特にベルトドライブやアイドラードライブ方式の場合は、重量物であるモーターが中心にありませんので、それぞれの脚を上手く調整する必要がありました。
水平設置を前提に、各脚に備わるコンプライアンスが均等に作動するように調節するのが肝でした。
場合によっては季節(室温)に応じて針圧を微調整。
微小電力が流れるフォノケーブルを振動や音圧から遮断。
きちんとアースを取って、ハム音を抑えこむ。 電源ケーブル極性も影響が大きいポイントでした。
最後に設置場所。 アナログプレーヤー再生の肝かもしれません。
ハウリングと呼ばれる、スピーカーから放出される音圧をプレーヤーが受けてしまい、その振動が針先に伝わる事が延々と繰り返されることで生まれる唸りが厄介なんです。
学校集会で、先生方が使われるマイクやメガホンの向きが悪い時に出る「ガ〜・ピ〜」という不快音もハウリングの一種です。
これらの要素を理解し、きちんと調整しなければ、上質なアナログオーディオ再生を得ることは叶いません。
でも、このSL−10やその兄弟機種を使う限りでは、その多くの調整は不必要です。
全ての操作を4つのボタンに集約したフルオート機構。
スタートボタンを押すだけ。
レコードサイズに合わせて回転数も自動設定されます。
また、特殊な回転数のレコードにも対応するため、回転数はマニュアル切換えが可能です。
アーム部は演奏終了後に自動的にアームレストに戻るオートリターン設計。
演奏中でも上部キャビネットを開けるとアームレストに戻るようになっています。
針先が盤面に触れる、離れるその瞬間にミューティングがかかりますので、不意の雑音とも無縁です。
針圧はダイナミックバランス型と呼ばれる、バネを利用した方式です。
短いアーム部に微調整ダイヤルが備わりますが、専用設計のカートリッジは、その自重と自らが欲する針圧を内包しています。
もちろん高さ調整は不必要です。
リニアトラッキング。 水平移動するアームはトラッキングエラーとも無縁。
とてもコンパクトなアルミダイキャストボディは、体積あたりの質量も大きく、なにより音圧を受ける面積が少ない。 柔構造の樹脂製ダストカバーも必要ないので、生まれながらにハウリングに強いんです。
オプションのSH-B10と呼ばれるスタンドを使って、スタティックバランス型アームを持つプレーヤーでは叶わない傾けた設置でも、ほぼ水平設置と変わらぬ音質・対ハウリング特性が実現しています。
T4/Pと呼ばれるカートリッジの入手性が問題
リニアトラッキング方式のアーム部は、スライド機構が肝です。
この機種はスライド軸受け方式を採用していて、基本的にメンテナンスフリーですが、油切れを起こしている個体だと、音声出力にノイズが乗ります。
トラッキングエラーゼロを謳うリニアトラッキング方式ですが、現実の動作は、カートリッジがレコードに刻まれた溝に引っ張られて少し内周側に寄ることを検知し、必要な量だけコッグドベルトを動かしています。 その動きをよく観察すると尺取り虫のようです。
尺取り虫の動きがスムースに行かないと、コクンコクンと小さなノイズが発生するとお考え下さい。
中古の個体を選ぶ時に、できればヘッドホンで弱小音部分を大きな音で聞いて下さい。
これでその個体の状態が知れます。
適正な注油で回復する場合もあるので、もしお手持ちの個体にその症状が出ていたら、グリスを塗布して下さい。 CRC5-56等はグリスを洗浄してしまう場合があるので要注意です。
T4/Pと呼ばれるスライドロック式の規格カートリッジが必要なのですが、既にテクニクス製はディスコンですし、かつて世界中のメーカーから売りだされていた商品も在庫限りとなっている場合が多いです。
私はSHUREのMM型M92-Eという安物を入手してリプレイスしましたが、純正MCカートリッジの305番とは全く次元の異なる世界に入ってしまいました。
