Penrynコアを持つ45nmプロセス世代のモバイル向けCore2Duo。sSPECはSLAYQ。
その名の通りデュアルコア2スレッドで、最大クロックは2.4GHz。FSBは800MHzでSocket P。なのでマザーさえ対応していれば下位のCeleronや前世代のCore2からの換装が可能。
上位となるT9300との違いはクロックのほかに2次キャッシュが6MB→3MBと半分になるのが目立つ。前世代のT7300なんかは2次キャッシュが4MBだったので若干劣ってしまう。
とはいえ2.4GHzのデュアルコア。ノートPCとしては十分な性能を叩き出してくれる。組み合わされるマザーの世代的にグラフィック性能は望めないが、それを必要としないブラウジングやオフィス用途には今でも十分通用する。艦これも普通に遊べた。
最近のOSやソフトは2スレッド以上を前提にしている感のものも多いので、純粋な1スレッドCPUだと詰まり感が目立ってしまうが、この世代のデュアルコアならスムーズで体感速度の差は大きい。
ただ大前提として、メーカー製PC…それもノートPCの場合、標準搭載されているCPUに対する動作しか冷却系もマザーも対応を考えていない。同系統の上位モデルに搭載されているCPUなら動作の可能性はあるが、ギャンブルだ。交換難易度も高いものが多く自己責任の最終手段。
今回ボードPCのCPUを交換しているが、近いことをやってPCを壊しても責任はとれません。
そんな最終手段をやる事になるのは…このVAIO Type-L(VGC-LJ51DB/B)。画面一体型の「ボードPC」だ。一見デスクトップ機に見えるが、内部の部品はほぼノートパソコン。なんとバッテリーまで搭載している。親戚の使用しているコレが使用に耐えないほどの動作状況になっていたのは今まで登録したメモリやハイブリッドドライブで紹介したとおり。
しかしCeleron540…1.86GHzのシングルコアCPUの体感速度は厳しいものがある。更に多機能PCとして元々色んなソフトや専用機能が施されているので余裕がなく、そこに長年の使用でいろいろソフトが入った結果大変な事になっていた。
メモリとハイブリッドドライブでだいぶ改善したとはいえ、ここまできたら禁断のCPU交換をやってみたくなる。そこでこのT8300のエントリーだ。
しかしCeleron540はFSB533MHzで65nm世代のMerom系コア。T8300はFSB800MHzで42nm世代のPenrynコア。さらにチップセットはGL960 Express。このTypeLのカスタマイズモデルではCore2DuoT7250のラインナップがあるのだが、そちらの場合はチップセットがGM965 Expressになる。はっきりいって動く気がしない。普通だったらせめてT7XXX系を選ぶべき。
でもなんでT8300を選んだのかというと、このVGC-LJ51DB系でT8300を動かしている情報があったのと、ちょうど中古で在庫があり入手しやすかったの二点。
そのたった1件の動作報告を信じるのは文字通り賭けだったが、そもそもこのVGC-LJ51DBはCPU交換例があまり見当たらない。VAIO TYPE-LのCPU交換は結構検索で出てきたのだが、時期やサイズが異なる別モデルばかり。コイツは分解写真さえあまりない。まあ他のTYPE-LはHDD交換さえ苦労しているようなのでソレに比べたら正直な作りだと思いたいが…
予想通り分解は難航。外す必要の無い背面スタンドを外してしまって余計に時間を食ったのもあるが交換には2時間ほどかかってしまった。背面のカバーは4箇所ラバーで隠されているネジとバッテリー裏の3箇所、そして既に見えているネジを外していくだけなのですんなりとれるのだが、その内部にある中央構造物。これを外さないとCPUクーラーにはアクセスできない。コイツを外すのに何箇所かのケーブルコネクタや抑えを外す必要があり、完全に外しきれなかったので横にずらすさせるような状態でやっとCPUまでたどり着けた。
しかしクーラーを外そうとすると、CPUから恐らくチップセットを迂回して通っているヒートパイプがひっかかり外れない。向かって右側のパネルを取らないと完全には外れないようだ。しかし右側のパネルを外すのも面倒になったので、そのままクーラーを押し上げてゴムをかましてCPU部分に隙間を確保、そのままCPU入れ替えをしてしまった。
ネジの種類も多いので組み立てだって間違えないかビクビクだ。頼むからこれで動いてくれ。もうバラしたくないぞと祈りつつ電源をいれる。
…すんなり動作。事前に動作情報があったとはいえ凄くほっとした。ありがとう先にT8300で動かした御方。
苦労の甲斐あって、体感速度への影響は劇的。これまでメモリとSSHDで足回りを固めていたのもあって、それらの性能が生かされて一気に化けた。最早ベツモノだ。
