レビューメディア「ジグソー」

宮崎アニメのイメージまんまのかわいいキャラのチョコマカ感。しかし描かれるのは過酷な総力戦。

あの宮崎駿が描いた戦争もの。
原作はオットー・カリウス『ティーガー戦車隊』である。これは著者の自伝記である。
このオットカリウスという人物はミヒャエルビットマンと並び称されるティーガーエースで終戦までに敵戦車150を撃破し、かつ本人は戦争を生き抜き、現在も存命中である。

ビットマンのようなスター性より、冷静沈着さのめだつカリウスのナルヴァ戦線(現エストニア)の防戦を描いた作品だ。

ちなみにこの漫画は前編フルカラーでA4の大判本である。
そして人間は豚として描かれ、宮崎アニメのイメージからか今にも動き出しそうな躍動感がある。

細かい所では戦車砲用の榴弾の短延期信管による空中炸裂のような戦闘技術もあちこちに書かれている。それと本筋とは全く関係のない宮崎駿のコラムもかなり面白い。

またエストニアへの紀行文・ドイツへの紀行文も入っていて、宮崎駿自らかつて戦線となったエストニアを訪れて戦闘の痕跡を探したり、ドイツではカリウスが経営するティーガー薬局へ行って、対談したりサイン交換したりとほのぼの感で一休みできる。

また好評だった妄想戦記の『ハンスの帰還』を収録。
さらに『ラストオブカンプグルッペ』で有名な高橋慶史氏による「実録・脱出口1945」という読み物も面白い。この「泥まみれの虎」のマンガ部分で描かれない戦略的な位置づけと、その後の結末がわかる。

さすが大日本絵画、マンガ一冊2500円という高いような気がするが、全くそんなことを感じさせないクオリティ。

===余談===
もっと詳しく知りたい場合は オットーカリウス『ティーガー戦車隊』上・下がある。
あくまでマンガで続きを見たい場合は、小林源文『ザームラント1945』がオススメだ。こちらはカリウスの部下のケルシャーが主人公になっている。
  • 購入金額

    2,625円

  • 購入日

    2005年頃

  • 購入場所

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