もしも305や205番が付属している個体を入手された場合は、入念に清掃しつつ、長くお使いになることをオススメします。
モーターの寿命はともかく、制御基盤の寿命が来ていたらお手上げでしょう。
ご購入前には、全てのコマンドを入力して、確実な動作を確認してくださいね。
真にフルオート
前述のとおり、アナログプレーヤーを使いこなすには、ある程度の知識と経験が必要です。
また、その知見が再生音に大きな差を生みます。
車で言えば、現在のデジタルオーディオと最新の燃料噴射エンジンは似ています。
寒くても暑くても、ボタンを押すだけでエンジンは掛かり、すぐに走り出せます。
車側が最適なギアを選び、エアコンも自動制御、ブレーキすら自動制御される時代です。
対してアナログオーディオ、特にレコードプレーヤーを扱うということは
燃料コック・チョークレバー・ノンシンクロミッション・アシストのないステアリング機構。
場合によっては、点火時期や進角の調整すら必要だと心得るべしです。
このSL-10は、それらに対する知識は必要ありません。 知っていても使う事がありません。
レコードを載せて、蓋を閉めて、ボタンを押すだけです。
(背面に備わるMC/MMの切り替えSWの意味は知る必要がありましたが、、、)
肝心の音質はカートリッジ次第
SN比
78dB(IEC98A weighted)
58dB(IEC98A unweighted)
オートストップ・アーム後退コントロールキー
キューイングキー
リピートキー
回転数切換(33 1/3、Auto、45)ボタン
ターンテーブル回転キー
アーム走行位置確認用ダイヤルスケール
MM/MC切換えボタン
スタイラスイルミネーター
ストロボ付スタビライザー
アナログオーディオの入り口に
この時代にアナログレコードを楽しもうと云う方は、大きく分けて2種類かと思います、
まずは50歳代以上の古くからのオーディオファンが、手持ちの機器や愛蔵のレコードを再び楽しもうとお考えのグループ。
方や、生まれて始めてレコード盤の匂いを嗅ぐ若いグループ。
後者に属する方にお伝えしたいのは、「アナログなら何でも良い音」だと勘違いしないでほしいということ。
特に扱いの難しいレコード盤再生には、数々の難所が待ち受けています。
お持ちの方には失礼ですが、1〜2万円で入手可能なDENONやSONYのプレーヤーでは、アナログ再生に含まれるヒスノイズやスクラッチノイズを聴いて、アナログ再生の価値を判断してしまいかねません。 本来それらは排除すべき要件のはず。
実売価格5万円程で、TEACやONKYOからよさ気なターンテーブルシステムが販売されています。
それらはカートリッジ交換にも対応していますし、前述の使いこなし技術を駆使すれば、グレードアップの楽しみや使いこなしの楽しみも味わえます。
それらが面倒だとお考えの若いファンにオススメしたいのが、このSL−10。
機能性欄に書き留めた通り、仕組みや使いこなし技を知らなくても、ある程度の音質が担保されます。
入手性が悪くなっていますが、カートリッジ交換による楽しみも得られます。
中古ショップでは5万円前後のタグがついているようです。
できれば実用性欄に書いたような手順で、ヘッドホンを使いリニアトラッキング駆動部から発するノイズをチェックして下さい。 もし良品なら 買い かもしれません。
使いやすさの割に、ある一定のクオリティが得られます。
なにせ発売当初は10万円でも飛ぶように売れたベストセラーですから。
-
購入金額
100,000円
-
購入日
1980年01月頃
-
購入場所
cybercatさん
2015/10/16
もし復活するようだったら、このページ、役立たせていただきます!