交換前…デスクトップ画面1分5秒/ガジェット表示6分以上
メモリ増設…デスクトップ画面58秒/ガジェット表示2分35秒
+ハイブリッドドライブ…デスクトップ画面41秒/ガジェット表示1分25秒
+CPU換装&常駐ソフト整理…デスクトップ画面33秒/ガジェット表示42秒
SSHDのキャッシュがより最適化されてきたのもある(なので起動時間は毎回変化する)だろうが、CPUのデュアルコア化でソフト類の起動速度が一気に進み、特にデスクトップ→ガジェット表示の時間が大きく短縮されている。CPUがストレージの速度に追いついたという事だろう。
元々時計表示まで6分…360秒かかっていたPCだったのだからメモリ・CPU・ストレージの交換で起動時間が1/9程度にまで短縮された計算だ。OS側も明らかに挙動のおかしいソフトは切ったりして軽量化しているが、セキュリティソフトやVAIO独自のソフトウェアなんかはもちろんそのまま。使用上の機能は完全に維持。
少なくともVistaサポート終了の3年後までは十分すぎる活躍をしてくれるはずだ。
WEIはご覧のとおり。メモリ・CPU・SSHDの3点セット効果でグラフィック以外のスコアがアップしているが、特にCPUの値が4.1→5.3と大きい。
CM2004R3ではその差は歴然。こちらはメモリ・SSHD搭載済みの状態からCPUのみ変化させたスコアだが、実に倍以上だ。
温度は最大60度程度で安定する…というか60度辺りでファンがうるさいほどに全力回転して温度が維持できるようだ。
ちなみにベンチ中の消費電力はCeleron540の50Wに対して62Wとさすがに10W以上アップしている。今回ACアダプタの出力に余裕があったので大丈夫そうだが、その辺も注意だろう。アイドル時はむしろクロック可変幅のおかげで低下していそうだが、Celeron時代は常時負荷がかかりまくっていたのでアイドル消費をうまく計測できなかったのだ(オイ
最後にCPU-Z。クロックの可変もしっかり動いている。チップセットは間違いなく下位のGM960だ。右側のメモリ部分のスクショが2枚あるのはスクショミスで特に意味はない。
Celeron相手なら体感速度の差は劇的で、中古品なら手頃な価格で手に入れられる(実際今回VAIO L用に用意したパーツの中では一番安く2900円)のだが…他の人にオススメできるかといったら答えはNo。正直二度と分解したくないし壊す可能性だって高い。動作する保障ももちろん無し。リスクを考えたらよほどお気に入りのPCで無い限りこんな事はしないほうがいいだろう。
すっごい余談だけどこのVAIO Type-L、モニタ背面に本体がすべて入っていて手前にモニタを隠すようにたためるキーボードがあって、背面は角度調節可能なスタンドで支えられている…なんかSurfaceと並べると親子みたいだ。
実際バッテリーも搭載していて、家の中で運んで好きな場所に置いて使えるコンパクトなPC…どことなくSurface Proを連想させる使い方かもしれない。
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購入金額
2,900円
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購入日
2014年03月15日
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購入場所
jakeさん
2014/03/18
1/9まで短縮というのは、なかなか大きいですよね。
※というか、Windows8.1の下手なパソコンよりも起動が早いのでは?
下小川さん
2014/03/18
まあ1/9は元の状態が酷すぎた(メモリ不足、断片化しまくり、常駐ソフトの異常動作、性能不足によるVistaサーチインデックスが終了しない)ので大げさといえば大げさなのですが、体感速度はホント別物になってくれました。当初の目標は時計ガジェット表示まで1分半くらいだったんですけどね。
ただ酷い状態の時からデスクトップ画面は1分ちょいで表示していたので、VAIO本体のBIOSが早くすぐにWindowsブートに入っていたのも大きいと思います。あとこのVAIOは最初からHDDがAHCIモードで動いていたのも幸いでした。
少し前の自作向けマザーでBIOS自体に時間のかかる場合は、逆転もありえるタイムですねホント。
砧順一さん
2014/03/18
ここまでガッツリ分解するような内容だったら多分断ると思います。
ただ本体の処理速度の大幅な向上はやる気につながるだけに
最終的には気分で私なら請けるか請けないか決めそうです。
リンさん
2014/03/18
レビュー読んでいて楽しかったです。
2時間もかけてCPU装着は本当に凄いです。
お疲れ様でした☆ 今後も元気に稼働してくれると良いですね!
