長年航空関係の研究に携わってきた物理学者であったウィリアム・ファイアーバーが、満足するアナログプレーヤーを求めて自分で作り上げたのが、このWell Temprered。
その中でも、個人的にSimple is Bestだと思うのが、このWill Tempered Basicです。
アナログプレーヤーの場合、ターンテーブルの回転を安定させるためのサーボ機構や振動を徹底的に押さえ込むためのシャーシ構造、針先が内側に向かって引っ張られる力を打ち消すアンチスケーティング機構といった複雑な機構を備えるモデルも多く存在します。
そのような中、このWill Tempered Basicは同社の設計思想がストレートに表現されており、ある意味究極のアナログプレーヤーとも言えるかと思います。
構造を一言で表すと「浮いている」というのが正しいかもしれません。
アームはストレート形状で、シェルなどは使わずカートリッジを直接取り付ける構造となります。
シンプルなアームを支えるのは、なんとワイヤーとシリコンオイル。
アームの根元にはウェイトが取り付けられ、適切な粘性を持ったシリコンオイルが充填された浴槽に浸かっています。
アームは支柱から伸びたワイヤーでつり下げられており、プレーヤー本体とアームは切り離された構造となっています。
シリコンオイルの粘性によってアームの安定性とアンチスケーティングの役割も担っているという、なんとも凄い構造です。
針圧調整用のダイアルなどはもちろんなく、針圧も含めてたった1つのウェイトを調整する必要があります。
カートリッジの垂直調整は、アームの支柱上部にあるダイアルを回すことでアームを吊るワイヤーの長さが変化し、カートリッジの角度を調整します。
ターンテーブルを駆動するモーターはシャーシから完全に分離されています。
プーリーにベルトを掛けて回すベルトドライブを採用しており、回転数の変更はプーリー側に掛けるベルトの位置で変更します。
ターンテーブルの基部もこれまた凄く、シャフトがシリコンオイルの油槽に差し込まれており、2点保持で姿勢を保っています。
2点保持なので、ベルトを外すと外側にアームが倒れ込んでしまいます。
ベルトでテーブルを回すことではじめて姿勢を維持することが可能となります。
凄い設計ですね…
究極までシャーシとの接点を減らす設計により、再生中にオーディオラックを上から叩いても針はピタリと静止し、飛ぶことはありません。
ターンテーブルは磨りガラスとなっており、真っ黒のボディにとてもよくマッチします。
かなり肉厚のガラス製ですので、回転時の安定性向上にも役立っています。
現在、このプレーヤーに組み合わせて使っているのが、LyraのLYDIAN β。
こちらも無駄を廃したシンプルな作りのカートリッジで、スピードと高い解像度が特徴的な、初期のLyraの傑作カートリッジです。
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購入金額
400,000円
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購入日
不明
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購入場所
messiさん
2010/07/19
退会したユーザーさん
2011/06/01
coolなプレーヤーですね。
ちょもさん
2011/06/01
初めまして。コメントありがとうございます。
このプレーヤーをはじめて見たとき、あまりのシンプルさに衝撃を受けました。
アンチスケーティングやらいろいろな調整がごてごてついて重装備なアームとは正反対の、究極のシンプルさです。
物理学者でないと出てこないデザインという感じがします。
mr_osaminさん
2016/06/04
写真を拝見するだけでも、高精度な芸術品のような雰囲気が伝わってきますね。
ちょもさん
2016/06/04
コメントありがとうございます!
これ以上にシンプルなターンテーブルは見たことがありません。
ベアリングなども一切無く、オイルと軸受けだけで成り立っている構造は、物理学者でないと思いつかないと思います…
写真の色温度が暖色系になってしまっていますが、ピアノブラックのボディに磨りガラスのターンテーブルと、凄く美しい組み合わせで気に入っています。