フェレンギさん
2015/10/16
針先に溜まっているかもしれない埃を、できれば専用液、無ければアルコールと硬めの筆で掃除してやって下さい。
その時の注意点ですが、もし付属のカートリッジが純正MCのカートリッジ(金色の四角いもの)だった場合は、細心の注意を払って清掃してやって下さい。
件のカートリッジは、カンチレバーがピュアボロンテーパードパイプです。
現在このような高級な素材を使ったカートリッジは、ほとんど見かけません。
見た目通りの、非常に繊細なサウンドと分解能を持つ逸品です。
私は、、、、、老眼のせいにしていますが、見事にポキリと折ってしまいました、、、、
あぁ、なんてことを、、。
それだけは、、、ぜひお気をつけ下さいね。
では、素晴らしいオーディオライフを!
CR-Xさん
2015/10/16
GT2000とこれとどっち行くか迷って、CDオンリーに行きましたw
フェレンギさん
2015/10/16
最初期型の1.5iを、友人二人に買ってもらいました。
次期モデルのV-TECで感じた2段加速は未だに忘れられません。
GT-2000も、自分で買えなかったので、友人に買ってもらう形で楽しみました、、、。
うぅ、蘇るあの日々、、。
Yujiさん
2015/10/19
この手のリニアでb&oに唯一匹敵する製品だと思います。
フェレンギさん
2015/10/19
バングアンドオルフセン! 実際に音を聞く機会が未だにありませんが、あのクオリティ・デザインなら、置いておくだけでも値打ちがありますよね。
デザインの力。 修理不能なのにヤマハ・ベリーニデザインのカセットデッキを捨てられない。
マッキントッシュオーディオの見た目に惚れてレガシィを買ったひとも多いそうです。
音はマツダのBOSEが圧勝ですが、やはりガラスパネルに青い文字。 格好良すぎ。でした。
Yujiさん
2015/10/19
初めて知りました!なにぶん若輩なもので、カセットデッキを使ったことがなかとです(^^;)
それにしても、使いたくなる触りたくなる雰囲気をまとった良いデザインですね。
装置の側から「触ってね〜」というメッセージが伝わってくるようです。
そういうところも含めて、ほんとデザインて大切だと思います。
フェレンギさん
2015/10/19
当時のヤマハは、キッコーマン卓上醤油瓶でお馴染みのGKデザインと仕事をしていたようで、CA-1000という、やはり音よりデザインでファンの心を鷲掴みにしたアンプを出していました。
単気筒の名車SR-400も同じGKデザインのようです。
当時カセットデッキは、新しい世代に入っておりまして、ソレノイド制御・3ヘッドが注目されてます。
普及期においても、テープを収めるカンガルー式ポケットの開閉動作にダンパーを組み合わせるのが
流行りだしていました。
傍系として生録に対応した製品も多く、SONYのデンスケが特に有名です。
この800番も乾電池駆動(単2電池X6)も可能な仕様で、デンスケっぽいんですが、フライホイールに配慮が無いため、据え置き状態でないと使えません。
カセットテープ取り出しポケットにダンパーは無いので、「ガシャッ」ラジカセレベルです。
音も、同価格帯ライバルに比べると「大きく劣る」ものでした。 なにせ高音に伸びがない。
ドルビーという雑音除去回路も搭載されていますが、おそらくIC化されていない旧型なのか、無いほうがマシというレベルです。
しか〜し、CA-1000譲りの細い針を持つレベルメーターが格好良い。
そこには先進的な赤と黄色のLEDを利用したピークレベルインジケーターも装備されています。
楽器練習用とも思えるピッチコントロールもデザインに溶け込む形で装備されていました。
少し後にアイワ(SONYの先鋒役との噂あり)が、スラントした三角形デザインを「真似」した製品を出しましたが、その質感・デザインのレベルには大きな隔たりがありました。
現在のCDデッキより、遥かに寿命が短く、整備の必要を伴うカセットデッキですので、多くの場合は修理せずに買い換えて行きます。
ヤマハの他に、SONYやTEACの、それはそれは高性能なデッキを買いましたが、このヤマハ以外は全て廃棄しました。
Yujiさんが仰るように、デザインって ほんとに大切だと思います。