下小川さん
2014/03/19
メーカーPCならではの形態とデザインを持ったPCなので、そのままにしておくのは勿体無かったというのもあるんですが。
しっかしここまで遅い状態で使っていたのならもっと早く言ってくれればよかったんですけど、部品を変えるたび、設定を弄るたびに早くなっていったので楽しかったです。
…ただもし私ももう一度この機種のCPU交換をしてくれといわれたら…悩みますねw
Schrödingers Katzeさん
2014/03/19
チップセットの持つ表示絡みの処理も、ハードウェアが高機能だと、処理が丸投げできるんですが、オンボードのものなどでは、CPUが自分で処理をしないといけない部分も多く、ATOM機でも、マルチコアと、シングルコアのシステムでは、プロセッサ単体のカタログスペックに対して、大きく体感が変わってきます。
冷却は、グリスに定番のアレとか、更に上のソレとかを使うと、放熱の仕組みに逃げてくれやすくなるので、若干無理してるような環境では、数度とはいえ、力になってくれそうな気がします。元の仕組みに余裕がないと熱を伝えても足りないんですけども。
Windows7では、更に並列化が進んでいるので、場合によっては、体感速度は更にマシになるかもしれませんね。
メモリのほうは、「世間で思われてるほど無駄遣いはされていない」です。ただ、あらかじめ用意したほうがよさそうなものは何でも溜め込もうとするので、見かけ上のメモリ消費が酷いことになってますし、それに伴うオーバーヘッドもあるんですけども。
HDD側で、ランダムアクセス性能を隠蔽していると効果は出にくいかもしれませんが、Microsoft Windows 7 SDKに入ってるWindows Performance Toolkitで、起動処理を最適化すると、使い込んだシステムで実行した場合、数秒から、数十秒程度、場合によっては、起動時間が短縮されます。WindowsUpdateなどで、余程条件が悪くなっていない限り、劇的な効果が出ることは少ないですが、あとは、USBメモリも安いので、そこそこの速度の物が余っていれば、Windows ReadyBoostもストレージが遅い2.5インチ環境とか、1.8インチ環境だと、効果が意外とあったりします。
下小川さん
2014/03/20
やはりVistaはマルチスレッド化の恩恵は大きいですね。ReadyBoostは以前ノートパソコンでお世話になりました。
Windows Performance Toolkitの方法も以前ATOM+Windows7のネットブックで試したことがあります。ああいうギリギリな性能のPCも弄っていて楽しいですし、今回のPCは色々悪条件が重なっていたので、何をやっても速くなっていったのが面白かったですが…実用品としてみると大変です。
今は元の持ち主の所でリストなんか作ってるはずです。
Schrödingers Katzeさん
2014/03/20
省スペースや、ノートPCで、リビングや、寝室で使われているものは、埃を吸い込んでしまうことが多く、掃除してやると、実はオーバーヒート対策で、クロック落としてたりすることが無くなって、パフォーマンスがあがることもあったりしますね。
実際話聞いて、あけてみてそうだと、ああ、かわいそうにってちょっと思います。
サボってるわけでもないのに、遅いって文句言われてきたんだなぁってw
スペースがないと手を入れるわけにもいかないですから、グリスで、熱を伝えやすくするくらいしか、対策はしづらいんですけど。
構造によっては、キーボード裏とか、金属板を入れて拡散させたりしたことはありますが、長時間使う場合は、劇的な効果とは言いづらかったです。
WPTは、何度もやることには意味無いんですけど、半ば純正のツールであるという安心感や、リスクの低さ、作業時間なんかを考えると、おまじないとでも思って実行しておくと、意外と体感に出る差があります。
カタログスペック的には、このハードウェア個人的には十分実用範囲なんですけどね。ただ、手にしたいか?っていうと、パーツの世代が古くなるので、パーツそのもののコストパフォーマンスが低い(特にメモリが酷いw)という点で、手を入れればって世代とか、仕様のPCは、買うことを考えた場合は微妙な気はします。
このあたりがうまいこと、眠ってたり、安く手に入ったりすれば、全然使えないとか、思わないんですけども…。
下小川さん
2014/03/23
あれはあれで楽しかったんですけどさすがに実用品としては厳しくなった&液晶画面に不調が出てSurfaceProに乗り換えてしまいましたが。
逆にこのCore2Duoくらいの性能があればまだまだいけるんですよねえ。換装前のシングルコアだときついですが、デュアルコアはVista以降で恩恵が大きく感じます。幸いこのVAIOはホコリなんかは内部にあまり溜まっていなくて熱による性能低下もなかったようです。もちろん出来る限り清掃しましたが。
自分の使っている自作パソコンが性能インフレで過剰性能と化しているのでマヒしかけているんですが、性能的にはこれくらいで十分な用途って多いんですよね。仰る通りパーツが割高になってしまうので新たに導入するほどではないんですが、このVAIOはまだ行けそうだったのでがんばってもらいます。
syun1000000さん
2016/09/24
同じT8300です。しかしCPU交換し終わって起動すると発熱が多くPC落ちてしまいました。
もったいないのですが、WindowsのほうからCPU使用率を95%にしました。すると、落ちなくなりました。クロック数を見てみると、1.97GHzでした。まぁセレロンの頃よりいいかなと思いそのまま使用しております。ブロックゲームで有名なマインクラフトも起動できます。!!!
メモリは、2GBから3GBにあげることに成功しました。
下小川さん
2016/09/24
やはり元々セレロン用の冷却系だからその辺キツいんですね…自分の時では特に不安定になるような挙動はなかったんですが負荷時はファンフル稼働になったんでギリギリなんだと思います。
クロックを抑えてもデュアルコアになるだけでかなり違うと思うんで!
てかマインクラフトいけるんですね…!
2年半ほど経った今でも親戚宅で問題なく動いてるんですがOSがVistaなんで来年4月のサポ終了の時どうしたもんか…