T(HE) SQUARE。CASIOPEAが活動中止中でNANIWA EXPも休止期間があるという現状ではACTIVEに活動するジャパニーズフュージョングループでは最長の活動歴を誇るグループ。リーダーでギタリストの安藤正容(まさひろ)を中心として、1970年代末からほぼ切れ目なく活動を続けてきた。
さすがに長い活動の間には、紆余曲折がありメンバーも相当に替わっているのだが、いくつかの安定期があった。デビュー直後のアルバムごとにメンツが違うという状態から、初期に一度安定したのがこのアルバムの前まで。5枚のアルバムを出し、安藤の他に現在でも在籍する（一時離脱時期あり）フロントマン、サックスとウインドシンセの伊東たけし、キーボーディストでは最長の在籍期間（足かけ16年、現在は離脱）を誇る和泉宏隆というフロント系は安定していたが、このアルバムを挟んでリズム隊が一新されることになる。
これ以前にドラムスを叩いていたジャニーズ系の長谷部徹から、このアルバムからテクニシャン則竹裕之に変更され、5年在籍したベーシスト田中豊之にとっては最後のアルバムとなった（次作からは須藤満）。
明快でロック調ではっきりと粒立ちが良いダンサブルな長谷部＋田中のリズム隊から、テクニックがあり緩急・強弱の表情豊かな則竹＋須藤コンビへの変遷のクロスポイントにあるこのアルバムは他のどのアルバムとも似ていない。前リズム隊の明確でややデッドな音、次のリズム隊のパーカッシヴでハリのある音のどちらとも違い、ゲートリバーブも使った深い音響処理とオーバータブも多い壁のような音。その音色と過渡期の定番化していないプレイがこのアルバムを他の作品と大きく隔てている。
「LOVE ALL」。雷のような効果音からはじまり、則竹の弾ける様なタムの音やチョッパー的奏法のギターが曲の速度と同期したディレイや打ち込みのリズムとシンクロしとてもマシンっぽい。音像はまさに壁のよう。そこにぽっかりと奏でられる不安定な調でのピアノのリリカルなラインが切ない。
「LEAVE ME ALONE」は壁のように構築された音。夜のしじまに（←イメージ）埠頭で（←イメージｗ）独り寂しく過ぎた恋を思い起こしながら（←イメージだってばよ）むせび泣くサキソフォーン。則竹にしては明快なプレイでこのあとのアルバムほどおもしろみはないけれど、ピアノソロのバックでハイハットの強弱だけでグルーヴを作るあたりはその片鱗が。そして、この曲は和泉のピアノソロ！とても切なく浪漫ちっく。
「宝島」。これは和泉の最高傑作と思う。「LEAVE ME ALONE」のようにバラードっぽく美しい曲が多い和泉だが、この「宝島」の躍動感と高揚感は、このアルバムの他の曲と違ってかなり音のダイナミクスが大きい則竹の弾けるようなプレイと、伊東のウインドシンセの音色につきる。この音はこの前のアルバムまでのウインドシンセの原器Lyriconから後期になってMIDIブレスコントローラ＋MIDI音源という安定した機材にうつる狭間でウインドシンセコントローラー＋ヤマハDX-7というデジタルシンセのハイブリッドで生み出された音。綺麗な矩形波ベースの音で、丸く、暖かみがあり、デジタルの冷たさを上手くブレスコントロールによる表情づけが消し去っている。
結局この突然変異的深い音響処理の作品はコレのみ。そして新旧メンバーのクロスポイントでお互い立ち位置を探りながらやっている微妙な遠慮と、定番化する前の思い切りの良さがいい具合の調合でミックスされ、イイアルバム。
これからの季節向き？？ｗｗ
【収録曲】
1. LOVE IS IN MY SIGHT
2. LOVE ALL
3. HIT AND RUN
4. LEAVE ME ALONE
5. OVERHEAD KICK
6. DROP GOAL
7. 宝島
8. CAMEL LAND
9. 雲路 (PASSAGE OF CLOUDS)
「宝島」
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購入金額
3,200円
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購入日
1986年頃
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購入場所
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