前回ご紹介した「飛行艇時代」
と兄弟みたいな本。
サブタイトルに「宮崎駿の妄想ノート」とあるように宮崎駿の作品...というか正確には?オットー・カリウスの有名な戦記「ティーガー戦車隊」を軽く下敷きにしつつ、マンガとオットーとのインタビューで構成された作品。それに「宮崎駿の雑想ノート」関連の戦車のストーリーがブッキングされる。
「宮崎駿の“雑想”ノート」の方はプラモデル専門誌「モデルグラフィックス」に連載されていたややマニアックな兵器を取り上げたコラムで、この一部が発展して「飛行艇時代」になり、それが後に映画「紅の豚」に結実したが、そのコラムの方は足かけ7年間に渡り不定期連載された後、一旦幕を閉じる。
コラムは8年後一時的に「宮崎駿の妄想ノート」として再開され、「雑想」の方に書かれた「豚の虎」の続編、「ハンスの帰還」が書かれた。
オットー・カリウスはドイツ国防軍の軍人。最終的には中尉まで登った戦車兵であるこの人は、敵戦車撃破スコア150両以上のドイツ軍で一二を争うエース。たった2輛の戦車でソ連軍の進出を阻止したナルヴァ戦線での戦いは名高い。
そのオットーの自叙伝的戦記、「ティーガー戦車隊」を下敷きにした表題作「泥まみれの虎」と戦車兵ハンスがおばあちゃんや少女を乗せて、戦車でソ連の包囲を突破する「ハンスの帰還」、さらに2014年現在まだ存命のオットー自身へのインタビューを含めて1冊の本にまとめたもの。宮崎駿という人物は平和主義者で戦争の悲惨さを顕す作品を多く手がけながら、かなりコアな軍事オタクでもある。そんな彼がドイツ戦車隊のエースに直に話を聞きながら、彼の戦記に絵をつけたのだからものすごく細密..つかマニアック。こまか~い描写と、ところどころに挟まれる兵器に対する鬱屈した愛?の吐露が面白い。
彼は劇中の自分を投影したキャラクターに「戦車にかぎらず軍事一般は人間の暗部から来るものなのだ 人間の恥部 文明の闇 ウンコだゲロだ」と言わせながら「ウームおもしろい なんという愚かさだ...」といいつつ戦争資料を読ませている。そこにチビトトロみたいなシルエットの子豚ちゃんが「恥部がすきなんだ」とチャチャを入れる...
偉大なる才能と矛盾とにつつまれた宮崎の考え方の一端に触れられる作品..チョット高いけどね。
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購入金額
2,625円
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購入日
2014年01月頃
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購入場所
書泉ブックタワー
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