SONYがかつて発売していたPalm OS採用PDA、CLIEシリーズ。もっとも、SONY自身はCLIEを「パーソナルエンターテインメントオーガナイザー」と称し、単なる情報端末と扱われることを嫌っていたようですが…。
元々Palm OSは米国Palm社が小型情報端末向けに開発したOSで、自社製の端末(初期はU.S. Robotics→3comなど)を中心に製品を展開していましたが、後にPalmに吸収されたHandspringと共にSONYは大きなシェアと影響力を持つサードパーティーでした。画面の高解像度化などはSONYが先鞭を付け、Palmが後を追う形となったほどです。
Palm OS 5系以降、端末メーカーがほぼPalmとSONYの2社(ゲーム端末という位置付けだったTapwave Zodiacなども僅かに存在はしていました)となった後も、Palm OS端末専用のCPU、Handheld Engineを自社開発(Handheld Engine以前はIntel PXA250系またはその上位を搭載)して主力機種に搭載するなど、SONYのPalm OSへの熱意は並々ならぬものがありましたが、結局はCLIEシリーズの売り上げは低迷し、海外市場からの撤退→国内市場を含め完全撤退というルートを辿ってしまうこととなります。
そんなSONYがCLIEシリーズの最後を飾る弩級端末として発表したのが、CLIE PEG-VZ90でした。
私自身、CLIE愛好家として、CLIEの集大成と言えるPEG-VZ90を何としても手に入れようと、製造中止後に中古品ではありますが入手していました。
しかし、先日このPEG-VZ90を久々に使ってみようとバッテリーを充電したのですが、残念ながらOSの起動にたどり着くことが出来なくなっていました。そこでたまたま見かけたジャンク扱い品を改めて入手したのが、今回の個体となります。
外箱等がない状態でしたので、このように包装されて届きました。
付属品はこれ以外にもクレードルは残されていましたが…。
CLIE使いの必需品ともいえる、このプラグアダプターが欠品でした。私は元CLIE愛好家として、まだ何個かストックしてありますが、これが割と壊れやすいんですよね…。
完全にリセットされた状態であったためか、珍しくPalm OSのローディング画面が見られました。
取り敢えず、無事にOSの起動が完了しました。久しぶりに使ってみることにしましょう。
当時としては圧倒的だが今となっては…
この製品の最大の特徴は、2004年当時としては市販品で世界最大となる、3.8インチ有機ELディスプレイを搭載していたことでした。もっとも、解像度は480×320Pixel、つまりハーフVGAでしかありません。これでもPalm OS機としてはハイレゾディスプレイと呼ばれていましたが…。
この有機ELパネルの美しさをアピールするために、出荷時に派手な色彩の写真が用意されています。実際に表示してみましょう。
iPhoneのカメラなので少し露出が合っていませんが、今見ても発色は結構綺麗です。ただ、ドットの粗さは露骨であり、どうしても世代の古さは感じさせられます。通常の液晶パネルを搭載する他のCLIEは全体的に色が淡い傾向があり、発色が鮮やかなPEG-VZ90は当時としては異彩を放っていました。あくまで「当時は」であり、今なら例えばXperia XZ Premiumの液晶の方が色の表現も上だとは思います。
なお、有機ELは発光を続けると寿命が縮まるということで、通常は白背景のPalm OSの配色が、このPEG-VZ90については黒背景を標準とするという、細やかな配慮もなされています。
そしてこのPEG-VZ90のもう一つの特徴だったのが、使った人だけが理解していたオーディオプレイヤーとしての質の高さでした。当時はMD Walkmanがまだまだ広く使われていた時期ですが、それらよりはPEG-VZ90の方が音が良いと評価するユーザーも多かったのです。
ちなみにPalm OS 5世代のCLIEは全機種オーディオ再生機能を備えていましたが、面白いことに本体価格と音質はある程度比例する傾向がありました。私自身、当時PDAとしてCLIEシリーズを愛用していましたが、その用途に使う機種は使い勝手に優れるPEG-NX80VやPEG-NX60でした。
しかし、オーディオプレイヤーとしての質だけは最上位だったPEG-NZ90が一歩上であり、ほぼオーディオプレイヤーとしてPEG-NZ90も持ち歩いていたのです。
そして、CLIE最終世代かつ最高級機種であるPEG-VZ90は、そのPEG-NZ90と比べても音質は勝っていたという記憶がありました。そこで改めてPEG-VZ90の音質をチェックしてみました。イヤフォンはこちらを組み合わせました。
折りたたみデザイン(ウイングデザインと呼ばれていました)のCLIEでは多くのモデルがCompactFlashスロットを備えていましたが、これは通信カード専用という位置付けであり、CFメモリーを音楽や写真の保存先として使うことは出来ません(ソフト的な改造を施せば実は可能だった)でした。しかし、PEG-VZ90はCLIEシリーズとして唯一CFメモリーからのコンテンツ再生に正式対応していました。そこで今回は1GBのCFメモリーにMP3ファイルを数個置いて試聴します。
当時はかなり素晴らしいと思っていたPEG-VZ90の音質も、今となってはそこまで特筆できるものではありませんでした。少なくともハイレゾ対応ウォークマン、NW-A16と比べれば明らかに劣ります。それでも、私の手元にある古いウォークマン、NW-A829などと比べてそれほど劣るとも思えない音質は確保されているのですから、やはり当時としてはかなり質の高いオーディオプレイヤーだったというべきなのかも知れません。むしろ一時期使っていたNetMD対応ウォークマン(SONY MZ-RH10)よりは音質は上だったと思います。
2004年の発売当時の水準で考えれば、マルチメディアプレイヤーとして素晴らしい性能を誇った製品だったのは間違いありません。しかし、高音質DAPや高性能スマートフォンが大きく普及してしまった現在の水準で評価してしまうと、特筆するべき点が見当たらないことも事実です。
とはいえ、このような尖ったハイエンド端末の開発で得られた成果が、後のスマートフォンの開発に活かされていったと考えれば、この製品の意義は大きいものがあったというべきでしょう。CLIEの、ひいてはPalm OS採用PDA端末の最後を飾るに相応しい力作だったといえます。
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購入金額
3,240円
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購入日
2018年07月05日
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購入場所
HARD OFF
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